天動説と地動説なんて言葉がある。
一般的に、前者は“地球は球体で星が地球を中心にして公転していることを唱える説”で2世紀にプトレマイオスが体系化したもので、後者は中世コペルニクスの観測データによる計算によって確立された “球体の地球が衛星の一つとして恒星、すなわち太陽の周りを公転する説”である。
これとは別に地球平面説なんてのもあり、同じ方向にずっと歩いて行くといつかは地面の切れ目、Point Of No Returnに到達するってお話で、これは中世のヨーロッパで拡散された宗教的な考え方で科学者やそれに類する知識人が唱えたものでは無かった。
大航海時代のコロンブスも既に地球は球体だと考えていて、大海を真西の方向に横断していけば東航路の先にあるインドに反対側から到達出来るだろうと考えていた。
ただ南北アメリカ大陸が繋がっていたとは想像がつかず、長い航海の上到達した場所をインドと思ったことからカリブ海に浮かぶ島々が西インド諸島と名付けられた。
ここにPoint Of No Returnではなく Point Of Know Returnなるプログレ・ロックのアルバムがある。
アメリカのKansasというバンドが1977年に出した通算5枚目のアルバムで“もう戻る事の出来ない位置”では無く“まだ戻る事の出来る位置”とでも解釈すれば良いのか?
(パイレーツ・オブ・カリビアンの世界かな?)
Kansasはイギリスのプログレ・バンドの影響を受けて1973年に誕生。もちろんイギリスのプログレをそのまま持って来てもヒットしないプログレ不毛の地、アメリカ。
一工夫が必要という事でプログレ仕立てのエレキ、バイオリンとキーボードの高度なアンサンブルにメロディアスなハイトーン・ボーカルを加わることによって一般受けするポップな方向性を出してきた。
初期のJourneyやStyxなんかも同類項で括れると思う。
ただあまりポップになりすぎると普通のハードロック・バンドとなんら変わりないと言う危機感をバンドとして常に持っていたと思え、俺たちはこのギリギリのポイントで今踏みとどまっているというファンに対するメッセージでは?などと深読みしてみる。
これぞアメリカン・スタイルのプログッレッシブ・ロック!
フロイドのDark Side Of The Moonが爆発的にアメリカで売れたのも、アルバムのサンプラーの役割としてレジスターの動作音にベースが絡んだ不思議なイントロから始まるポップ性の高いMoneyがシングル・カットされラジオで頻繁にオン・エヤーされたたお陰だと思っている。
Ummagummaに収録されたロジャー・ウォーター作のサウンド・コラージュ、Several Species Of Small Furry Animals Gathered Together In A Cave And Grooving With A Pictそのままシングル・カットしても、まずアメリカじゃラジオでオン・エヤーされないからね。
プログレ・サウンドとは言い難いメロディアスなアコースティック・サウンドのDust In The Windはよく売れた