アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

豚児が来たぞー!

2008年10月28日 | Weblog
  豚児が来たぞー

 「武器も、お金もないので、ぼやき川柳でも作りましょう」…オープニングは、このセリフ。ラジオの川柳番組。番組で紹介された川柳に…「うちの店つまらん菓子など作りません」という作品がありました。つまり、この店で買ったお菓子を持って、よそ様へお土産にする際、「これ、つまらないものですが…」などと言って手渡されるのでしょうが、うちの店では、つまらんものなど作ってないよ…ってこと。

 「つまらないものですが…」随分久しぶりに聞きました。40年くらい前までは、「もの」を贈る場合、必ず、「これ、つまらないものですが…」「ほんのおしるしですが…」「少しばかりですが…」「心ばかりですが…」などの言葉を添えたものでした。もちろん本当につまらないものではなく、吟味を重ねて選んだ物、あるいは先様に失礼のないものと判断しての贈り物、お土産です。それでも、「これ、凄く高価な物なんですけどプレゼントします…」「これ、良い品物なんです。あなたには分からないかもしれませんが…」などとは決して言わなかったのです。

 ところが、欧米人には、これら「謙譲の美徳表現」が通じない。
「つまらない物?そんなものいりません。失礼な!」と、なってしまうとか、アメリカ人にプレゼントをもらったので、礼を言ってとりあえず仏壇にお供えしたら、イライラしだして、「私のプレゼントを見たくないのか!どうしてそんなところ(仏壇)に置くんだ」と怒りを露わにしたとか…。日本流のへりくだりでは、気持ちが伝わらないという風潮になってきた。いわゆる、欧米か!そんなわけで、謙譲の美徳表現が逆風にさらされ、風化消滅の危機となっているわけです。

 欧米人には欧米式の対応をすればいいのです。日本では、自己を抑制することは「美しいこと」です。謙譲は「美徳」であり、遠慮がちや控えめは「奥ゆかしい」ことなのです。 それが、日本人同士で、美徳も、奥ゆかしいもヘッタクレもないってのは、情けない限り。日本は、アホウドリを絶滅から救うために、何億円もかけている国なのです。「謙譲の美徳表現」を救いましょうよ。国家予算は、1円たりとも使いませんから。
 国が旗振りをすることはないでしょうが、日本人ならではの、「謙譲の美徳を表現する言い方」国民が頻繁に使うようにして絶滅を回避しようではありませんか。
 いただく側になったときは、いただいた菓子などを一緒に食べて、「初めていただきましたが、上品な甘みで結構なものですねえ」など、自分の気持ちを正直に表現し、喜びを分かち合う。たまには、取って付けたような世辞も必要…。
 プレゼントは、その場で開けて、「これ、以前からほしかったんです」というお決まりのコメントを。但し、その場で開けると、「なんて無礼な」というタイプも存在します。相手を見ることが必要ですね。

 食事を勧める場合など、「何もございませんが、どうぞ」と言います。そのまま英訳すると、欧米人は、「凄い御馳走なのに、何もないとは?真面目な顔をして、どうして嘘を言うんだろう」となります。しかし、心配いりません。日本人は、このように表現するんだよと説明すれば、100%の欧米人が、膝を叩いて喜び、日本人が大切にしている自己抑制の「美」、「奥ゆかしさ」を感じてくれます。

 自己抑制なんて、マイナス思考だろうという説もあります。
 自分を下げて、相手を立てる。相手も、「いえいえあなたこそ!」と立てる。さらに、「とんでございません。あなたこそ」…下げて下げて下げまくるからマイナス思考だって?とんでもない。相手を立てることが出来ると言うこと自体が、すでにプラス思考です。まあ、ああ言えば、こう言うということで…。

 謙譲の美徳表現で凄く好きなのは、「豚児(とんじ。ぶたこではありません)」ですね。ほとんど死語ですが、自分の子(男の子でも女の子でも使える)の御表現です。自慢の子であっても、「うちの優秀な、長男が…」とは言わない。「うちの豚児が…」です。
 息子のインターンシップ先の会社が決まったのでに、父親が挨拶状を書いた。
「この度、豚児が貴社にお世話になることとなり・・・」
 インターンシップ初日、会社では、どんな学生が現れるか興味津々で待っていた。来た!「豚児か来た、豚児が来たぞー」と大騒ぎ、別の部課からも、豚児くんを見物に!大方の社員が「豚児」の意味を知らなかったそう。中には、本当の名前だと思っていた社員もいた。鈴木豚児、斉藤豚児…そんな名前付けるわけないだろう!

 豚児と同様に、「愚息」と言う表現もあります。ただ、相手がその表現を理解していなければ、「親が言うぐらいだから、かなり愚かな息子なのだろう」と思われるので、使い方に注意を要しますね。
 妻の場合、賢くても、「愚妻」。太くても「細君」。幸か不幸か、夫の場合、「愚夫」とか、「太君」とは言われない。夫は、本当に偉いので、謙譲の必要なしということなのでしょう。しかし、偉い親でも、「愚父」「愚母」と言う表現がある…親をへりくだる…日本語は素晴らしい。

 日常傲慢な還暦パパが、一部分だけ、謙譲の表現をしても白々しいって?千里の道も一歩からと言うではありませんか。あだ名が、「謙譲パパ」になるよう・・・
 浅学非才、僭越至極、とるに足りない男でございます。世の中のことは、管見にして寡聞。豚児たちも元気でおりますし、愚妻はいちじくを食べて喜んでおります。いくら頑張っても、皆様にはおよびませんが、日々研鑽させていただきますですハイ。なお、御来訪下さいましたら、粗茶および粗品を進呈させていただきます・・・。