アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

ちびった鉛筆にある少年の日

2021年05月12日 | Weblog
  「働けど働けど我が暮らし楽にならざりじっと手を見る」…さびしい歌です。啄木ですけどね。私も、じっと手を見ることがあります。60年以上も前の、教室内乱闘で負傷した痕跡がはっきりと残っています。
 休み時間にケンカになった。私の左「浮き腰」が決まり、馬乗りになったところで…始業のベル(当時は、チャイムではなくベルが鳴りました)。当然ケンカを中断して着席。その時、劣勢だった相手が始業の合図を無視し、鉛筆で襲撃してきた。「授業時間が始まっているので、襲ってこないだろう」と思った私が甘かった。手で防御したのでが、指を刺された。鉛筆の芯が指の中で折れた。教室へ入ってきた先生の、「何やってんだー!」の一喝で相手は着席。治まらないのは私。先生に殴られるのを覚悟で「授業時間内報復」に出たが、取り押さえられて廊下で45分間を過ごすことになった。板の廊下に溜まった涙は、「ねずみの絵」が描けるほどの量でしたね。なぬ?「雪舟じゃないんだから」って?古いことをよく知ってるね。

 その時の鉛筆の芯、60年以上経った今も指の中に黒く残っている。あのとき相手が、鉛筆ではなく、肥後の守(ひごのかみ:折りたたみ式のナイフ。鉛筆を削るのに使った)でも持っていたら…。今、思い出しても「ゾッ」とします。
 カルシュウム不足で、みんなイライラしていたので、ケンカばかりの時代でした…(中国で街を歩くと、結構本気のケンカが見られます。おそらく現在も。カルシュウム不足ですね)。

 鉛筆で、よく刺さるのは「H(Hardの頭文字)」です。Hは、「H、2H、3H…10H」までの10種類あります。BはBlackの頭文字で、「HB、B、2B、3B…10B」の11種類。Fというのもある。Fは、HBとHの間に入る濃さ。「F」は、Firmの頭文字。Firmは、「堅い」。
 国内で販売されている鉛筆の濃さは、22段階。これは、三菱鉛筆の例で、JIS規格とは違うかも知れませんがね。

 鉛筆の思い出として印象深いのが、「ちびった」鉛筆。5cmぐらいになるまで使っていました。お金持ちの子は、ちびった鉛筆を差し込んで、ねじるだけで書きやすい長さにできる補助器具を自慢そうに持っておりました。私は、短くなった鉛筆同士を背中合わせにしてセメダインでくっつけるという頭のいい方法をあみ出しました。2HとBの鉛筆が一本になったりするのですから画期的。問題点としては、セメダイン代です。高価なので買ってもらえない。そのため、セメダインを持っている子がトイレへ行っているスキを突きます。換言すれば窃盗ですね。いいんです。彼は、「図画の時間(この言い方が古めかしく郷愁さえ誘う!)」の時には私のクレパスを使いますから。「はだいろ(のクレパス)貸して!(当時は、はだいろがあった)」しょうがないから貸しましたが、返してもらわないうちに60年ですよ!
 閑話休題。折角セメダインでくっつけても、強度不足…。再三セメダインを持っている子がトイレヘ行くのを待つ状況に…。

 二本のちびった鉛筆の合体、私の発明でもないらしく、「三鷹の森ジブリ美術館にあったよ」と、家族の報告…。宮崎駿さんと私の発想が同じ!チョッピリ誇らしいが、これによって人生が何ら変わることがない。もっとも、「猫バス」の発想は逆さにされて振り回されても出てきませんから…宮崎さんに、「アンティークマンと私の発想が同じなどと言うな」と叱られそうですが。

 大手鉛筆メーカーに「トンボ鉛筆」があります。トンボ鉛筆をよく見ると、「TOMBOW」と書いてあります。このような重大なことに気づく人が少ない。(気づいていなかった人は、今後物事を細部まで観察する習慣をつけてください。なんちゃって)
 「TOMBOW…トンボウ」とは何か?実は「トンボ」と同じ。だったらなぜ、「ウ」をつけるのか?これは、自説ですが、「俳句でトンボを詠むとき、字足らずになるからウをつけるようになった」…自信あります。

 高浜虚子に、「蜻蛉のさらさら流とどまらず」という句があります。これを、「とんぼの さらさらながれ とどまらず」と読んだら句が台無しです。「とんぼうの さらさらながれ とどまらず」これで、秋の山と青空を背景にトンボが流れるように飛んでいきます。トンボ鉛筆の創業者は、「風流人」だったようです。 

 鉛筆って、使っていた頃を思い出させる「ちから」があるんですねえ・・・。