人様の御好意にすがって 利より義
『全く見知らぬ人に頼んで、快く引き受けていただける』今の世の中に、このようなことがあるのです。それは何か、観光地等で、「スミマセーン!シャッター押していただけませんかぁ」というアレ。私も、よくお願いするが、また、よくお願いされたりもする。かって、断ったこともないし、断られたこともない。
これって、人様の御好意におすがりするってことですね。好意にすがるというのは、一方的な行為なのですが、この場合にかぎり、双方、アドレナリンやらドーパミンやらが出て、良い気分になれる。頼む側は、撮っていただけるからありがたい。頼まれる側は、「頼りにされている自分」「人のためになっている自分」を、感じることが出来、実に気持ちがよい。
「シャッター押していただけませんか交流」は、旅の楽しみになっています。
福島、山形を旅して、「人情、いまだすたれず」と、感じることが出来ました。これは、「ならぬものはならぬのです」の福島県と、全国学力学習状況調査、8位の山形県だからとも思います。単なる偶然だろうって?偶然ではないです。そういうことが分かるのが、還暦パパの還暦たる所以です。
<福島駅西口老舗ホテルロビーにて>
「郷土料理のお店を教えてください」
黒服の、偉そうで恐そうなホテルマンが、地図とペンを持ち出し…
「駅の大時計の下に地下通路があります。東口へ出ますと、バスプールが・・・この信号を越え、さらに次も越えて・・・右側に、いろり庵というお店があります・・・郷土料理は・・・」説明に要した時間およそ10分。どうですか、見かけによらぬこの親切さ!貧相な年寄りオヤジ相手ですから、適当にあしらってもなーんも関係ないのです。ところが、一生懸命説明してくれた。福島武士道を見せていただきました。
さて、いろり庵が見つからず、総菜とかを売っている店で尋ねた。買い物の客を待たせて、対応してくれた。こういうことが簡単にできる。これって、やはり武士道です。
さて、その様子を見ていた男性客が、自分の買い物を後回しにして、案内してくれるという。あ、ありえない…。
「たしか、この辺のはずだが…、あ、養老の瀧で聞いてみよう」
養老の瀧にとって、いろり庵は、いわば商売敵。それにもかかわらず、親切に教えてくれた。案内の男性は、いろり庵の玄関前までついてきてくれました。何の見返りも求めない。単純な善意。ところが…何人もの人にお世話になって、ようやく見つけたいろり庵が…「本日休業」。案内してくれた男性が…
「休みだあ!どうもすみません」
皆さん、「利」ではなく、「義」で動いているのです。福島にも悪い人はいると思います。たまたま私ども、運が良かったのかもしれません。それにしても、「義」が生きていることは間違いありません。
<いちじく騒動?>
果物の「いちじく」を漢字で書くと、「無花果」。無を「いち」と読むの?花を「ち」とか「じ」とか「ちじ」とか読むの?と、ボケないでください。熟字訓ですから。花は咲くのですが、花嚢の中で咲くので見えないため、花が無い果実ということでこの漢字が当てられました。
話が逸れますが、もう一つ、いちじくと読む漢字があります。「九」です。「一文字で『く』と読む」ので、「いちじく」。では、「十」は、「じゅう」のほかになんと読むか。男の子の名前で「十くん」がいたのです。答えは、「つなし」。一つ、二つ、三っつ…ひとつ、ふたつ、みっつ…と、「つ」が付きますが、「十」は、「とう」ですから、「つ」が付かない。「つが無いから、つ無し→つなし」発想が、九九歳を白寿というのと似ていますね(念のため→百から一引くと、白。百歳から一歳引いた九九歳を白寿…)。
旅の同行者、早い話が家内が、福島駅ビル1階の果物屋で、生食用のいちじくを見つけて大感激。「おいしい、おいしい。土臭さと、ほのかな甘み、媚びていない。主張がある」と褒めちぎり。ワンパック(10個ほど入っていた)のほとんどを食べてしまった。食べ過ぎると、「イチジク○腸ってぐらいで、効くぞー、明日大丈夫か?」と注意したが、「そんなの関係ねえー」翌日、体調に何らの異常も無かったというところが非凡なんです…トホ。
