先月、新型コロナに発病した夫から症状が移り、陽性を判定するためにPCR検査を受けに行った時のことを書いておく。
11日の夜に喉がいがらっぽくなり、12日に咳が出てきて、13日には倦怠感・微熱と筋肉関節通になり、市販の総合感冒薬(咳止め・喉の痛み・発熱などに対応するもの)を飲んで過ごした。
悪寒などはなく、高熱に上がって行くという気配はなかったが、身体の痛みを和らげるために薬の解熱鎮痛効果は必要だった。
薬を飲むと魔法のように症状が消え、痛みも倦怠感もなくなる。
夫が既に発病していて、私に感染する前は、部屋を隔離して食事をお盆に載せ運んでいたが、私も感染したことがわかったので隔離する意味がなくなった。
それで、食事を運ぶ必要がなくなったし、色々なことに気を配る必要が無くなったのは気が楽だし、労力も減った。
しかし、私が発病しても、自宅療養では、相変わらず2人分の食事を1日3度用意しなければならない。しかも、外出ができないので、自宅にある食材を色々工夫して作らないといけないので、ちょっと大変だ。
起き上がるのも辛い感じがするが、薬を飲むと倦怠感が消えるので普通に立ち上がり動くことができるのだ。熱もないし咳も出ないし何ら問題はない。
しかし、唯一違うのは、心臓の鼓動が速いことである。パルスオキシメーターでは酸素飽和度が96などと表示されるが、脈拍も98とかだから、どっちがどっちの数字かわからなかったりする。
薬で様々な症状は消すことができるが、心臓がドキドキしていて鼓動が激しいのは、やはり身体がウイルスと戦っているのだろうと感じるのだった。
もう感染していることはわかっているが、13日は日曜日なので14日の月曜になってから検査を受けることにした。
すると、せっかちな夫が勝手に発熱外来に問い合わせているのである。そして電話までかけているのだ。(療養中も至って元気な夫。暇でしょうがないのだろう。)
私は月曜日は仕事もあるので、午前中リモートワークをして午後に検査に行こうと思っていたのに、いきなり夫が電話をつないでしまっていて、午前10時に検査を受けることになった。
場所はそう遠くはないが、朝の9時に電話をして10時に到着するということは大変である。
勤務先にも午後休を午前休に変更する手続きなどしないといけないし、着替えなどの準備もしなければいけない。
検査するクリニックは、何時が良いですか?などの希望を聞くわけではなく、「では10時に来るように。時間厳守です。絶対に遅れないでください」とのことだった。
この日も薬の力が無ければ、寝込んでいる状態だが、解熱鎮痛薬を飲んで30分くらいすると麻薬のように症状が消え元気になるので、健康人となんら変わらず自転車に乗って走り、スロープなども自転車を押して上り下りなどして、現地に到着した。
普通の人間とは別の入り口に向かい、そこに着いたらスマホから中に連絡を入れるとドアを開けてくれるそうだ。絶対に遅れないようにと言われていたので、焦って行ったら10分も早くついてしまったようだ。
電話をすると、「早すぎるので時刻まで外で待っていてください」とのこと。いや、これは結構きつい。早く着いた自分が悪いのだが、クリニックの裏口の前にしゃがんでうずくまったりして待っていた。誰かに見られたら怪しい人間だと思われそうである。幸い人に見られてはいないようだったが、近隣の人には、そこがコロナの検査入口ということがわかっているに違いない。
定時になるとドアが開き、防護服の人が中に入れてくれた。1つの部屋に机と椅子が一つあるだけで、机の上に体温計・パルスオキシメーター・アルコールなどが置いてあった。
防護服の人から体温を聞かれ、家を出る前に計るのを忘れていたことに気づいた。最初から高熱があるという感覚がないので、朝から体温を測っていないのだ。確かに電話で、家を出る前に体温を測るように言われたことを思い出し「すみません、測ってくるのを忘れました」と言った。
すると「じゃあ、ここで測ってください」というので、わきの下に体温計を挟むためにコートのボタンをはずし始めた。
すると「診察をするわけじゃないんだから、コートなんか脱がないでください!」と怒られた。
「あ、前を外さないと体温計が挟めないので・・・」とビビる。
それから体温を測ると36℃くらいだったと思う。
それからいよいよ検査を始めるが、鼻から綿棒を差し込むのだと思ったら、意外に唾液を採取するのだという。
小さな容器とそこに管のようなものが刺さっている。
「では、溜まったころに電話をしますので、ここで一人で唾液を入れておいてくださいね」と言って防護服の人は退出しそうになった。
しかし、これはどうやって唾液を入れるんだかまるで分らないので、呼び止めて聞き直すと、管のようなものを咥えてそこから唾液を中に入れるのだそうだ。
そうして、部屋に1人残され説明を読むと、線のところまで唾液を溜めること、泡状ではだめで液体だけで線まで必要、と書いてある。
小さな容器を持って管を咥えるが、口の中が乾いていて唾液なんか全然出てこない。これは大変だ。
唾液というのは口の中にたくさんあるような気がするが、いざ外に出そうとすると溜まらないものである。
そういえば、どこかの検査場で、梅干を見るとかテレビで放送していたのを思い出した。
