アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

当番医の待合室で…

2021年05月16日 | Weblog
 診察を終えた老婦人が、会計で、なにやら頼んでいた。
ご婦人:千円札細かくしてくれませんか。小銭がなくて、バスに乗れないの。
会計:ごめんなさい。こちらも小銭がなくて…

 ご婦人は仕方なく、清涼飲料の自販機へ行った。自販機のおつりで、小銭を得るために。自販機の前に立ったはいいが、どこをどうやったらいいのか、困惑している。まだお若いぃといっても60歳前後か。その様子を、小学5~6年生と思われる少年を連れた母親が気づいた。母親は少年に、「お手伝いしてあげなさい」と、小声で言った。少年は、ご婦人に近づいた。
少年:どれを買うんですか?
ご婦人:あ、どうもありがとう・・・ボクはどれがいい?
 ご婦人
は、少年に飲み物を買ってあげようとした。少年もそれに気づいた。
少年:ボ、ボクは、いいです。いりません。
ご婦人:私はカプチーノが良かったんだけど売り切れなんだわ。私はお釣りの小銭がほしいの。どうしても何かを買わなければならないから、あなたの飲みたいものを買えるといいんだけど。
 少年は、困惑して母親を見た。ご婦人に飲み物を買ってもらったのでは、母親に叱られるのではないか。かと言って、ご婦人の頼みにも応えたい…。
 そのとき、母親は、小さくコクリとうなずいた。

 少年は、無言で自販機の商品ラインナップのひとつを指さした。
 自販機は、場にそぐわない音を立てた。お釣りが出る、「チャラチャラという音が続いた」そして、飲み物が少年の手に。
 母親は、ご婦人に丁寧に礼を言った。ご婦人は、「バスに乗るのに小銭が…」のセリフを繰り返していた。

 「人情、廃れてないな」と、ほっこりさせていただきました。なぬ?「その場で、アンティークマンは、どんな働きをしたんだ」って?出る幕は…ありませんでした。