それからが大変。果物屋と見るや、「いちじくありますかぁ!」ところが、果物豊富な福島でも、いちじくは希少。日本のいちじく産地で有名なのは、愛知県の西三河地方、安城市、碧南市。和歌山県紀の川市や福岡県行橋市もいちじくどころ。つまり皆、東海以南。地球温暖化で、北限が上がってきているとはいえ、福島は、ほぼ北限。栽培している農家も少ない。
会津若松市の七日町の八百屋で、いちじくを発見。しかし、腐れかけていました。保存がきかない果実でもあるのです。店番をしていた、推定年齢80歳の老婆が、がっかりしていました…。がっかりされても、私の責任ではないので…困りましたよ。
帰途につくべく、福島空港へ。5km手前に、果物直売所発見。「いちじくワンパック食い女」から、「ハイ!停車せよ!立ち寄りまーす」の命令が下った。直売所には誰もいない。
「勝手に持って行ってしまいますよー!」と叫んでも…反応なし。
すぐ横手のリンゴ園に人の気配がしたので行ってみると、女の人が作業していた。
「いちじくありますかー」
「うち、いじじくやってないのー。向かい(の直売所)なら、あると思うよー。行ってみてー」
何という心優しい人であろうか!日本人の心から無くなろうとしていますよ、この心遣い。それが、そこにはありました!うれしいですねー。自分の利は関係なく、客が求めているもの(いちじく)の入手に貢献したい…ここでも福島武士道を見せていただきました。
結局、向かいの店も、その隣もいちじくは売り切れ。元の店に戻った。また、無人になっていた。何か買いたかったので、りんご園へ行って、女の人を引っ張ってきた。
「味見してー」と、次々と色々な種類の、リンゴと梨をむいてくれた。
福島武士道のお礼に、リンゴと梨を購入。すると…
「ちょっと待って、サービス分!」と言って、大き目のプラスティックバッグ(日本語でいうところのショッピングバッグ)に、リンゴを詰めはじめた。こちらの制止を振り切り、袋の口が結べないほどの量…。入れたものを出すわけにもいかず、頂戴した。重かったー。サービスは、普通1個か2個でしょう…この気前の良さ、福島県人気質!うれしかったです。60歳を過ぎても、もらうのはうれしい。それが、予期せぬものであれば、三倍くらいうれしいものです。モノの無い時代に育ったこともあってさ。
<空港にて>
さて、飛行機に乗るにあたって途方に暮れた。果物が、トランクに入らない。
ところがである。空港で小さなトンネルをくぐらせて危険なモノが入っていないかどうかをチェックする係の男の人が…
「果物をどうしたらいいか、カンターで相談してみてください」
カウンターで相談しました。二人の女性が、果物をANAの袋へ入れて、テープで口をふさぎ、「この上に物を置くな」という意味の文を書いてくれた。果物、3個口!
「到着空港でお受け取りください(ニコ!)」
面倒な客だなあ、という表情はみじんも見せない。ほほえみながら、3袋、パッキング。
「御面倒をおかけしました」と、礼を言うと
「いいんですよー」と、二人ともほほえんでいた。福島の武士道、良いと思うよー!いちじくをさがしたおかげで、すばらしい邂逅があった。
家内に、三年ぐらいは威張られるなあー。
「私が、いちじくを探したから、りんご園の人の人情に触れ、空港職員の親身な応対を感じることが出来たんだぞー。頭が高い!控えおろうー」と…(江戸時代か?)。
東北自動車道、磐越道、山形道と、高速自動車国道(この言い方が高速道路の正式名称)が走っていました。感心させられたのは、「急カーブ注意」「坂道注意 斜度5%」の標識。高速自動車国道なら、クロソイド・カーブでしょう。注意しなければならない急カーブは、あり得ないと思うが、あるんだからしょうがないですね。クロソイド・カーブとは、道路に傾斜がついていて、ハンドルを切ることなく曲がれるカーブ。ただし、規定速度で走っている場合ですがね。標識で、楽しかった(?)のは、「猿に注意(猿のイラスト)」でした。いつ、猿が出てくるか!ワクワク、ドキドキ!しかし、BUT! 私の前に猿は出てきてくれませんでした。猿の奴、福島の猿なのにサービス精神というものが欠如しているなあ。
