アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

防刃の身近な素材は…

2013年08月19日 | Weblog
 放送があってもう数日経っているのに、家人の含み笑いが残っております。
 何がどうしたかって?「あまちゃん」です。
 「あまちゃん」の主人公の父親が小泉今日子と離婚しておりましてぇ…その小泉今日子に北三陸鉄道の駅長が思いを寄せておりまして…(観ている人にはなんの説明もいらないのですが、観ていない人に説明するのはなかなか難しい。映像の力というものは恐ろしいです)。

 小泉今日子をめぐっての、「あまちゃんの父親VS駅長」。父親は乱闘を視野に入れ、武装しておりました。で、駅長があっさり身を引いてしまいました。「ホッ」とした、父親が武装を解いたわけですが…

 伸縮する制止棒(警棒?)、チェーンなどの武器のほかに、腹から1冊の分厚い雑誌を取り出した。
 家人のバカ笑いはこの段階から始まった。翌日からは含み笑いとなり今日に至っている。時々、含みきれずにはじけた笑いになってしまいます。よほど可笑しかったことがうかがえます…!

 なぜそんなに可笑しいのか?話は、30年も前に遡ります。(その昔、書いたことがあるので、サポーターの方の中には、「ああ、あの話ね」となるかと)
 指定暴力団系が田舎町に事務所を構えました。事務所員は1人。私ども小市民にとりましては些細なことだったのですが、夜更けにその事務所の方と電話で口論になりまして…日頃上品な私が、「バカヤロー!」と罵ってしまいました。当然、先方さんは怒りまして…
 「この野郎!今、ぶっ殺しに行くからな!逃げるなよ!」
 相手が、普通のオヤジなら、「ぶっ殺しに来るはずがない」と、タカをくくるところですが、なにしろ田舎町に進出してきた危ないオヤジ。必ず来る。

 そこで急遽、傾向と対策を。たぶん、匕首(あいくち。早い話がドス)を持ってくる。腹を刺そうとするだろう。対策として…
 1 腹を守る。
 2 匕首を叩き落とすために、「すりこぎ棒」を用意する。

 すりこぎ棒は台所から持ってきてベルトの背中のほうに差し込みました。腹を匕首から守るために、新聞紙を厚くして腹に巻きました。
 日本刀も、出刃包丁も用意しませんでした。いくら反社会的集団の構成員でも「過剰防衛」で傷つけてしまってはこちらが罪人。

 さて、1時間ハラハラドキドキしながら待っても来ない。2時間待っても来ない。よい子が寝る時間をとっくに過ぎているのに来ない。さては、武蔵を気取ったか!
 こちらは待ちくたびれて眠くなったので、電話しました。奥さんが出ました。
 「あのう…御主人がぶっ殺しに行くと言ったので待っているんですが、まだ来ないんですぅ…」
 「あっはっは、あーっはっは!家の人、酔っぱらって、とっくに寝てます」
 一旦口にしたことは守れよなぁーっ。この緊張の数時間は何だったんだ!

 私としましては殺し屋が来そうもないので、武装を解除しました。すりこぎ棒を台所に返し、腹から新聞紙を取り出すところで家人に発見されてしまいまして…気が狂ったと思われたみたいで…
 「なにやってんのぉー?」
 「い、いえ、そ、その、殺されないようにその…匕首…」
 この時の家人の笑いっぷりは家中の酸素が無くなるんじゃないかと思えるほど…。新聞紙で、刃物を防ぐことができるはずがないだろうという素人考えと、腹に新聞紙を巻くという非日常的な行為がウケたらしい。

 次の日も、その次の日も…私の顔を見ると笑い、新聞紙を見ると笑い…。

 あれから30年。あまちゃんの父親の腹から雑誌が出てきたところで、消えていた笑いに再点火された。
 ただ、刃物から腹を守るには、「紙」が有効ということは信じてもらえたかな。