かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

女の執念

2006-06-01 | 事例
私が全てを失うと覚悟したのは、次の銀行の言葉からでした。
「駅前のスーパーは閉店します。この時御社に1600万の敷金が戻ってきます。それは
 是非当行に返済させて頂きます。
 それだけでは不足ですから、この本店を売却して下さい。御社はもう1店の出店で
 生活を考えてください。
 なお残債務が残りますが、此れは保証人と協議しながら解決させて頂きます。」

地方都市のメイン通りに化粧品店を開く老舗でした。かっては売上も順調で羽振りも良かったですが、駅前通りに大型スーパーの進出等で人の流れも変わり、本店売上は一時の
20%に落ちました。
駅前スーパーに出店していたから、売上はカバーしていましたが、利益面を見ると駅前スーパーも赤字だったと思います。
そのスーパーも昨今の流行のように引き上げるそうです。

そんな状態の時、4年前、主人が交通事故で半年療養、その結果、歩行も不便になりました。療養中は商売にも力が入らず、終に銀行の返済も滞り、銀行から矢の催促が続くようになりました。

主人は仕入れの金を返済に回しました。リスケ交渉など一切せず、条件通り返済できないと、担保は直ぐに取られるし、保証人の弟にも迷惑を掛けると云うのです。
弟は京都の大學の教授です。
しかしそのために陳列棚は隙間だらけになり、注文も受注してからの注文です。悪循環で
業績は落ちていきます。

町一番の化粧品店のお嫁になる。私は希望に燃えて主人と結婚しました。
人を綺麗にする。何か私の天職のような気がしました。
お客さん毎のカルテを作り、それも1200人分揃っています。
しかし、主人が事故を起してからは、何時この家から出なければならないかと云う心配
ばかりです。
でも私は決めています。
たといこの店を出ても、私は小さな店を借りて、必ずこの商売を続けます。

駅前スーパーの閉店も間近になりました。銀行は来る都度、同じ事を繰り返します。
ある日私はふと思いました。
このまま進んでも敷金やお店を取られて何も出来なくなる。そのくらいならば、今から返すものは何も返さないで仕入れに回し、商売を伸ばしたほうがよいではないか。
渋る主人を説得し、そうすることに決めました。

ついで敷金のこともスーパーに頼みました。
この店がなくなるから、他にお店を借り無ければなりません。
改造も必要です。敷金をそちらに振り込んでください。
渋ったスーパーを何とか説得しました。
此れで敷金は銀行に持っていかれないと思います。

主人の弟には実情を話し、銀行が行くかも知れないよと了解してもらいました。

急に主人の態度が変わりましたから、銀行の担当者は吃驚した様子です。
「でも敷金は当方に返してくださいね。」と念を押していました。
その敷金も無事此方の手元に残りました。

駅前通りは、やはり人の流れは多いです。
携帯電話をやって居たところを格安で借りました。皆の反対を押し切りました。
スーパーに払うお金がありませんから、スーパーの時の半分の売上でも利益があります。
内装は殆ど今のままで大丈夫です。ちっさな応接セットがついて居たのが有り難いです。

此処1年くらいの間に、私どもの店から、変わった人も多いです。
販売には自信が有ります。先ずはお客の予備戻しです。
ダイレクトメールはお金がかかります。
電話で挨拶しました。
カルテが役たちました。

未だ2ヶ月目です。
成功とはいえませんが、その兆しは有ります。
2月前に比して、お金が忙しくなくなったと思います。
意地悪と思った銀行の担当者が売上の数字を聞いて目を輝かしています。

何が何でも化粧品を販売していくのだ。そう思い込んでやってきた自分が正しかったと思っています。