あけぼの

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人工美と自然美の挑戦、タ・プローム

2008-08-25 17:34:09 | ブログ

王宮周辺の遺跡群中、かつてないほど興奮し、心を奪われたのはアンコール・トムの東部にあるタ・プロームだ。英仏合作映画「Two Brothers」はここで撮影されたそうだ。二頭の虎の兄弟が離れ離れになり、対戦させられる運命となり、手に汗握る映画だった記憶があるが、これを見た人は木の根が石造遺跡に絡みついている異様な光景に驚いただろう。よくぞここをロケ地に選んだと思える、いかにもその映画の舞台に相応しい幻想的な遺跡だ。人工美と自然美との挑戦が眼前に展開している。寺院の建物にも塀にも巨大な樹木の根がまたがり、覆い被さり、網をかぶせている。巨大な根っこは遺跡に食い込む怪鳥の爪にも、塀の上にとぐろを巻いた大蛇にも、塔に垂れ下がる長尾鶏の尾にも見える。入口を塞がれそうになってもなるに任せてあるが、自然の脅威を見せつけることも目的なのだろうか。根の意志を尊重していることに共鳴を覚え、深い感動で寡黙となり、宗教心さえ呼び覚まされる。映画で見た白い虎と重ね合わせ、記憶のスクリーンに生涯刻まれる光景だ。(続く)彩の渦輪


観光と地雷の国カンボジア そのI

2008-08-25 13:43:39 | アート・文化

二〇年もの長きにわたり内戦が続き、実に多くの命が失われたカンボジア。一〇年ほど前ポル・ポトの死亡が確認され内戦が終了、やっと平和が訪れた。だがカンボジアには過去の遺物である未撤去地雷(600万と推定される)の近くで今も暮らしている人が少なくない。名立たる世界遺産、アンコール・ワットやアンコール・トム、周辺の遺跡群のどこに行っても上半身だけの地雷被害者が明るい笑顔で楽器を演奏している。

 アンコール・ワットはヒンドゥーの美、中央神殿への長い参道は開放感があり期待感で胸が満ちる。だが期待が大き過ぎたのだろうか、建造物にはインドで見たヒンドゥーの寺々ほどの感動がなかった。中央祠堂周辺のデバターと呼ばれる壁面彫刻の美女たちに見惚れるばかりだった。他方のアンコール・トム(大きい街)は仏教の美、勝利の門や死者の門等、五つの門に囲まれた遺跡群の中央にはバイヨン寺院があり、観世音菩薩の巨大な四面仏が優しく妖しい微笑を浮かべ、見飽きることがなかった。(続く)彩の渦輪