鹿倉トンネルを出て峠を下ると、5分ほどで豊後森に出る。
そこから大分自動車道の豊後森インターを抜けると右手に、
忽然と田んぼの中に豊後森円形機関車庫が姿を現す。
日本を代表するリゾートエクスプレス「 ゆふいんの森 」 号が豊後森駅を発車する。
車窓の右側に見えて来る巨大な扇型の建物。
ガラスは割れ、荒れるがままの建物だが、
どことなく威厳に満ち、地方鉄道が活気に満ちていた時代を想像させる。
転車台を抱え込む劇場のような円弧の機関車庫は、
九州でただひとつ残されたものである。
竣工 / 1934年 ( 昭和9年 )
設計者 / 不詳
■ Bランク近代土木遺産
昭和9年に全線開通した久留米と大分を結ぶ久大線。
昭和12年には宝泉寺までの支線・宮原線も開通し、豊後森駅を拠点として活躍した。
円形機関車庫は久大線開通時に開設した豊後森機関区の車庫である。
終戦直前に米軍機による機銃掃射に遭い、機関車の損傷や死者3人を出す惨事となり、
その爪あとは今も外壁に弾痕が生々しいく残っている。
戦後は蒸気機関車25両を擁する大規模な機関区となり、
昭和29年には隣の恵良駅から分岐して、
肥後小国駅にいたる宮原線も開通し、ますます重要度は増した。
昭和45~46年にディーゼル化が行われたため、
それにともない機関車庫も廃止されることとなった。
半径約48mの円弧を描く建物に放射状に13両分の格納スペースが連なった
九州最後の円形機関車庫も、
今後どうなるのか分からない。