オスロー市内は市電(トラム)をフルに活用して王宮、コンチキ号博物館、市庁舎内の美術作品を鑑賞した。お目当てのムンク美術館では何はともあれは「叫び」に突進した。人間の孤独、不安、憎しみや恐怖等の感情を表現した生きた絵だ。亡霊にでも出合ったように周りをつんざく叫び声が青白い表情から聞こえてきそうだ。激しい色彩や歪んだ線で表現した叫びの図柄が10枚もあるのには驚いた。知られているのは4枚だそうだが、画家ムンクの苦悩をそこに見たような気がする。暗い魂の遍歴が見られる画家と言われる所以である。
フログネル公園の彫刻家グスタフ・ヴィーゲランは圧巻の一語に尽きた。一大彫刻公園としてのフログネル公園では「これって一体なあに?」と疑問を抱かされる。彫刻は193体のグループ。幼児から骸骨まで650体の彫刻がある。中央に聳え立つ17mの花崗岩の塔、「モノリッテン」には121体がもつれて種々の人間模様を表現されている。望遠鏡を使ってゆっくり見る価値がある。老若男女の喜怒哀楽を表現した躍動感に溢れたポーズだ。そこに人生の縮図が見られるだろう。人間の一生―誕生日から死に至るまで―のあらゆる姿勢を刻みあげた作品は生々しく迫力を感ずる筈だ。裸像舞台の終わり近くに6人が輪になった銅像がある。それは「人生の輪」、まさに輪廻転生を表現している。自悠人