10年くらい前でしょうか、ストレスの蓄積もあって、ある日立っていられないくらいの胃の痛みを感じ、急きょ温泉湯治を決意。
花巻南温泉峡「鉛温泉」の一軒宿「藤三旅館」で数日間療養した経験があります。
レトロな建物で風格があり、「白猿の湯」という、立ったまま入浴するスタイルの浴場で有名なお宿です。
ここで炬燵に入りながらのんびり過ごせたことと、温泉の効果で、胃の痛みは治まり、仕事に戻ることができました。
私にとってそういう思い出のあるお宿なのですが、最近になって隣接する敷地に新しいスタイルのお宿をオープンされたと知り、たまには贅沢も・・・と予約してみました。
予約後、数日してお手紙が届きました。
どんな宿なのかとワクワクします。
予約を決める時から、もう私の旅は始まっています。
予約からチェックインまで、日にちが長いほど、旅を感じている時間も長く、期待も高まります。
さて、その日がやってきました。
自宅から直行したため、早めに到着してしまいました。
駐車場に車を停めると、すぐにスタッフさんが確認に来ました。
そして旅行用カートをロビーまで運んで下さいました。
「お部屋のご用意がまだのため、ロビーでお待ちください」と案内されました。
黒と白とグレーの無機質な空間のロビーにいると、このお宿が藤三旅館の経営とは思えないほど、全く違う異空間だと感じます。
「NEO RYOKAN 」という新スタイルにこだわっているそうです。
冷たいハーブティーを頂きながら待っていると、ドリンクバーの準備が整ったようです。
「お好きなお飲み物をご自由にお召し上がりください」とご案内頂きました。
このドリンクバー、オレンジジュース・グレープフルーツジュース、赤白ワイン(メルシャン)の4種類あり、時間内(15:00~夕食少し前位の時間迄だったと思います)はフリー。
無料ドリングバー時間内は、お部屋にグラスを持ち込むのも、ロビーで頂くのもどちらも宜しいそうです。
お部屋について事前に調べたところ、NEO RYOKAN は黒、白、グレーを基調とした各々違うお部屋になっており、黒いお部屋はシックな雰囲気が印象的でした。
私は、その黒の空間に抵抗を感じたため、予約時に黒でないお部屋をリクエストしました。
さて、お部屋に案内されました。
お部屋付きのスタッフさんに、とても丁寧な接客を頂きました。
広々として清潔で、ゆったり過ごせそうなお部屋です。
イエローのソファーが強烈で印象的です。
座ってみると、体がほどほどに沈む、ホールド感のある座り心地で、素材も滑らかで柔らかく、横になって脚を伸ばしても、相方が座れるスペースも十分に確保できました。
エスプレッソマシーン完備。
色々なテイストのコーヒーを頂ける、贅沢なサービスです。
ダブルベッドの正面がガラス張りの壁。
その向こうは、大きな鏡のある洗面所。
お部屋のガラスの向こうが浴室。
洗面所から、シャワーブースを経て、入ることもできます。
露天風呂は、全室浴槽の形や大きさが違うそうです。
二人で入るには十分過ぎるほどの浴槽に、鉛温泉の源泉から加熱も加水もなく、源泉かけ流しが注がれています。
温泉好きな私には、こういう贅沢に心が躍ります。
お湯は微かに硫黄匂があり、湯ざわりも柔らかく、しっとりと潤ってジンワリ芯まで効果がありそうな、いいお湯でした。
湯加減も熱すぎず、ぬる過ぎず、ちょうど体が一番喜ぶような加減の心地よい温度でした。
クローゼット内部は旅館スタイルとNEO RYOKAN との融合というところでしょうか。
このバスローブ、フカフカで厚みがあり、肌触りが良かったです。
お食事会場は壁ロールカーテンで仕切られたテーブル席。
浴衣だけどダイニングバーに来たような、へんな気分です。
前菜。
前沢牛は美味でしたが、私はソースをかけず素材の旨さを引き立たせる「塩」で、シンプルに頂きたかったです。
朝食はトマトジュースが美味しくて印象に残りました。
さて最後に。
十三月に宿泊すると、藤三旅館の温泉が使えちゃうんです。
夕食後に少し寝てしまったので、深夜になってしまいましたが、カードキーで藤三旅館へ。
タイムトンネルをくぐったような、この「NEO RYOKAN 」から歴史ある「旅館」に移行する感覚は、本当に不思議で、この経験はほかの旅行プランでは味わえないと思います。
まず、匂いから、視角から、空気感から・・・五感がいろんな情報を感じて、私自身刺激を受けるんです。
どっちが良い?とかの認識じゃなくて、「こういう時間を私は生きているんだなぁ~」という漠然とした気持ち。
深夜一人だったら、(廊下がライトダウンしていて)怖くて行けなかっただろう「白猿の湯」に相方と入浴。
足元からあたたかいお湯が湧いていて、体がすぐにぽかぽかに温まる、とても良質のお湯でした。
本当に歴史的価値のあると解る、良いお湯だったのがとても心に残りました。
数日後。
思いがけず葉書が届いていました。
部屋付きのスタッフさんと何気なく交わした会話が手書きで丁寧に書かれていて、彼女のお顔が思い出されてきました。
あの旅館で過ごした不思議な時間と、白猿の湯の温泉の素晴らしさ、藤三旅館のお風呂を全制覇できなかった少しの後悔とが思い出され、暫し旅の余韻に思いを巡らしました。
「また、旅に行こう!」と思いを巡らす私でした。
旅の終わりは、次の旅の始まり、ですね♪
*今回「鉛温泉 心の刻 十三月 」をダイジェストにして綴らせていただきましたが、次からはもっと詳しくお伝えしていきたいと思います。