イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

吸血佳人

2007-07-25 20:59:01 | コスメ・ファッション

 昨日の記事を書きながら、シャルル・ジョルダンのランソランがむしょうに恋しくなり、空きボトルだけでもどこかに一つぐらい残ってなかったかなと引き出しにガサ入れてみましたが、無駄足(寂)。

 月河、男じゃなくてよかった。男だったら、元カノストーカーの資質あったかも(爆)。

 最後に空けたのが10年以上前じゃ仕方がないか。コレ、もともとの液色がなんともさわやかな萌黄色で、たぶんグリーン成分と、ムスクなど動物性の成分との調合が絶妙だったんでしょうね。スプレー使い終わった後、容器の底の四隅に、スプレーしきれずに微妙に残るじゃないですか?空き瓶で保存しとくと、それがいかにも“ごめんなさい、頑張ったんだけど、酸化しました(泣)…こんなワタシを許して…”とでも言うように、紅茶色に変化しちゃうんです。

 こうなると、薄れ行く残り香に執着せず、「出会った頃のキミを忘れないよ」と捨てるしかない。

 …そんなことを幾度か繰り返した日々から10余年。残ってるわきゃないわ。

 代わりに、ランソラン愛用時代、夏はこちらと決めていたロベール・ピゲのフラカの空きボトルが1コだけ出てきました。それも函ごと。夏だけの別荘か。愛人か。我がバブルの時代。

 こちらは函が黒一色に、“fracas”の白抜きロゴの周囲だけがベビーピンクのスクエアで囲んである。フタを開けると函内部も同じ色。いちごミルクのようなベビーピンク。

 キャップを開けると、おぉ懐かしい香り。ストレートにフローラルなんだけど、べっとり甘くなく、涼感のある甘さ。昨日買ったオムニア アメジスト同様、お花屋さんの店先系です。このテに、月河、本当に弱いんだなあ。

 返す返すも男でなくてよかった。これ系の香り漂う女性が現れたらイチコロだもん。身ぐるみ剥がれるね。

 フラカは月河が愛用していた80年代に輸入販売権を持っていた会社の権利が契約切れになって、いまも個人輸入サイトなどで一部のアイテムは買えるようです。廃番になってはいないというだけでも、かなり心強いですが、やはり地方のショップでもまた買えるようになってほしいものです。

 『金色の翼』第18話。

 先週末~昨日辺りで、修子が“自分の意志とは無関係に周囲を狂わせるファム・ファタール”に擬せられるポジションなのだと読めてから、一気に物語が読解しやすくなりました。

 今日はアバンタイトル、姉が槙と密会するのではと疑った玻留に「東京に行くなら、オレも一緒に行くよ、出発は何時?」と訊かれて、慌てず騒がず「9時よ」とにこやかに答える修子が最高でした。「寝過ごしたりしないでね、きっとよ」…怖えー。ヘタなホラーより怖えー。

 昨日放送分を飛ばして、今日ポッと観た視聴者は、残念ながら修子が植木鉢に隠した槙への秘密メッセージで“出発は8時”と告げてあることを知らないわけですから、この場面の修子の怖さがわかりません。

 そういうときの連ドラ演出の常套手段として、“槙がメモを拡げ、そこに「明日AM8:00」と女文字で走り書きしてある”アップ映像をモノクロ粗粒子で記憶として1カット挿入して、視聴者に「ホラ修子は弟にも平然と嘘をついて同行させないようにしたんですよ、怖い女でしょう?」と説明する手がありますが、このドラマの演出はそれをしないのです。

 なぜしないか。しないだけの理由がちゃんとある。

 主題歌、CMをはさんでこの5分後、時計が7:34を示す寝室で玻留が眠りこけているのをしっかり確認してから(このドア越しの目つきがまた怖い)出発する修子、続いて「なんだ、まだ8時か、あーあ」と再び寝てしまう玻留、「日ノ原様の飛行機は予定通り8時に離陸しました」とオーナーに告げる槙が、ちゃんと映るからです。

 昨日の放送を観ていない、あるいは観ていても忘れてしまっていた視聴者が「え?予定8時だったの?じゃ玻留に言ってた9時はウソだったの?」と、その時点でさっきのにこやかな修子を思い出し、初めて「怖えー!」と思っても少しも遅くはない。

 むしろ、にこやかさの記憶が新しい分、リアルタイムにこやかで怖えーと思った、昨日を記憶する視聴者よりも、怖えーの質が濃く新鮮かもしれない。

 今日の放送で唯一言葉足らずかなと思ったのは、乗る予定の定期便ヘリ操縦士の急病で、修子を追って出発できなくなった槙のために、理生が機転をきかせ一度立ち消えになった奥寺の自家用機での東京行きを(たぶん)ねだるくだり。

