「 九州 ・ 沖縄 ぐるっと探訪 」

九州・沖縄・山口を中心としたグスク(城)、灯台、石橋、文化財および近代土木遺産をめぐる。

山口県下関市 ・ 山口県有形文化財 「 山口銀行旧本店 」

2020-04-26 19:10:41 | 近代化産業遺産・土木遺産

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この建物は関門地域に進出した三井銀行の下関支店として、

大正9(1920)年に建てられました。

銀行建築の名手と謳われた長野宇平治の作品で、

下関の繁栄の象徴であった旧銀行街の一角にあります。

外観はルネサンス様式を基調とした完全な左右対称。

御影石で覆われたファサードには彫刻や装飾が施された、

本格的な古典主義建築です。

内部には吹抜けの広大な空間が広がりますが、柱はありません。

カーン式鉄筋コンクリート造というアメリカで開発された構造形式を取り入れて、

広がりのある空間をつくっています。
 

設計を担当した長野宇平治は、

東京駅を手がけた辰野金吾の弟子として知られる建築家で、

数々の銀行建築の名作を残しました。

明治30(1897)年に日本銀行の技師となり、

辰野金吾工事顧問のもと、

大阪や京都、名古屋、小樽などの支店の設計監理に携わっています。

明治42(1909)年に日本初のコンペである台湾総督府庁舎設計競技で、

デザインを選定された後は、台湾総督府嘱託として従事。

大正2(1913)年に設計事務所を設立してからは、

横浜正金銀行下関支店や日本銀行岡山支店など、

多くの古典主義建築に関わりました。

大正6(1917)年には日本建築士会(後の日本建築家協会)初代会長に選ばれています。
 

三井銀行は、昭和8(1933)年に百十銀行へ営業権を譲渡。

この建物は百十銀行本店となり、

昭和19(1944)年に県内5銀行が合併して山口銀行が発足してからは、

山口銀行本店として使用されました。

昭和40(1965)年に現在の本店が完成した後は山口銀行観音崎支店となり、

昭和44(1969)年に観音崎支店が入江支店として移転した後は、

山口銀行別館として平成16(2004)年まで銀行内の会議や集会に使用されていました。
 

実は三井銀行は、この支店建設前に一度下関から撤退をしています。

明治9(1876)年に私立銀行の設立が許可されると、

三井銀行は下関に物品問屋を対象とした一等出張店を開設。

明治26(1893)年に出張店を支店に昇格させて業務の拡大を図りました。
 

しかし、その後物品問屋が衰退します。

明治40(1907)年には下関支店を閉店し、百十銀行へ営業譲渡。

関門地区での営業の中心地を門司に置いたのです。

やがて第一次世界大戦が勃発し、日本の経済情勢は上向きに転じます。

下関の商業も大きく発展し、大正5(1916)年に再度出張所を開設。

大正7(1918)年には支店に昇格し、大正9(1920)年に新店舗を新築したのです。

 

住所 : 山口県下関市観音崎町10-6
電話番号 :  083-232-0800
駐車場 : あり
営業時間  :  10:00〜17:00
休館日  :  月・火曜、祝日、年末年始 ( 12/29〜1/3 )
料金  :  無料


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