装飾古墳の中でも色彩や形が確認できる珍敷塚古墳の壁石
珍敷塚古墳 ( めずらしづかこふん ) は、
古畑古墳、鳥船塚古墳、原古墳などと同じ屋形古墳群にあり、
それぞれの古墳には装飾が施されているが、
中でも珍敷塚古墳の装飾は鮮明に描かれている。
図解した下の文章に沿って船や鳥や蕨手文、3個の靭 ( ゆぎ ) 、蛙などを探して下さい。
珍敷塚古墳は、古墳時代後期 ( 6世紀 ) に造られた円墳で、
昭和25年、採土工事中に発見されたものだが、
現在奥と右側の壁のみが残されている。
珍敷塚古墳の最大の特徴は、奥の壁に描かれた壁画で、
古代人の信仰思想の一端を伺い知ることができる貴重な資料である。
奥壁の壁画、左上には大きな同心円文が、その下にはゴンドラ形の船があり、
その船の舳先 ( へさき ) には鳥が止まっており、櫂を持つ人物が船を操る姿が見える。
中央には、死者を守るためなのか、弓矢が入った※靭 ( ゆぎ ) が3個並んでおり、
大きな※蕨手文 ( わらびてもん ) が左の靭の間から描かれている。
また、右端の靭の隣には弓と盾を持った人物がおり、
その下には古代中国で月を表す図文であるといわれるヒキガエルが2匹描かれ、
上のヒキガエルの横には小円文が見られる。
このように、珍敷塚古墳の壁画には、ここに葬られた人物が、
太陽の輝く陽の世界から、月を支配する陰の世界へ、
鳥の導く船で現世から来世へと旅立とうとする姿が表されているといわれている。
現在、この壁画は保存施設内にあるが、見学には事前に予約が必要である。
※ 靭 ( ゆぎ ) ・・・矢を入れ,腰につけて持ち歩く筒形の容器。
※ 蕨手文 ( わらびてもん ) ・・・ワラビの形に似た渦巻状の文様で、呪術的な図文と考えられている。
( 国指定史跡 )