あけぼの

アート、文化、健康、国際・教育、音楽、食・レシピ、日記、エッセイ、旅行記、学問

噛むほどに味がでるノルウェイ II

2009-03-11 21:07:23 | アート・文化

 オスロー市内は市電(トラム)をフルに活用して王宮、コンチキ号博物館、市庁舎内の美術作品を鑑賞した。お目当てのムンク美術館では何はともあれは「叫び」に突進した。人間の孤独、不安、憎しみや恐怖等の感情を表現した生きた絵だ。亡霊にでも出合ったように周りをつんざく叫び声が青白い表情から聞こえてきそうだ。激しい色彩や歪んだ線で表現した叫びの図柄が10枚もあるのには驚いた。知られているのは4枚だそうだが、画家ムンクの苦悩をそこに見たような気がする。暗い魂の遍歴が見られる画家と言われる所以である。

 フログネル公園の彫刻家グスタフ・ヴィーゲランは圧巻の一語に尽きた。一大彫刻公園としてのフログネル公園では「これって一体なあに?」と疑問を抱かされる。彫刻は193体のグループ。幼児から骸骨まで650体の彫刻がある。中央に聳え立つ17mの花崗岩の塔、「モノリッテン」には121体がもつれて種々の人間模様を表現されている。望遠鏡を使ってゆっくり見る価値がある。老若男女の喜怒哀楽を表現した躍動感に溢れたポーズだ。そこに人生の縮図が見られるだろう。人間の一生―誕生日から死に至るまで―のあらゆる姿勢を刻みあげた作品は生々しく迫力を感ずる筈だ。裸像舞台の終わり近くに6人が輪になった銅像がある。それは「人生の輪」、まさに輪廻転生を表現している。自悠人


噛むほどに味がでるノルウェイ

2009-03-11 08:52:50 | アート・文化

ノルウェーといえばフィヨルド、オーロラ、高福祉社会、カントリー・スキーなどが脳裏に浮かぶことだろう。人口500万人と言えば大阪府ぐらいだが、最近ではスカンジナヴィア四国の中で一番好景気な国であり、北海油田、水力発電によるエネルギー資源輸出国として1人当たりのGDPは世界のトップクラスに位置している。国土面積は日本と同じであるが、森林、湖や人が住めない北極圏のツンドラ地帯が多く、生活用地は限られている。厳しい環境に生きる生活の知恵は漁業を発達させ、その行動力は海洋からの貿易に活路を見出し、音楽家や画家、彫刻家等を輩出した。優れた芸術性も国民性そのものだ。北極圏のため気候は厳しく、観光時期は限られる。歴史的な建造物もなく加えて物価高、23%の消費税は住みにくいと思うのだが、高福祉政策が生活の基盤になっているので国民は安心出来るのだろう。

 何はさておきフィヨルド観光をした。オスローから港町ベルゲンまで列車と船とバスを乗りついでその景観を鑑賞することにした。列車を止めてくれ、下車して見たヒョースの滝は、90m落差が三段に別れ、白い雲のごとくもくもくと湧き出し、押し出されるように観衆に迫って来る。水流の豊かさと勢いには圧倒され、しばし呆然とたたずむのみだった。その滝の上方を見ると深紅の服に身を包んだ女が時折顔を出し、手招きをするのだ。沸き立つ白い滝と赤い女のコントラストが絶妙かつ幻想的で、しばし夢か現実かとまどった。次は船だった。深さ1000m以上もあるフィヨルドの、鏡のような表面を船は滑るように進む。目前のフィヨルドは天然の美を絵画にして見るようだった。迫ってくる山の斜面を白い筋になって次々と流れ落ちる滝がフィヨルドらしさを強調し、脳裏に刻まれるものだった。自悠人