
日展常務理事 栗原蘆水氏書「識分知足」
先日の小欄「2008/1/13欲どしい話」の続きであるが、改めて人間にとって欲望はキリがないと思い知った。冒頭の写真は日展常務理事・栗原蘆水氏の色紙「識分知足」であり、まさしく座右の銘にしていたはずなのだが。
そこへ駄目押しをするかのように、14日の寺総代会で第255世天台座主・渡辺恵進大僧正の御染筆「少欲知足」の手拭(下の写真)を頂いた。若住職が天台宗の学校を首席で卒業時に、渡辺恵進猊下から賜った色紙を染め抜いたものである。
◎識分知足(分を識りて足るを知る)
これは私生活の中でいつも心で噛みしめながら思っている言葉。本来の自分を決して見失うことなく、常に内省を忘れるべからずと肝に銘じている。
◎少欲知足(欲を少なくして足ることを知る)
この世は自分の欲望が満足されないことによって苦悩が生じることが多い。仏教では「少欲知足」が大事にされる。仏遺教経(お釈迦さま臨終の際の最後の教え)に、
『知足の人は地上に臥(ふ)すと雖(いえど)も、なお安楽なりとす。不知足の者は、天堂に処(しょ)すと雖も亦意(またこころ)に称(かな)わず。不知足の者は、富めりと雖も而も貧し』
『足ることを知っている者は地べたに寝るような生活であっても幸せを感じている。しかし足ることを知らない者は天にある宮殿のような所に住んでいても満足できない。足ることを知らない者はいくら裕福であっても心は貧しい』
お釈迦様は、『仏法を拠りどころとして、諸行の無常なることをしっかりと悟って、涅槃へ向けて怠ることなく精進努力を行いなさい』と仰っておられる。
今更ながら心にしみるお言葉である。

第255世天台座主 渡辺恵進大僧正書「少欲知足」