フォーム・・オーバースロー 球種・・シュート、カーブ
防御率首位が今年のねらい
今年の太平洋は打高投低だといわれている。打線強化の代償に、若手投手の柳田、河原、中継ぎの三輪を放出したからだ。それにいま一つ、信頼をおけるエース不在もある。その中で首脳陣が一番頼りにしている男がいる。
プロ入り七年目の田中章、三十歳だ。170㌢、64㌔の体で、青白い顔。頼もしさといえば、濃く太いマユゲくらいだ。だが、過去三年連続して防御率ベスト3に顔を出している。また昨年は12勝のうち日本一のロッテから6勝と、さんざん苦しめたヒーローでもある。といって格別スピードがあるわけでもない。無類の制球力と度胸のよさがあるだけだ。
江田ヘッドコーチの構想は、加藤初、東尾に、二年目の浜浦を一本立ちさせ、逃げ切りに田中と木原(前広島)を使うことだ。同コーチは「この投手陣で勝負できるのは前期だけ。それも継投策しか活路はない」と見ている。
だから田中の出来が大きなポイント。
田中はそんな期待を十分感じ取っており「今年は防御率のタイトルをとりたい」とはっきりいう。その目安は130イニング投げて自責点30(防御率2・08)。そのためにキャンプでは「いかにしてボールを打たせるのか」のテーマに取り組んでいる。
現段階は体力づくりが主で、ピッチングはキャッチボールよりやや進んだ程度。だが昨年は滑り出し1勝3敗とエンジンのかかりが遅かったことを心得ており。「下半身さえ鍛えておけば、本格的なピッチングにすぐ移れる。開幕からフル回転する」と淡々と走っている。
1972年の資料「7月8日現在」
・いまパリーグで話題になっている選手に西鉄の田中投手がいる。0勝2敗と一度も勝っていないのに防御率が1・48で第一位。
二位の佐藤道「南海」が2,28だから断然トップである。しかも最近になってますます調子を上げてきて、ここ10試合での防御率は
1,29にしかならない。すっかり西鉄の救援の切り札となった感じで6月15日以来の16試合に10試合に登板しているほどなのだ。白星はないが、セーブがすでに5試合。7月6日からは連続3試合にセーブを記録し「稲尾・西鉄」初の4連勝の立役者となっている。
・最近10試合の田中投手
6月15日・・阪急戦・・2回・・・自責1・・・負け
6月16日・・東映戦・・2回・・・自責0
6月20日・・ロッテ戦・・3回・・・自責0・・セーブ
6月21日・・ロッテ戦・・2回・・・自責0
6月24日・・阪急戦・・5回・・・自責2
6月29日・・ロッテ戦・・6回・・・自責1
7月5日・・・阪急戦・・・4回・・・自責0
7月6日・・・阪急戦・・・2回・・・自責0・・セーブ
7月7日・・・東映戦・・・1回・・・自責0・・セーブ
7月8日・・・東映戦・・・1回・・・自責0・・セーブ
田中投手1972年・初白星
・「地方球場はどうも苦手だ」と先の青森遠征でkOを食って防御率一位の座をずっこけた田中が、こんどは地方球場の新南陽球場
「徳山市」で今季初の1勝をマークするや、大の地方球場好きと急変し「現金なヤツだ」と首脳陣を苦笑いさせている。それもそのはず、田中にとっては、この新南陽球場での対ロッテ戦は、先の青森での対東映戦とは全く反対の結果になったのだから、これでまだ地方球場をけなしていたらバチが当たるというのだろうか。この1勝をマークする前は「地方球場はマウンドが柔らかいので踏み込みが思うようにいかないのだ。デーゲームの悪条件のうえ、不備な設備の球場でプレーするのは考えものだよ」なんてグチっていた言葉もどこふく風。相手投手・野村が「マウンドが柔らかくて、すぐスパイクの穴だらけで投げづらい」とkOされたのをぼやいたのに、こちらは「工夫すれば、なんとかなる。ピッチングの出来、不出来をマウンドのせいにしたくない」と涼しい顔である。さらには、プロ野球・初お見えの
新南陽市のファンに対しても一言。「雨模様のうえ、山口県知事の選挙投票日っていうじゃない。これなのに、こんなに「観衆6千5百人」見に来てくれる。地方進出もたまにはいいのじゃないかなァ」「帰りの駅で田中は、奥さんと息子のお土産にウイロウを買い求めては河村コーチにまで薦める調子のよさ。人口3万3千の新産業都市での初白星と、防御率のタイトル獲得を有利とした3回3分の1無失点の好投は、やる気をかきたてるのに十分過ぎる出来事だったらしく「もう今季は地方へ出ることはないのかなぁ」と徳山から福岡への帰りの汽車の中でナインを大笑いさせていた。
1974年の資料
・太平洋の8時半の男といわれる田中だが、意外と実績をあらわす記録に縁がない。去る5月29日、仙台でのロッテ戦でおしくも
有藤の一発で勝利を逸したが、9回完投・引き分けとなった時、田中は好機に報われなかったことを悔やんでだろうか「よく9回まで投げられたものだ。途中でバテるかと必死だった」マウンドで試合終了と同時に小躍りしたのには打てなかったバックの方がビックリ。
その理由は田中が説明してくれた。「ようやく規定投球回数に到達し、防御率で新聞に名前が載るようになりました」名火消しとおだてられても、やはり陽のあたる場所の魅力は捨てがたいようだ。
