マドリッドには学会発表で行った。筆者の専問は教科教育で、特に多文化・異文化教育、グローバル教育、平和教育であり、当然教壇にも立ち、カリキュラムも作れる。世界学会の発表はバンコックで一回とここ、マドリッドは2回目だ。一回目の発表は「全米に散らばる日本人留学生の留学動機、志望、遭遇する問題、満足度、異文化適応能力その他の特徴と生活実態を16項目にわたり、学部学生、大学院生、男子学生、女子学生の相違が分かるようにデザインして調査し、ケース・スタディーも多数つけ、量的・質的両面の研究であった。諸国の代表から「研究法が自身の研究に応用できる」と好評で、学会長賞も受賞した。マドリッドでは平和教育の参考として「平和の文化を創造する一方略:ピース・ボート活動」を発表、外国からの参加者が多く賛同してくれ、多くの友人ができた。
発表の合間に街を歩いた。マドリッドで最も美しい建物の一つと言われる王宮を見てオリエンテ広場から北へ進み、ドン・キホーテとサンチョ・パンザの像のあるスペイン広場で休み、グラン・ビア通りで店を覗く。DONDE ESTA MI CERVEZA?(私のビールはどこ?)というTシャツを記念に買って悦に入った。プラド美術館周辺には数え切れないほど美術館、博物館、芸術センターがあり、まさに芸術の街だ。プラド美術館の東にあるレティロ公園には白鳥が泳ぐ澄明な池があり、鏡のような水に反映する建物や噴水は見飽きない。公園内の水晶宮殿はロンドンの水晶宮をモデルにしたというが建物は本当に巨大な水晶のイメージだ。
発表後、近くのセゴビアやトレドに電車で出かけた。完璧な姿で残るという世界遺産、セゴビアの水道橋は二万個以上の石をただ積み上げただけだという。128のアーチがある二層からなる建造物で、驚異的に保存状態が良く、古代ローマ時代の技術の高さに驚く。観光満足度の大変高い水道橋である。カテドラルが美しく迷路が楽しい街、タホ川とサン・マルティン橋に限りない郷愁を覚えさせられたトレドも筆者には去りがたい街だった。このトレド市は1987年に世界文化遺産の指定を受けており、奈良市やオハイオ州と姉妹都市関係を結んでいる。(続く)彩の渦輪