アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

平泉町への提言 ~義経も芭蕉も聴いている中学生の暗唱~

2011年08月13日 | Weblog
 三代の栄耀一睡の中にして、大門の跡は一里こなたに有。
 秀衡が跡は田野に成て、金鶏山のみ形を残す。(中略)
 「国破れて山河あり、城春にして草青みたり」と、笠打敷て、時のうつるまで泪を落し侍りぬ。
 夏草や兵どもが夢の跡(後略)

 懐かしいでしょう!
 松尾芭蕉の「奥の細道」の一節です。国語の教科書に出ていましたから、「知らない?」と言う人は、授業中居眠り…?

 第35回ユネスコ世界遺産委員会(パリ 6月19~29日)で、平泉が世界遺産に登録されました!小笠原諸島の陰に隠れていたので、登録決定の時は正直驚きました。前回落選していたので、本当によかったです。

 平泉、中尊寺、毛越寺…義経も、弁慶も暮らした地。その地に、現在の我々も立つことが出来るというところが感慨深いです。彼らが見た風景と、同じ風景を見ることが出来るわけで…。私の興味は、義経もさることながら、松尾芭蕉です。
 「五月雨の降りのこしてや光堂」
 感服させられるのは、「降りのこしてや」です。天才だったのですね。「光堂」と、固有名詞で止めた。それなら、「五月雨の降りのこしてや中尊寺」でもいいんじゃないかという評論もあるかとは思いますが、中尊寺でも、テレビ塔でも、スカイツリーでもダメです。五月雨が降りのこすのは、光堂だけです。

 平泉は、世界遺産登録で沸いているわけですが、平泉が表彰しなければならない中学校があります。是非表彰していただきたい。
 その中学校が何をしてきたか?
 中学3年生の国語の授業で、冒頭の、「三代の栄耀一睡の中にして…」の文章を全員が暗記する。そして、東北への修学旅行へ出発。中尊寺の月見坂山頂(月見坂を登り切ったところ(梓川をはじめ平泉の町が臨める)で、「三代の栄耀一睡の中にして…」を、全員で朗々と!素晴らしいですよ。私も何度も聴きました。
 義経も、弁慶も、松尾芭蕉も、きっと聴いているだろうなあと思います。それほど、魂を揺すぶられるものです。ユネスコがそのような中学校の存在を知っていたら、前回登録させたでしょうけどね。平泉町も、この中学校の存在を知らないんじゃないでしょうか?この機会に大いに讃えていただきたい。

 観光客も大勢いる中で、暗記した文章を朗々と披露する。立派な生徒たちです。その前に、一生懸命暗記したことが立派。その前に、生徒にそのような指導が出来る国語教師おられるということが素晴らしい。

 平泉町が表彰しなければどうするって?その時は、平泉町役場に、五月雨を降らせてやりますよ。「五月雨」は、「万物を腐らせる雨」ですから。さすがの五月雨も金色堂(光堂)には歯が立たなかったようですけどね。
 どうしてそんなに表彰させたがるのかって?丸谷才一さんの「輝く日の宮」によると、松尾芭蕉が奥の細道へ出かけた理由は、「源義経の五百年忌を祭りたかったから」だと。私としては、世界遺産登録を記念して、「奥の細道ー平泉」を暗唱してくれる中学生を表彰してこそ、平泉が言うところの、「いにしえの心、明日をテラス光」かなと。