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「あんを炊いているときのわたしは、
いつも小豆(あずき)のことばに耳を澄ましていました。
それは小豆が見てきた雨の日や晴れの日を想像することです。
どんな風に吹かれて小豆がここまでやって来たのか、
旅の話を聞いてあげること。
そう、聞くんです。
この世にあるものはすべて言葉を持っていると、
わたしは信じています。
陽射しや風に対してでさえ、
耳を澄ますことができるのではないかと思うのです。」
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河瀬直美監督の『あん』をご覧になった方は、
このことば、思い出されるのでは。
自ら口を開いて語らないものに耳を傾けること…
それが人であっても、動物であっても、ものであっても、
遠く離れている人々であっても、過去の1ページであっても…
ともに歩むって、こういうことかも知れません。