 放送尺の都合でしょうが、「これ(=パイロットがいないと、島を離れることもできない状況)が翼を持たない俺たちの現実だ」と槙に言い放たれた後、籠の小鳥を見つめる理生の脳裏にこの策が浮かんだ描写が1枚不足。

 理生を伴った奥寺の機に同乗させてもらい飛行場で槙が荷物を渡すとき、奥寺「さぁ行きましょう、理生さん」のあと「急でしたが嬉しいですよ、貴女が僕と2人で東京へ行ってみたいと言ってくれて」と台詞ひと言付け加えれば済んだ。

 さらに「思いがけない2人きりのデートだ、ね、理生さん」と奥寺独特の傲岸な愛想笑いのひとつも見せれば完璧。

 もうすぐ掴めるはずの自由のために、心を殺して槙を修子と2人きりにしてやった理生の心理、捨て身さが、もっと鮮明に伝わったはず。

 もちろん理生はその場で槙と別れ奥寺と専用車に乗り込む前に、万感の表情で槙を一瞬見つめていますから、これで十分、さらなる説明台詞は不要という考え方もあるでしょうが。

 視聴者の想像力や読解力に全幅の信頼をおきつつ、決して必要以上にラクをさせない作り。なんだかんだでこのスタッフの作るドラマがファンを惹きつけて離さない魅力はここだと思います。

 怖いと言えば、奥寺と別れた槙が修子の待つはずの搭乗ラウンジに駆け上がるも、修子はすでに待ちぼうけたか姿はなく槙ガックシ…と階下を見下ろすと修子がこちらを見上げていて…というシークエンスで、一気に有頂天まる出しの槙を上目使いに仰ぐ修子の微妙な表情もじんわり寒気がしました。美しいだけに。

 決して「来てくれて嬉しいわ」「約束の時間を過ぎても、信じていたのよ」「無事でよかったわ、心配したのよ」なんてありきたり炸裂の甘っちょろい内面ではない。

 「来てしまったのね、踏み止まれば止まれたのに…これも運命よ」という悟りが、あるいは「またひとり、わたしのせいで…」という悔悟とも取れる何かが、微量その目の奥に湛えられている。

 この東海昼ドラ枠、昨年『美しい罠』放送中だったか、『偽りの花園』のときだったか忘れましたが、ドラマ公式BBSにメッセージを書いた後出てくる“ドラマ化してほしい原作(小説、漫画、映画など)はありますか?”というアンケートに、月河、贔屓の作家のひとりであるD・デュ=モーリア(ヒッチコック監督映画『レベッカ』その他の原作小説の著者)の『レイチェル』(創元推理文庫)を推したことがあります。

 錯乱した書簡を残し南国イタリアで急死を遂げた従兄の未亡人として、彼の英国の領地に現れた美しい女性レイチェルに、最初は従兄殺しの疑いを抱き、徐々に男として惹かれて行く従弟の心理を横軸、彼女が前夫の死にも関与していた財産狙いの連続殺人疑惑解明をもう一方の軸にとったロマンティック心理サスペンスで、1952年にはリチャード・バートン、オリヴィア・デ=ハビランド(『風と共に去りぬ』のメラニー役が有名。『レベッカ』のヒロイン役女優ジョーン・フォンティンの実姉)主演でハリウッド映画化もされています。

 のちにエリザベス・テイラーと結婚→離婚→復縁→離婚と話題をまいた英国の名優バートンは、26歳のときのこの作品(邦題『謎の佳人レイチェル』で初めて、アカデミー助演男優賞にノミネートもされました。ちょっと脱線。

 月河は原作小説よりむしろ、10数年前にTVの名画劇場で一度だけ観たこの白黒映画のほうが印象深く、夫殺しと財産狙い疑惑の影をまといながら不思議な魅力で従弟を魅了していく女相続人レイチェルをうまく映像化、連ドラシナリオ化できさえすれば、息もつかせぬ魅惑のサスペンスに作れるのではないかと思って、アンケートに提案してみたのですが、今作『金色の翼』の修子像には、どことなくレイチェルを偲ばせる雰囲気もあります。

 映画の時点ですでに30代後半だったデ=ハビランドが、持ち前の顔パーツの大きいダークな美貌で“怪しくないわけがない”みたいな濃艶さを湛えていたのに対し、国分佐智子さんは“可憐”と言えるぎりぎりの瀬戸際で怪しさを成立させており、もちろん原作がこちらはまったく別物ではあるのですが、月河としては“アンケートで要望した以上のモノを見せてもらいつつある”と思えています。

 「今週は毎日VTRチェックできないかも」なんて週末言った舌の根も乾かぬ先に、毎日チェックしてるし。

コメント
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