感謝祭の休みと週末を利用してエクアドルを旅したが、エクアドルほど満足感の高かった旅は近年にない。人の善意や自然への感動、発見等、旅の収穫では勝るとも劣らぬ国々を歴訪してきたが、大抵の国で騙されたりし、効率の悪い単独千鳥足の旅ゆえ正負の余韻が打ち消しあうことが多かった。だが、ここエクアドルは正真正銘優しい国だった。赤道直下ゆえ緑濃く、従って窓外や眼下の風景は美しく、多くの町が海抜が高いゆえ気候は温暖、キトなど年間を通して春の気候だ。温泉が多く人は親切で単独旅行も安全、食べ物は美味しく物価は安い。インディヘナのアーティストたちの色彩感覚は抜群で日本人好みの中間色が多いので織物やバッグ等、買い物も楽しい。
この国は2000年に通貨として米ドルを採用した。米ドルを現地マネーに変える必要がないのは楽である。安い露天マーケットでも米ドルでおつりが貰える。私たち夫婦は通常旅で殆ど買い物をしない。買い物を我慢して、「我慢を貯めてもう一つ旅をする」という主義だからだ。だがここではアルパカの毛で作ったフードつきジャケツや可愛いバッグも買ってしまった。長距離バス代金は信じがたいほど格安なので5回利用した。キトーからリオバンバ、リオバンバからグアヤキル、グアヤキルからクエンカ、クエンカから高地の遺跡、インガピルカへの往復、等、をバスでこなすには若者なみの体力が要る。だが地元民と交わる旅は楽しい。バスが止まるごとに物売りが乗り込み、停車の短期間に食べ物を上手に売る。ゆでたてのトウモロコシ、熱々のバナナ揚げはとても美味だった。その後バナナ揚げに凝り、シンシナティに帰っても作っている。続く(彩の渦輪)