山本飛鳥の“頑張れコリドラス!”

とりあえず、いろんなことにチャレンジしたいと思います。

福田和也氏の印象

2024-09-27 05:35:28 | 日記2024

昨日借りて来た「東京の流儀」を読み始めた。まだ本当に最初の部分である。

この本は、散歩・街歩きのことが書いてあるようだ。私も一応東京に40年以上住んでいるし、この人と同じ世代(現在にて60代前半)なんだから、かなりの共通性を持ち合わせていることになる。

ところが、読み始めてびっくりしたのは、どうしたって自分より10才以上は年上なんじゃないかというイメージなのである。

例えば、中華の店に関する部分では、
「戦後の小津安二郎の作品には、笠智衆や中村伸郎と言った中年男たちがつどう料亭や、座敷のトンカツ屋とともに、場末のラーメン屋が点景として出てくる。零落した漢文の教師である、小澤栄太郎が、娘-杉村春子に追いつかわされているところに、加藤大介がタンメンを食べにくるような。」

この古い俳優たちを知っているのは、彼が昔の文芸作品を研究しているからなんだろう。それとも子供のころから、映画などをよく見ていたのだろうか。

私が知っているのは、笠智衆と小澤栄太郎と杉村春子だ。杉村春子は文学座の公演でよく見た。
笠智衆は私が子供の頃にはすでにおじいさんだったと記憶している。杉村春子も私が演劇に没頭していた高校の頃から70代くらいのすごい年齢で、その時すでに日本史の教科書に載っていたので驚いたのだった。

その笠智衆が中年男であった戦後の作品というのを、自然に知り得るのは、私たちよりももっとずっと上の世代ではないか。やはり過去の文芸作品を研究している人ならではの視点なんだろう。

過去のことを研究している人は、自然に人生を熟達した人のような雰囲気を醸し出すのだろうか。

この人の概要をウェブで見ると「保守派論客の文芸評論家」という言葉が出てくる。昭和天皇に関する著書もあるようだけど、やはり実際の一般同世代人に比べると、ちょっと古めかしい印象を受けるのであった。

現代人は、むしろ戦後の日本に郷愁を抱くよりも、コロナ前の日本に郷愁を抱いてしまうのが自然だ。杉村春子や小澤栄太郎なんかすっかり忘れ去られているのではないだろうか。

しかし、同世代の男性が結構古めかしいと感じたのは、今年故郷の高校の同窓会に行ったのだが、そのときに昔野球部だった同級生が、地元の史跡的建物に関して、延々と歴史を解説し始めたのがとてもジイサンぽかったのだ。
この人って、昔は野球のことしか考えてないような少年だったイメージだが、その建物が大正時代に資産家の別邸として建てられ、その後旅館になって文壇人たちが泊まりにきたとか、さらにその後…などという経緯をかなり詳しく知っているらしく、解説してくれたのは驚いた。
年を取るとそういうことになるのだろうか。

そういえば、私も最近は、昔の建物(城跡や旧庁舎)や昔の街道などに興味を持つようになったのも年のせいなのかもしれない。

「東京の流儀」が書かれたのは今から20年くらい前のようで、それならば、時代的には確かに古い感じがするのはあたりまえ。
それにしても20年前は、著者はまだ40代前半だったのだから、こんな年配者みたいな文を書いていたらずいぶんと年寄り臭い気がする。

40代なんてまだまだ若者ではないか。

この人は、1989年に「奇妙な廃墟」を刊行し、1993年に「日本の家郷」で三島由紀夫賞を受賞。
私は1989年に次女を出産。当時はひたすら子育てと家事に従事。
それが20代の終わりから30代初めの頃の人生。

・・・

この人は文芸評論家っていうよりも「東京の流儀」に関しては、エッセイストって感じである。
自分よりずっと年上(昔の人)のような印象を受ける。
文は面白い。
理解・共感はできる。
今後も色々読んで行きたいと思う。

私は人生をサボっていた分、精神年齢が低く、よく言えば若そうなので、これからも身体が元気なうちは、色々なことに興味を持って、コロナ後のへんてこりんな世界を生きていくことになる。