今年でもう6回目になる「まちゼミ in 富田林じないまち」。観光交流施設 きらめきファクトリーが主催のゼミナールです。
これはじないまちのお店の人が無料で教えてくれる講座です。
今回は全部で15の講座がありました。その中からバンリノハルビアホールの「クラフトビールの造り方講座と工場見学」に参加させていただきました。
富田林市富田林町 東筋南会所町 万里春酒造
明治前期に起業され昭和終わりころまで、100年近く銘酒「万里春(バンリノハル)」を造られていました。富田林最後の造り酒屋で、但馬杜氏・蔵人が毎年11月から翌年4月始めまで冬場の期間に仕込みに携わったそうです。その当時を知っている人の言伝えでは甘口の旨い酒やったと聞いています。
戦後の最盛期には年間生産量2千石(一升瓶換算で20万本相当)を数え、桶売りでは京・伏見の「月桂冠」などにタンクローリーで卸していたそうです。
昭和の終わりに酒造りをやめられて久しく、跡地がいずれ駐車場か宅地になってしまうのかなと案じていましたが、なんと一昨年11月「黄金の水」と詠われたかつての酒造りの井戸水で仕込んだ地ビールの醸造所に生まれ変わりました。40年後の奇跡。
*幕末の俗謡に、「富田林の酒屋の井戸は底に黄金の水が湧く」と詠われました。
明治前期に建てられた酒蔵をそのまま90席のビアホールにされました。扉を閉めれば100年前の姿に戻ります。その郷土愛と再生の熱意に、拍手喝采!
私が子供の頃にこの辺で遊んだ頃、酒蔵の下の窓から甘い酒の香りが冬場に漂いました。あれから21900日(60年)、今はモルトの香りが通りに漂います。
2025年2月2日 10:33 きょうは開店より1時間早く、15名近くの講座受講生が集合。これから醸造所見学が始まります。
天井高く「万里春」の琺瑯(ほうろう)看板
これから醸造責任者の南さんにクラフトビールの製造工程や設備・原料などについて教えていただきます。昔は「地ビール」と呼んでいましたが、今はご当地産の小規模生産のビールを「クラフトビール」と呼んでいるそうです。
「万里の春」の麹蓋 ビアホール内には日本酒の道具が飾られています。
造り酒屋「万里春酒造」六代目当主の石田さんが、旧酒蔵の活用による地域活性化を模索している中でクラフトビール事業への想いを膨らませ、ビール醸造を担当する南さんとの出会いの中、2年の歳月を経てのビール醸造所としての再始動に踏み切られました。
南さんのお話では2年間の準備期間の内、1年間はひたすら酒蔵の跡片付け、最後まで残っていたでっかい琺瑯の酒造タンクも別の場所に保管されているそうです。はじめは蔵の扉を開けて「何をしてるんかいな?」と思いつつ、重機がいきなり来て更地にされなくてよかったです。
関西テレビの「よーいドン」の「となりの人間国宝」2024.6.3でも紹介された苦労話。陰ながら応援しています。
醸造所の前には昨年度受賞した金賞・銀賞の賞状が並びます。
いろんなジャンルで受賞されました。
醸造責任者の南さんのお話を聞く参加者。
クラフトビールについて、原料について、製造工程について醸造部屋について入る前に基本知識を教えていただきました。
主原料となる麦芽(モルト)
原料や焙煎度合いによっていくつかの種類があります。一番右がホップ。
基本が二条大麦を発芽させてから、芽と根っこを取って乾燥させ、さらに熱風にあてながら80~120度で焙燥(ばいそう)したもの。この工程を経たものを原料として使用するそうです。
ここまでの工程を経た麦芽が原料として販売されているので、ここではこの原料を購入されているとのことでした。
種類は幾種類かあり、それぞれの違いでビアスタイル(ビールの種類)が出てくるとのことでした。
焙煎度合いの強い麦芽は糖化(でんぷんを糖分に分解する酵素の働き)が弱いので、他の麦芽と混ぜて使うそうです。これはスタウト(黒ビール)になります。
どれがどれかがよく解らなくなりましたが、とりあえず原料の麦芽が、できるビールに大きく影響します。これ焙煎度のやや強いアンバーエール用やったかな?
