ノルウェーといえばフィヨルド、オーロラ、高福祉社会、カントリー・スキーなどが脳裏に浮かぶことだろう。人口500万人と言えば大阪府ぐらいだが、最近ではスカンジナヴィア四国の中で一番好景気な国であり、北海油田、水力発電によるエネルギー資源輸出国として1人当たりのGDPは世界のトップクラスに位置している。国土面積は日本と同じであるが、森林、湖や人が住めない北極圏のツンドラ地帯が多く、生活用地は限られている。厳しい環境に生きる生活の知恵は漁業を発達させ、その行動力は海洋からの貿易に活路を見出し、音楽家や画家、彫刻家等を輩出した。優れた芸術性も国民性そのものだ。北極圏のため気候は厳しく、観光時期は限られる。歴史的な建造物もなく加えて物価高、23%の消費税は住みにくいと思うのだが、高福祉政策が生活の基盤になっているので国民は安心出来るのだろう。
何はさておきフィヨルド観光をした。オスローから港町ベルゲンまで列車と船とバスを乗りついでその景観を鑑賞することにした。列車を止めてくれ、下車して見たヒョースの滝は、90m落差が三段に別れ、白い雲のごとくもくもくと湧き出し、押し出されるように観衆に迫って来る。水流の豊かさと勢いには圧倒され、しばし呆然とたたずむのみだった。その滝の上方を見ると深紅の服に身を包んだ女が時折顔を出し、手招きをするのだ。沸き立つ白い滝と赤い女のコントラストが絶妙かつ幻想的で、しばし夢か現実かとまどった。次は船だった。深さ1000m以上もあるフィヨルドの、鏡のような表面を船は滑るように進む。目前のフィヨルドは天然の美を絵画にして見るようだった。迫ってくる山の斜面を白い筋になって次々と流れ落ちる滝がフィヨルドらしさを強調し、脳裏に刻まれるものだった。自悠人