かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

悪いことを薦める人

2006-06-11 | 事例
I さんのやつれ方はひどいですよ。
かかってきた電話は取れない、尋ねて凝られたら大変と2DKのマンションに引きこもり
鍵を掛けて息を潜めて生活しているのですって。
夜は勿論眠れないしね。

I さんは夫婦で市場より野菜を仕入れて、其れをホテルに卸して居ます。
以前は良かったですが、此処3-4年、ホテルの仕入れが少なくなって来ました。食事はテナントに任せるところが増えてきたのでしょう。競争相手も出ました。それに67才の体には、野菜運びは堪えます。
I さんは、自分で借りた銀行借入が自分で返せるか心配です。

善良で嘘をついた事の無いI さんは、奥さんにそそのかされて、不動産を売却して無借金になる計画を立てました。奥様は商店会の主催した講演会で聞いてきたのです。

I さんならば市場の免許は直ぐ取れるから、別会社を作りそちらで商売をやろう。
別会社の社長はIさんの奥さんがする。
其れが出来たら、銀行に返済を止めよう。担保の不動産は売却してその代金は弁済するが、此れは買戻しをしよう。残債務が生じるが、これは何を言われても払わない。
その内に銀行は放棄をするよ。と言う筋書きです。

残債を払わないと云う事で心配して相談に来たI さんに、コンサルタントはよどみなく説明します。
銀行は型通り1度は請求に来ます。しかし相手が67才ならば直ぐに諦めます。不動産でも持っている人ならば兎も角、銀行のために売却したような人からは、何も取れないことは100も承知ですよ。
コンサルタントには、残債務を返さないと云う事に罪の意識は無いようです。
それにしてもIさんは割り切れません。借りた者を返さないなんて、67歳の今日まで
考えた事もありません。

大筋において計画通り進みました。取引銀行は市場内の信金1行。公庫からも僅か借りて居ます。
信金は最近の業績を掴んでいますからある程度資金難は理解して居ります。其れが計画を
助けてくれました。
銀行に返済しない。担保を売却。裏で買い戻し、此処まではI さんも迷わずできました。
しかしIさんの苦しみは此処から始まりました。
それで全てが済んだと思っているI さんに信金と公庫が残債務の回収に来たのです。

信金は市場内のことですからI さんの新会社のことを知り、少し計画的では無いかとさとったみたいです。勢い語調も強くなります。公庫も不良対策では厳しいところです。
1回合って後は勘弁するようなところとは違います。
ただでさえ、残債務を払わなければと思っていたIさんは郷土のノイローゼになってしまったのです。

奥さんとコンサルタントはIさんに絶対に1円も払うな。相手が来ても会わなければよいだろう。電話に出なければよい。と強気です。
電話があるか、訪問があるかと昼間家に居るのが出来なくなり、方々で時間を潰し、夜
10時頃帰宅するようになりました。
しかしそんなIさんの携帯に昼間公庫から電話が入ったのです。
携帯の番号が解かる筈がありません。
其れなのに電話が入ったのです。

I さんは完全におかしくなりました。
周囲はI さんの破産も検討しましたが、市場の内規で破産や不渡りを出すと一定の期限、資格の返上となります。第2会社がやっていけません。
気丈な奥さんは病院に入院させました。

信金と公庫は今は奥さんと折衝しています。気丈の奥さんも少し参りかけています。
あのコンサルタントは今日も近くの会社に出入りしています。