ゴッホ美術館でもいたく心を打たれた。メモをしながら見て回った。「社会の弱者の力になりたい」と常に望んだゴッホは弱者たる農民を描いた。だが司祭は農民たちにゴッホのモデルになることを禁じさえする。それでもなお農民を愛し描き続けるゴッホ。そんなゴッホの「じゃがいもを食べる人たち」の前は離れることが出来なかった。食べている農民の真剣な表情、フォークを持つ農民たちのごつごつとした指……、絵画という媒体が訴えるものの威力をゾクゾクするほど感じた。若い頃社会的弱者のための活動をしていた筆者には何万言の言葉以上にビンビン響いてきた。献身の絶対性を断言するゴッホ。日本の浮世絵がインスピレーションの一つになったのは嬉しい限りだ。藍が基調の「星空」はいかにも美しいが、そこはかとない畏怖が感じられる。人の生を刈り取られる麦に擬える死生観も共鳴できる。
飾り窓の女については先入観があった。「二階の窓のカーテンの隙間から憂いを含んだ微笑で密やかに誘いかけてる」と。とんでもない!誰でも通る狭い通路に面しずらりと並ぶ等身大のガラス窓。その窓から色んな女性が裸同然で魅惑的な姿態で誘う。ガラス窓と狭い通路の距離は本当に近い。ベッドを見せている個室もある。彼女たちの仕事は哀れでも秘やかでもなく開放的なビジネスなんですね。英語の下手な日本人男性はいい鴨にされているそうですよ。ご用心!(彩の渦輪)