唾液を少しずつ何度も出しながら、問診票を書いたりしていた。
10分くらい経ったころに、頃合いを見て防護服の人が電話をしてきたらしいが、気が付かなかった。
電話に出られるようにスマホを出しておくようにと言われ、机の上に置いてはあったのだが、通常は音が出ないように設定してあるので気づかなかった。
問診票も書き終わり、唾液もだいたい溜まったかなと思っていると、電話に着信があり、今度は気が付いた。
そして防護服の人が戻ってきて、唾液の瓶を見て少し足りないようだが、まあ大丈夫だろうと言った。
口にくわえた部分はティッシュに包み、自宅で自分で廃棄するようにとのことで手渡されたのでバッグの中に仕舞った。
防護服の人も、本当に危険を冒して検査をしているという感じで、できる限りは近づきたくない様子だった。私は疫病の感染源なわけだ。
問診票に書いた症状に合わせて、何の薬が欲しいか聞かれ、解熱鎮痛剤・咳止め・去痰剤などの処方箋を出してくれるとのことだった。
後でわかったのだが、防護服の人はここのクリニックの先生だった。
外来診療もやっているので、その合間に検査をしてくれたのかよくわからない。
私が裏口で待っていたときに、表入り口から入っていく普通の患者も居たようだ。
「あなたが薬局でウロウロするのも良くないから、こちらから薬局に連絡をして薬を用意してもらっておきます」とのことである。
そして、薬局の場所も早口でさっと教えてくれたが、初めての場所だったのでわけがわかなかった。
詳しく聞き直すのも迷惑になりそうなので、とりあえず、そのへんにあるんだろうと思って退散した。
検査は30分おきくらいにやっていて、人と人が重ならないように間を開け、検査室の換気や物品の消毒などもしているのかもしれない。
感染者としては、自分が同空間にいるのも恐れられるような危険人物になってしまったことがショックだが、それも仕方がない。
こんな危険を冒してまで検査をしてくれる医者がいることはありがたいことである。
医者が感染してクリニックが営業できなくなったりしたらそれこそ大変だろうから、そういうリスクを冒してやってくれているということだ。
実際、夫などは高血圧・高血糖などで内科のかかりつけ医があるものの、発熱のある人、コロナ疑いのある人は一切診察拒否になってしまっていて、かかりつけ医に相談などできない状況である。
しかし、それも糖尿病などの持病のある人がクリニック内で感染したなんてことになったら大変だから、患者を守るためにも仕方がないのだろう。
それにしても、コロナという病気にかかった人が、診察も受けられない状況っていうのは何かおかしい気がする。病院と言うのは、病気を診るところなのに、それができない状況だ。
実際には、インフルエンザ程度だと思うし、もうどこに行ってもかかっている人はいっぱいいて、PCR検査をしないで陽性が出ない限りは、ただの風邪とか無症状とかで巷にいっぱい存在しているではないか。
私もコロナにかかる前は、もし同じ空間に感染者がいたら恐怖におののいていたと思うが、いざ自分が感染したら、もうノーマスクの人間が電車の中にいても何も怖くなくなってしまった。
まだステルスオミクロンなど変異株があるから何度でもかかるなどと脅されるけど、もうこれ以上神経を使い続けることが出来ないと感じる。
・・・
検査をした日の話に戻すと、薬局はすぐに見つかり、自転車を置いていると薬局から薬剤師さんが出てきて薬を渡してくれお金を払って帰ってきた。薬局の中に入っていく子ども連れの人などもいたので、接近することなく屋外で薬を受け取れたのは本当にたすかった。
それから、自転車で自宅にまっすぐ帰り、買い物などもできないので、その日の昼ご飯は自宅にある食材で作り、それから薬を飲んで元気を維持し、午後には仕事をしたのである。
恐怖におののく感染症の人間が、自転車に乗って走りまわり、自宅で料理をして普通に洗濯物などを干し、そして在宅ワークを普通にしているわけである。
確かに、お年寄りや持病のある人に感染させたら大変だから2類になっているのだろうが、これが保健所で管理され一般社会から隔離されるような病気なんだろうかという違和感は、やはりある。
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PCR検査の結果は、その日の夜には判明するだろうということだったが連絡は来ず、翌朝早くに先生から陽性の連絡があった。朝先生の所に判定結果が届き、すぐにこちらに電話してくれたようだ。そしてすぐに保健所にも連絡しておきますとのことで、とてもテキパキとした対応をしてくれた。
前日、唾液で検査する前に、歯を磨いてから行ったのだが、夫が言うには歯を磨いたら陽性にならなくなってしまうとのことだった。歯を磨いてはいけないなどということは先生は言っていなかった。その上、検査結果が夜出るというのに連絡が来なかったので、夫はその検査はあてにならないと不信感を募らせていたのだ。
しかし、実際にはちゃんと陽性結果が出たし、迅速に対応してくれたので、本当に有難かった。
夫のほうが11日に休日診療機関で検査を受けて陽性になったのに、保健所への連絡が遅れていて、その後の対応は、ほとんど私と同じになってしまった。