訪れたこの日は対岸の島原の普賢岳が霞んで見えた
2022年秋の熊本県の旅の二日目のこころの風景は、
玉名市岱明町の岱明磯の里物産館前の海岸です。
仕事バリバリで元気だけが取り柄だったお手紙の方が、
3年ほど前に血液のがんと診断されました。
抗がん剤治療や移植を行い元気になったそうですが、
以前の生活は無理になり、自宅でおとなしく過ごしてらっしゃいます。
退院後、お手紙の方を元気づけようと娘さんが温泉に連れて行ってくれたそう。
その途中、海を見に行こうと遠回りしたのが岱明磯の里の海。
台風が近づいて大雨だったそうですが、
到着した瞬間に一時的に雨がやみ、陽が差してきたとのこと。
物産館は台風接近で休館。周りには誰もおらず。
足の筋力が落ちていたお手紙の方は、娘さんに寄りかかり駐車場から海を見たそう。
波しぶきを立てる海は力強く、向かいにあるだろう島原半島は見えず。
磯の香りが体にしみこんでくる感じがしたとか。
その半年後、また訪れる機械を作ったお手紙の方。
磯の香りが忘れられなかったから。
駐車場からスイスイ歩くことができ、
海に突き出た石畳みのようなコンクリートの道を端まで歩き、
大きく両手を広げ深呼吸。
病気に勝って生まれ変わったんだ。
「バンザーイ!」という思いだったと振り返るお手紙の方。
島原半島はまた見えなかったが、
海は穏やかで左右には砂浜が広がっていたとのこと。
最近のお手紙の方はというと、
あの時に生まれ変わったという新鮮な気持ちは薄らぎ、
夫に悪態をついたり、小さなことで悩んだり。
普通の元の人間の戻ったといいます。
正平さん、あの場所に立ち、海に向かって深呼吸してみませんか?
という内容の手紙だった。