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人間はなぜ生き続けれられるかというと、よく言われることですが、未来がどうなるか判らないからです。
もし将来が全て順風満帆で前もってわかれば、それは毎日が楽しく感じられることでしょうが、もし徐々に悪くなって行き、最終的に破滅する酷い結末のシナリオであれば、誰も好んでそれ以上生き続けたいとは思わないでしょう。
たとえ、状況が前もってある程度推測できたとしても、それはあくまでも推測に過ぎず、何が起こるかはその時になってからでないと判らないということで、次ぎの朝が迎えられるわけです。
年をとると、どうしても昔を懐かしみ、よくあの頃はよかったと思うのですが、それは今まで生きてきた経験から、若かった時よりも明日のことがもっと現実的に想像できるからですね。もちろん年を重ねるとともに、体力や気力も衰え、今のままでいいやと自身を変えてみようという冒険をしなくなるのも理由の一つだと思いますが。
今日はサイモンとガーファンクルの1968年の4枚目のオリジナルアルバムOLD FRIENDを紹介します。
このアルバムは2部構成を取っており、レコードのA面は、BOOKENDS THEMEという小曲に挟まれて、その間(人生のスパンとして)に計5曲が挟まれ、少年期から老年期のまでのストーリーがそれぞれ異なった設定の話として収録されています。
B面は彼らのシングルで出された曲が中心となったものです。
A面を簡単に述べますと、
1曲目は、わずか32秒のアコギのインストナンバーである、BOOKENDS THEME
2曲目のSAVE THE LIFE OF MY CHILDは、少年が飛び降り自殺を測ろうとする光景が、単なる見世物になっているという、人々の無関心を表している。
3曲目のAMERICAは、若いカップルがアメリカを放浪し、なんらかの希望を見つけ出したいと思うが、実生活を営んでいる満たされた環境に居る人々でされ、同じように希望を探し求めているという現実を、彼らは感じとる。
4曲目のOVERSは、これ以上一緒にいても先が見えていると、離婚を考えている夫の憂鬱な状態。しかし、離婚を実現したときのことを考えようとしても、考えがまとまらずまた振り出しに戻ってしまう
5曲目のVOICES OF OLD PEOPLEは、アート・ガーファンクルが実際に老人ホームを訪れて録音したテープで、いずれも過去のことを懐かしむような会話が記録されている。
6曲目のOLD FRIENDSは仲の良い老人同士が将来に向けての不安を思う様が描かれている。
7曲目は、6曲目の終わりからすっと入ってきて始まるBOOKENDS THEMEの後編で、過去の思い出について歌われている。
60年代の アメリカといえば、ベトナム戦争、不景気からの貧困、そして人種差別から起こる暴動など、あらゆる社会問題が一気に噴出。歌の内容がいずれも、それらのことを直接歌ったものではないけれど、これらは当時のアメリカ国民が新しい希望を見出せなかった状況を断片的に表現していると個人的に感じます。
これらのことを踏まえて、ポール・サイモンは次作でBRIDGE OVER THE TROUBLED WATERという曲を出し、手を取りあい痛みを共有し、それらを乗り越えようじゃないかとメッセージを送り70年代が始まるのです。当時の日本といえば、例のあの歌が1967年に発売され、3番まで歌うとなんと”こんにちは”が39回も出てくるのである。その歌が70年の万博で高らかに歌われ、高度成長時代が始まるなんともお気楽な日本であった。
CDではA面とB面が繋がっているのですが、このアルバムを聴かれるのであれば、7曲目のBOOKENDS THEMEで一旦止めていただき、最後のアコー スティック・ギターの演奏の余韻を楽しんでもらえればと思います。
たった15分間で人生を語っているのですが、その内容は非常に示唆に富み、40-50年前の楽曲にもかかわらず、今の時代にも十分当てはまる感じがします。
アルバムは大ヒットし全米と全英、共に1位を獲得しています。
俺たちに未来はあるかと言われれば、返答に困るわけですが、なんらかの希望を持ち続け明るく楽しくやっていく以外にはないでしょう。
助手:今日は重いテーマでしたね。
博士:仕方ないことじゃ、誰しも年をとることを避けては通れないのじゃ。明るく陽気に行こう!
助手:そう思って、博士に楽しんでもらうように20枚組アトランティック・ジャズ・ボックスをバーゲン価格で購入しておきました。お気に入りのハービー・マンのアルバムが1枚入っていますよ。
博士:なんと、ジャズは君の趣味じゃないか! いつも、人にあまり無駄遣いするなと言っといて、自分ではこんなの買っている。仕方ない、ハービーマンでも聴くか。だけど、20枚もCD入っているのにハービー・マンたった1枚だけ?
Simon & Garfunkel - America
Simon & Garfunkel - Mrs. Robinson
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