防御率首位が今年のねらい
今年の太平洋は打高投低だといわれている。打線強化の代償に、若手投手の柳田、河原、中継ぎの三輪を放出したからだ。それにいま一つ、信頼をおけるエース不在もある。その中で首脳陣が一番頼りにしている男がいる。
プロ入り七年目の田中章、三十歳だ。170㌢、64㌔の体で、青白い顔。頼もしさといえば、濃く太いマユゲくらいだ。だが、過去三年連続して防御率ベスト3に顔を出している。また昨年は12勝のうち日本一のロッテから6勝と、さんざん苦しめたヒーローでもある。といって格別スピードがあるわけでもない。無類の制球力と度胸のよさがあるだけだ。
江田ヘッドコーチの構想は、加藤初、東尾に、二年目の浜浦を一本立ちさせ、逃げ切りに田中と木原(前広島)を使うことだ。同コーチは「この投手陣で勝負できるのは前期だけ。それも継投策しか活路はない」と見ている。
だから田中の出来が大きなポイント。
田中はそんな期待を十分感じ取っており「今年は防御率のタイトルをとりたい」とはっきりいう。その目安は130イニング投げて自責点30(防御率2・08)。そのためにキャンプでは「いかにしてボールを打たせるのか」のテーマに取り組んでいる。
現段階は体力づくりが主で、ピッチングはキャッチボールよりやや進んだ程度。だが昨年は滑り出し1勝3敗とエンジンのかかりが遅かったことを心得ており。「下半身さえ鍛えておけば、本格的なピッチングにすぐ移れる。開幕からフル回転する」と淡々と走っている。
1972年の資料「7月8日現在」
・いまパリーグで話題になっている選手に西鉄の田中投手がいる。0勝2敗と一度も勝っていないのに防御率が1・48で第一位。
二位の佐藤道「南海」が2,28だから断然トップである。しかも最近になってますます調子を上げてきて、ここ10試合での防御率は
1,29にしかならない。すっかり西鉄の救援の切り札となった感じで6月15日以来の16試合に10試合に登板しているほどなのだ。白星はないが、セーブがすでに5試合。7月6日からは連続3試合にセーブを記録し「稲尾・西鉄」初の4連勝の立役者となっている。
・最近10試合の田中投手
6月15日・・阪急戦・・2回・・・自責1・・・負け
6月16日・・東映戦・・2回・・・自責0
6月20日・・ロッテ戦・・3回・・・自責0・・セーブ
6月21日・・ロッテ戦・・2回・・・自責0
6月24日・・阪急戦・・5回・・・自責2
6月29日・・ロッテ戦・・6回・・・自責1
7月5日・・・阪急戦・・・4回・・・自責0
7月6日・・・阪急戦・・・2回・・・自責0・・セーブ
7月7日・・・東映戦・・・1回・・・自責0・・セーブ
7月8日・・・東映戦・・・1回・・・自責0・・セーブ
田中投手1972年・初白星
・「地方球場はどうも苦手だ」と先の青森遠征でkOを食って防御率一位の座をずっこけた田中が、こんどは地方球場の新南陽球場
「徳山市」で今季初の1勝をマークするや、大の地方球場好きと急変し「現金なヤツだ」と首脳陣を苦笑いさせている。それもそのはず、田中にとっては、この新南陽球場での対ロッテ戦は、先の青森での対東映戦とは全く反対の結果になったのだから、これでまだ地方球場をけなしていたらバチが当たるというのだろうか。この1勝をマークする前は「地方球場はマウンドが柔らかいので踏み込みが思うようにいかないのだ。デーゲームの悪条件のうえ、不備な設備の球場でプレーするのは考えものだよ」なんてグチっていた言葉もどこふく風。相手投手・野村が「マウンドが柔らかくて、すぐスパイクの穴だらけで投げづらい」とkOされたのをぼやいたのに、こちらは「工夫すれば、なんとかなる。ピッチングの出来、不出来をマウンドのせいにしたくない」と涼しい顔である。さらには、プロ野球・初お見えの
新南陽市のファンに対しても一言。「雨模様のうえ、山口県知事の選挙投票日っていうじゃない。これなのに、こんなに「観衆6千5百人」見に来てくれる。地方進出もたまにはいいのじゃないかなァ」「帰りの駅で田中は、奥さんと息子のお土産にウイロウを買い求めては河村コーチにまで薦める調子のよさ。人口3万3千の新産業都市での初白星と、防御率のタイトル獲得を有利とした3回3分の1無失点の好投は、やる気をかきたてるのに十分過ぎる出来事だったらしく「もう今季は地方へ出ることはないのかなぁ」と徳山から福岡への帰りの汽車の中でナインを大笑いさせていた。
1974年の資料
・太平洋の8時半の男といわれる田中だが、意外と実績をあらわす記録に縁がない。去る5月29日、仙台でのロッテ戦でおしくも
有藤の一発で勝利を逸したが、9回完投・引き分けとなった時、田中は好機に報われなかったことを悔やんでだろうか「よく9回まで投げられたものだ。途中でバテるかと必死だった」マウンドで試合終了と同時に小躍りしたのには打てなかったバックの方がビックリ。
その理由は田中が説明してくれた。「ようやく規定投球回数に到達し、防御率で新聞に名前が載るようになりました」名火消しとおだてられても、やはり陽のあたる場所の魅力は捨てがたいようだ。