「最上赤にんにく」
【産地】最上地域>真室川町、最上町、戸沢村岩清水
【特徴】普通のにんにくより大粒で、1片15g、1球100g前後。側球数は6個前後。鱗片の皮が赤紫に着色する。貯蔵性に優れ芽が出にくい。
【食味】生では辛味が強いが、焼くとほくほくとした食感になり甘味が出るのが特徴。味は濃厚で、貯蔵に優れ3月頃まで貯蔵しても萌芽はあまりしない。にんにくごんぼ(すりおろして味噌と合え、ごぼうをつけたもの)、揚げ物などに使われる。
【来歴】最上地域各地に古くから栽培される。外皮が赤紫色のためこの名がついた。
【時期】6月下旬~7月上旬
*https://tradveggie.or.jp/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%ae%e4%bc%9d%e7%b5%b1%e9%87%8e%e8%8f%9c%e2%80%9506-%e5%b1%b1%e5%bd%a2/#i-16 より
料理の味付け、香り付けやスタミナ、パワーの源として身近な「にんにく」。山形県最上地域には、古くから自家採種により栽培され続けている伝統野菜(在来作物)、「最上赤にんにく」があります。
最上赤にんにく作り
その名のとおり、外皮が赤紫色のにんにくで、一般的なにんにくより大粒です。貯蔵性に優れていて、萌芽しにくい。香りが強く、生で食べると辛みが強いが、火を通すと甘味が増すというのが特徴です。
最上町の生産者 大場他二男さんご夫妻。
最上赤にんにくは、最上地域の最上町、真室川町、戸沢村で主に栽培されています。最上町の生産者である大場他二男(たにお)さんにお話を伺いました。
大場さんの最上赤にんにく栽培は、大場家に奥様とにんにくが一緒に嫁いできて始まったそうです。それから50年以上、さまざまな工夫をしながら栽培を続けてきました。
にんにくの粒の大きさは、栽培方法に影響していると大場さんは言います。「うちにきた時のにんにくは、粒が特別大きいわけじゃなかった。その頃の妻の実家では、昔っからの栽培方法をずっと変えずに引き継いでいたんだと思います。私が栽培を始めてからは、たい肥量や土のPH値などの土づくり、植える時期など、いろいろ試して、今の粒の大きい赤にんにくになってきたんですよ」。
最上赤にんにくは、雪の降る前に植え付け、冬を越し、7月上旬に収穫期を迎えます。
7月、収穫した赤にんにくは、その日のうちに風通しの良いところに吊るし乾燥させる。
畑のうねづくりから種植え、収穫まで手作業で行う大場さん。なかなかの重労働。
「植え付けの時期が早いと、雪の降る前に芽が育ってしまい、そこに雪が降ると雪の重さで芽が潰れてしまう。植え付けの深さも、浅いと土が凍ってしまい、にんにくもダメになる。だいたい5~6cmぐらいの深さに植えて、その上に堆肥をかけて、土を保温するようにもしています」と、大場さんは、栽培するうえで、特に植え付け時期、植え付ける土の深さに気を使います。
大場さんは、最上赤にんにくの栽培方法を試す中で、他の品種を最上赤にんにくと同じ方法で栽培してみたそうです。その結果、収穫できた量、粒の大きさ、香り・味が良いと感じたのは、最上赤にんにくだったそうで、長い歳月、この地域で栽培され続けてきたのも、気候風土にあった作物だからだろうと実感したと言います。
栽培方法を研究して大きくなった赤にんにく。
半世紀以上もの長い年月にわたって積み重ねてきた最上赤にんにくの栽培。大場さんは、ほかの生産者に種となるにんにくを提供したり、土づくりのノウハウを伝え、生産者の栽培技術、にんにくの質の向上にも力を注いでいます。「このにんにくから様々なことを教えられた」と話す大場さんの言葉には、自然と向き合い、地域の人との繋がりを深めることにもなった赤にんにくへの愛情と感謝の気持ちが込められているようでした。
家庭で食べる最上赤にんにく料理
最上赤にんにくは、栽培している地域や家庭によっても食べ方が様々です。大場さんのお宅での食べ方をご紹介いただきました。生のにんにくを使った食べ方が2つ。スライスしたにんにくに自家製みそをつけたり、すりおろしたにんにくをみそに混ぜて食べるそうで、最上赤にんにくの持つ香りと辛味をダイレクトに味わえます。
他には、スライスしたにんにく、ひき肉を炒め、くるみ、かつおぶし、ごまを和えたものは、ご飯にのせたり、お酒のおつまみにと重宝する一品です。冬になると、アルミホイルで包んだ丸ごとのにんにくを焼いて食べたりもするそうです。「毎日にんにくを食べているからか、風邪をひいたことないってぐらい元気だね」と、ご夫婦は笑いながら話します。
また、栽培地域のひとつ真室川町では、きのこの一種「ぶなかのか(ブナハリタケ)」とにんにく、みそを合わせた「ぶなかのかのにんにくつき」が食べられています。地域や家庭の中で大切に受け継がれ、次の世代にも伝えていきたいものとして、真室川町の郷土食を季節ごとにまとめた料理本「あがらしゃれ真室川」にも掲載されています。
伝統野菜を新しいメニューで
ニューグランドホテル新庄では、コースやランチで伝統野菜を使ったメニューを提供しています。「伝統野菜は、栽培地域や生産量が限られていることもあり、その存在を知らなかったり、あることは知っていても食べ方を知らないという人が多いです。料理で使い、お客様にだす際に伝えることで、伝統野菜があることを、そして新しいメニューを考え提供していくことで、食べ方を知っていただきたいですね。伝統野菜の料理教室もあって、店だけでなく、地域の中に入って直接食べ方の提案もしています」と、総料理長の丹野嘉彦さん。
最上赤にんにくを使ったパスタ。
最上赤にんにくは、フレンチではソースなどの隠れた素材として、イタリアンのように素材そのものが活かされる料理にも使われています。この日ご用意いただいたのは、最上赤にんにくを使ったパスタ。最上地域特産のきのこをたっぷり使ったトマト風味のパスタです。最上赤にんにくは、パスタに絡めたソースと、パスタの周りにかけたバーニャカウダソースに使われています。どちらのソースも、最上赤にんにくの深みのある香りと甘みを引き出しています。
「最上赤にんにくを使った時に最初に感じたのは、香りが違う、炒める火の加減によっても甘味もぜんぜん違ってきます。これからも最上赤にんにくを使い、従来の料理だけでなく、新しい料理を考案して、お客様に感動していただけるものを提供していきたい」と、最上赤にんにくなどの伝統野菜にかける思いを話してくださいました。
お問合わせ・取材協力
ニューグランドホテル新庄
あがらしゃれ真室川
山形県アンテナショップ「おいしい山形プラザ」
最上総合支庁「最上伝承野菜」
*https://www.pref.yamagata.jp/020026/kensei/joho/koho/mailmag/vegetable/mogami2.html より