『全く見知らぬ人に頼んで、快く引き受けていただける』今の世の中に、このようなことがあるのです。それは何か、観光地等で、「スミマセーン!シャッター押していただけませんかぁ」というアレ。私も、よくお願いするが、また、よくお願いされたりもする。かって、断ったこともないし、断られたこともない。
これって、人様の御好意におすがりするってことですね。好意にすがるというのは、一方的な行為なのですが、この場合にかぎり、双方、アドレナリンやらドーパミンやらが出て、良い気分になれる。頼む側は、撮っていただけるからありがたい。頼まれる側は、「頼りにされている自分」「人のためになっている自分」を、感じることが出来、実に気持ちがよい。
「シャッター押していただけませんか交流」は、旅の楽しみになっています。
福島、山形を旅して、「人情、いまだすたれず」と、感じることが出来ました。これは、「ならぬものはならぬのです」の福島県と、全国学力学習状況調査、8位の山形県だからとも思います。単なる偶然だろうって?偶然ではないです。そういうことが分かるのが、還暦パパの還暦たる所以です。
<福島駅西口老舗ホテルロビーにて>
「郷土料理のお店を教えてください」
黒服の、偉そうで恐そうなホテルマンが、地図とペンを持ち出し…
「駅の大時計の下に地下通路があります。東口へ出ますと、バスプールが・・・この信号を越え、さらに次も越えて・・・右側に、いろり庵というお店があります・・・郷土料理は・・・」説明に要した時間およそ10分。どうですか、見かけによらぬこの親切さ!貧相な年寄りオヤジ相手ですから、適当にあしらってもなーんも関係ないのです。ところが、一生懸命説明してくれた。福島武士道を見せていただきました。
さて、いろり庵が見つからず、総菜とかを売っている店で尋ねた。買い物の客を待たせて、対応してくれた。こういうことが簡単にできる。これって、やはり武士道です。
さて、その様子を見ていた男性客が、自分の買い物を後回しにして、案内してくれるという。あ、ありえない…。
「たしか、この辺のはずだが…、あ、養老の瀧で聞いてみよう」
養老の瀧にとって、いろり庵は、いわば商売敵。それにもかかわらず、親切に教えてくれた。案内の男性は、いろり庵の玄関前までついてきてくれました。何の見返りも求めない。単純な善意。ところが…何人もの人にお世話になって、ようやく見つけたいろり庵が…「本日休業」。案内してくれた男性が…
「休みだあ!どうもすみません」
皆さん、「利」ではなく、「義」で動いているのです。福島にも悪い人はいると思います。たまたま私ども、運が良かったのかもしれません。それにしても、「義」が生きていることは間違いありません。
<いちじく騒動?>
果物の「いちじく」を漢字で書くと、「無花果」。無を「いち」と読むの?花を「ち」とか「じ」とか「ちじ」とか読むの?と、ボケないでください。熟字訓ですから。花は咲くのですが、花嚢の中で咲くので見えないため、花が無い果実ということでこの漢字が当てられました。
話が逸れますが、もう一つ、いちじくと読む漢字があります。「九」です。「一文字で『く』と読む」ので、「いちじく」。では、「十」は、「じゅう」のほかになんと読むか。男の子の名前で「十くん」がいたのです。答えは、「つなし」。一つ、二つ、三っつ…ひとつ、ふたつ、みっつ…と、「つ」が付きますが、「十」は、「とう」ですから、「つ」が付かない。「つが無いから、つ無し→つなし」発想が、九九歳を白寿というのと似ていますね(念のため→百から一引くと、白。百歳から一歳引いた九九歳を白寿…)。
旅の同行者、早い話が家内が、福島駅ビル1階の果物屋で、生食用のいちじくを見つけて大感激。「おいしい、おいしい。土臭さと、ほのかな甘み、媚びていない。主張がある」と褒めちぎり。ワンパック(10個ほど入っていた)のほとんどを食べてしまった。食べ過ぎると、「イチジク○腸ってぐらいで、効くぞー、明日大丈夫か?」と注意したが、「そんなの関係ねえー」翌日、体調に何らの異常も無かったというところが非凡なんです…トホ。
