「 九州 ・ 沖縄 ぐるっと探訪 」

九州・沖縄・山口を中心としたグスク(城)、灯台、石橋、文化財および近代土木遺産をめぐる。

福岡県上毛町 ・ 宇島鉄道跡を歩く 「 宇島鉄道岩木大池の築堤跡 」

2021-05-26 12:00:00 | 廃線路

今も灌漑用の岩木大池に残る築堤

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

池の向こうに光林寺が見える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

池の横にある岩木山

 

 

 

 

 

 

宇島鉄道は明治45年3月に京築の有志により、

宇島鉄道株式会社を設立され、

大正3年(1914年)1月11日に待望の開通式を迎えた。

今から100年以上も前のことである。

豊前市八屋から上毛町有野までの17.7キロを結ぶ「宇島鉄道」であったが、

大分県中津市の「耶馬渓鉄道」の出現や経営難などから、

昭和11年(1936年)8月1日に全面廃業した。

わずか22年6カ月で廃線となった幻の宇島鉄道である。

 

宇島 ー 千束 ー 塔田 ー 黒土 ー 広瀬橋 ー 安雲 ー 光林寺 ー 岩木大池築堤

友枝 ー 鳴水橋 ー 下唐原 ー 中唐原 ー 上唐原 ー 百留 ー 原井 ー 鮎帰 ー 有野

 

この灌漑用の岩木大池に築堤が造られたのは、

「 直線線路を確保したい 」 という宇島鉄道は、

築堤に開口橋を設けることで、水利関係者と合意し、

築堤を建設したという。

そんな岩木大池あたりを舞台とした民話がある。

 

『 汽車に乗って狐の嫁入り 』 (新吉富村誌より)

 

この村に軽便鉄道(宇島鉄道)の通っていた頃の事。

宇ノ島から有野まで、有野は有名な青ノ洞門の川を隔てた前のところ。

マッチ箱のような車両が二つ、たまに有野の木材を運ぶときには貨車ひとつ、

それを引いた機関車が、黒い煙をあげながら、

シュッポ、シュッポと田んぼの中、桑畑の中、

鉄橋を渡り、山際を通り、汽笛を鳴らして走る。

 

この線路は、西吉富の成恒の一部と、

安雲の田の中を突っ切って友枝駅に向かう。

安雲には、安雲駅のほかに光林寺(お寺のおつとまり時の臨時駅)があり、

一つの集落の二つの駅と安雲集落の人の自慢の種であった。

しかも代々の機関士さんや車掌さんが安雲の人であった。

 

晩春のある夜、乗客の少ない終列車が友枝駅を過ぎ、

岩木山の横にさしかかった時、車掌さんが一両目から二両目とめぐって来ると、

乗客のいないと思っていた二両目の座席に、

今まで見たことがない美しい十五,六歳の娘と三十半ばくらいの女の人とが、

ひっそりと腰を掛けていた。

「美人だな~」と思いながら、そのまま声をかけずに引き返した。

 

そして安雲駅に着いた時「おや?」っと思った。

降りた気配も無いのに、後ろの車両の娘と女の人の姿は影も形もなく、

ただ淡い電灯が空の車内を見せていた。

その出来事を私の家に風呂を入りに来た車掌さんが話してくれた。

友枝川の川姫だろうか?川姫なら座席が濡れている筈。

濡れていないところを見ると、野路の狐が照日に嫁入りに来たのだろうと、

妹や友達と話し合った。

それは空に木の葉形の月が出ている夜のことでした。

 

宇島鉄道は大正の初め頃から、昭和十一年頃までだったと憶えています。

線路の両側に咲く月見草を摘み摘み、竹久夢二の宵待ち草の歌を唄いながら、

夢二描く少女の絵と汽車に乗った狐の嫁入りを重ねて考える

多感な少女時の軽便鉄道の通った時代の懐かしい思い出話である。

 


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