かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

保証人の気持ち

2008-03-31 | 事例
久作はほっとしました。
久しぶりに訪れた、結婚して居る一人娘のお願いです。
「婿と二人で家の前の空き地でデイサービスの仕事を始めたい。
 お父さん。あの空き地を使わしてください。それに銀行から
 1億くらいお金を借りるから其の保証人になってください。」
と云うわけです。

北関東の町の外れ、農家に生まれましたが若い頃から畑は貸して、
自分は2時間半掛けて東京木場の現場担当として通って来ました。
妻は10年ほど前に他界。以後娘と二人暮らしでしたが、其の娘も嫁ぎ、
広い旧家に、妻の時から買っている猫と暮らしております。

定年が近くなって、再雇用はありませんし、これからどう暮らそうかと
悩んでいたのです。東京勤めで地元の付き合いは薄いのです。
一人娘は其れを心配し、父の家の前で仕事をしよう。父にも働く場所が
出来て家族の心配がなくなるからと、夫を口説いて計画したのです。
夫も乗り気でした。

どうせ使わない土地です。ましてや久作の資産はやがては
全部娘の物になります。保証なんて良くわかりませんが、
介護施設といえばこれから花形になると聞いております。
其れより娘と毎日一緒に暮らせます。
久作は嬉しさを噛締めながら応援をしたのです。

町外れの交通の便が悪い辺鄙な所に立派な建物が出来ました。
すべりだしは非常に明るかったのです。
市の人たちも応援してくれました。
しかし法律が変わったのです。
此処で扱うような介護者には補助金が出なくなったばかりでなく、
介護することも難しくなりました。今まで有った町からの紹介も
無くなって、人数はぐんと減ってしまったのです。
しかも増える見込みはありません。自分で宣伝をし、新規の介護者を
探してやることなど出来ません。閉園をせざるをしなくなりました。

銀行は回収に躍起になりましたが娘婿にも誰にも
資産はないことを知りました。目を付けたのは久作の退職金です。
差押をしないからと、貰って直ぐに其の4分の1を回収して居ます。
久作も一旦自分に入りながら約束だといって払って居ます。
しかし後の分は、娘に注意されて、少し遠い銀行に預けました。

銀行はそれ以上突きませんでした。退職金を回収すると
直ぐに不動産ごとサービサーに売却しました。恐らく不動産は
建物は立派でも、地理的に売れないと見ていたでしょう。
あるいは地元銀行が出来たばかりの介護施設を潰したような
印象を世間に与えたくなかったかも知れません。

1年くらい立ちました。
サービサーが懸命に売り先を探したおかげで全て売却できました。
少ないけれど立退き料まで出ます。
久作は貸してある畑は別として祖先からの土地を全部失ったのです。

売れるということが決まったとき、3人が3人とも
違った心配をして居ました。久作は此れを機に、二人とも
又遠くに行ってしまうのでは無いだろうか。生活は退職金の
残額と年金でどうにかなりますが、非常に淋しいです。
娘は、夫は親に迷惑を掛けたと何時も悩んでいますから、
此れを機に離れた処に行きたいのではないかしら。
夫は妻の父親から縁を切られ、妻とも暮らせなくなるだろうか。
3人が3人ともそれぞれ自責の念ばかりです。

「お父さん。一緒に住む家、もう少し待ってね。犬だったら
 OKのところが多いが猫も飼えて、3部屋から4部屋の
 物件がなかなか見つからないでね。」
婿が切り出したとき、久作は答えました。
「一緒に住む件ね。未だ急がなくて、別々でも良いではないかな。
 儂はやはりこの近くにするよ。猫も飼えるし、家賃も安いよ。
 第一最近この辺にゲートボール仲間が増えてね。」
続きます。
「今度の件、儂のことは何も心配しなくて良いよ。娘に財産も
 残せなくなったことが心残りだが、其れは勘弁してもらえるだろう。
 あんた方も此処で4年くらい無駄足をしたが、それだけ良い経験を
 して居るわけだ。此処で少し遅れたが、夫婦で力を合わせると
 追いつくのも簡単に出来るよ。」

定年後、先祖からの不動産を失いました。
しかし其の心は健在でした。

今は愚痴一つ出ず、みんな気ままに生きて居るようです。





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