それからが大変。果物屋と見るや、「いちじくありますかぁ!」ところが、果物豊富な福島でも、いちじくは希少。日本のいちじく産地で有名なのは、愛知県の西三河地方、安城市、碧南市。和歌山県紀の川市や福岡県行橋市もいちじくどころ。つまり皆、東海以南。地球温暖化で、北限が上がってきているとはいえ、福島は、ほぼ北限。栽培している農家も少ない。
会津若松市の七日町の八百屋で、いちじくを発見。しかし、腐れかけていました。保存がきかない果実でもあるのです。店番をしていた、推定年齢80歳の老婆が、がっかりしていました…。がっかりされても、私の責任ではないので…困りましたよ。
帰途につくべく、福島空港へ。5km手前に、果物直売所発見。「いちじくワンパック食い女」から、「ハイ!停車せよ!立ち寄りまーす」の命令が下った。直売所には誰もいない。
「勝手に持って行ってしまいますよー!」と叫んでも…反応なし。
すぐ横手のリンゴ園に人の気配がしたので行ってみると、女の人が作業していた。
「いちじくありますかー」
「うち、いじじくやってないのー。向かい(の直売所)なら、あると思うよー。行ってみてー」
何という心優しい人であろうか!日本人の心から無くなろうとしていますよ、この心遣い。それが、そこにはありました!うれしいですねー。自分の利は関係なく、客が求めているもの(いちじく)の入手に貢献したい…ここでも福島武士道を見せていただきました。
結局、向かいの店も、その隣もいちじくは売り切れ。元の店に戻った。また、無人になっていた。何か買いたかったので、りんご園へ行って、女の人を引っ張ってきた。
「味見してー」と、次々と色々な種類の、リンゴと梨をむいてくれた。
福島武士道のお礼に、リンゴと梨を購入。すると…
「ちょっと待って、サービス分!」と言って、大き目のプラスティックバッグ(日本語でいうところのショッピングバッグ)に、リンゴを詰めはじめた。こちらの制止を振り切り、袋の口が結べないほどの量…。入れたものを出すわけにもいかず、頂戴した。重かったー。サービスは、普通1個か2個でしょう…この気前の良さ、福島県人気質!うれしかったです。60歳を過ぎても、もらうのはうれしい。それが、予期せぬものであれば、三倍くらいうれしいものです。モノの無い時代に育ったこともあってさ。
<空港にて>
さて、飛行機に乗るにあたって途方に暮れた。果物が、トランクに入らない。
ところがである。空港で小さなトンネルをくぐらせて危険なモノが入っていないかどうかをチェックする係の男の人が…
「果物をどうしたらいいか、カンターで相談してみてください」
カウンターで相談しました。二人の女性が、果物をANAの袋へ入れて、テープで口をふさぎ、「この上に物を置くな」という意味の文を書いてくれた。果物、3個口!
「到着空港でお受け取りください(ニコ!)」
面倒な客だなあ、という表情はみじんも見せない。ほほえみながら、3袋、パッキング。
「御面倒をおかけしました」と、礼を言うと
「いいんですよー」と、二人ともほほえんでいた。福島の武士道、良いと思うよー!いちじくをさがしたおかげで、すばらしい邂逅があった。
家内に、三年ぐらいは威張られるなあー。
「私が、いちじくを探したから、りんご園の人の人情に触れ、空港職員の親身な応対を感じることが出来たんだぞー。頭が高い!控えおろうー」と…(江戸時代か?)。
東北自動車道、磐越道、山形道と、高速自動車国道(この言い方が高速道路の正式名称)が走っていました。感心させられたのは、「急カーブ注意」「坂道注意 斜度5%」の標識。高速自動車国道なら、クロソイド・カーブでしょう。注意しなければならない急カーブは、あり得ないと思うが、あるんだからしょうがないですね。クロソイド・カーブとは、道路に傾斜がついていて、ハンドルを切ることなく曲がれるカーブ。ただし、規定速度で走っている場合ですがね。標識で、楽しかった(?)のは、「猿に注意(猿のイラスト)」でした。いつ、猿が出てくるか!ワクワク、ドキドキ!しかし、BUT! 私の前に猿は出てきてくれませんでした。猿の奴、福島の猿なのにサービス精神というものが欠如しているなあ。