この中に一つ小麦原料の麦芽があるそうです。これやったかな? 押し麦状態ですね。
これがホップ。ペレット状になっています。いい香りがしています。ビールに苦みを付けたり、発酵途中で雑菌の発生をおさえる殺菌効果があるそうです。
これが25kg入りの麦芽。ドイツ、アメリカ、イギリスから輸入しているそうです。
さあこれから醸造部屋に案内されて、発酵の工程を見学します。
製造工程は、
①麦芽粉砕→(②糖化→濾過→煮沸→ホップ投入→冷却)麦汁→(③別のタンクに移し替え→酵母投入→発酵→熟成→貯酒)の順。
①麦芽粉砕 粉砕機。25kg袋を上から入れるので重労働。一回に4袋使うそうです。
②糖化タンク 糖化→濾過→煮沸→ホップ投入→冷却
ぼやっと聞いていたので間違っているかも知れませんが、ここで糖化をします。65度位のお湯に粉砕麦芽を加えて糖化を促します。つまり1時間くらいかけて麦芽のでんぷん分解酵素により糖分に変えていきます。これにより甘い甘い麦汁ができあがります。それを濾過し煮沸で殺菌と酵素にによる糖化を止めてホップを投入し冷却、次のタンクで酵母を投入する準備をします。
丁寧に工程を説明していただいている南さん。
次の工程で酵母は糖分を食べてアルコールと二酸化炭素に分解しますが、高分子のでんぷんは分解できません。
醸造・熟成タンク ③別のタンクに移し替え→酵母投入→発酵→熟成→貯酒
このタンクで麦汁に酵母を加え、18~25度で発酵を促します。かなり機械化されており温度管理などはほぼ自動。日本酒造りのような繊細な管理と調整はないとのことでした。
そのあと熟成させます。まだビールがとがっている状態(若ビール)なので、約1ヶ月熟成させまとまりのある味に仕上げます。
みなさん真剣に解説を聞いておられます。
仕込み水として使う「黄金の水」の井戸を見せていただきました。清酒を造っていた「黄金の水」もこの井戸の水を使用していたそうです。
*「黄金の水」:幕末の俗謡で「富田林の酒屋の井戸は底に黄金の水が湧く」と詠われ、富を生んだ象徴としてたとえられた水で、実際は無色透明無臭の井戸水です。今回のビールの仕込み水としての水質検査にも合格しています。鉄分が少なくカルシウム・マグネシウムを適度に含んだ軟水です。
富田林周辺の河岸段丘面は5m程度の浅井戸で水が湧きますが、それよりはるかに深い15m以上の深井戸の水をくみ上げているそうです。丸石で囲まれた壁面がすごい。
神棚に奈良 大神神社のお札
醸造などの神として特段篤い信仰を集めています。11月14日の造安全祈願祭(酒まつり)や杉玉で有名。
2024年10月11日 別の日に撮影
なんとまあ、クリアで切れの良いクラフトビールです。しかも香りと後に残らない鋭さがすごい!
5種類のモルトを使用してペールエール(ホップの香りと程よい苦み、淡い色に軽めのモルト)、ヴァイツェン(小麦を使用した白ビール、苦さ控えめ、柔らかい口当たり、フルーティな香り)、アンバーエール(カラメルモルトを使用した琥珀色のビール、コクと香りのバランスが程よい)、スタウト(ロースト感の漂う黒ビール、ドライですっきり)、ヘイジ―アイピーエー(ホップマシマシ、アロマ系)と5種類のビールを造られています。
では、乾杯!
富田林百景メンバー昼食会 2024年10月11日 別の日に撮影
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写真撮影:2025年2月2日ほか
2025年2月4日 アブラコウモリH
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