頑固爺の言いたい放題

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比較日本語論 その1

2016-04-19 17:10:14 | メモ帳

長年(30年)アメリカで生活していたため、私は日常生活のあらゆる場面で日本と米国を比較する習慣が身についている。このシリーズでは言葉に焦点を当て、日本語が英語と比較してどんな違いがあるのか考えてみたい。

「すいません」と「どういたしまして」

すいません」という言葉はまことに便利だ。I am sorryというお詫びの意味に使われるばかりでなく、Thank you にもなる。 語尾を上げて「すいませ~ん」と言えば、Excuse me という呼び掛けの言葉になる。ことによると、使用頻度という点ではトップ10に入る語句 (フレーズ)だろう。

本来はお詫びの意味に使われる「すいません」が、なぜ「ありがとう」という意味にも使われるようになったのか。「ご面倒かけてすいません」という語句から、「ご面倒かけて」が抜けたと思えば納得できるが、日本語を多少は解する外国人にすれば「謝意を示すべきときに、なぜ詫びるのか」と奇異に感じるだろう。

では、なぜ「ありがとう」の代わりに、「すいません」が使われることが多いのか。それは、「ありがとう」は目下または同位(友人、兄弟)の人に対しては適切だが、目上の人には丁寧語の「ございます」を付け加える必要があるからだろう。つまり、「ありがとう」は上から目線の語句なのである。その点、「すいません」なら目上の人に失礼にならないから、使い勝手がいい。

相手によって「ありがとう」と「ありがとうございます」を使い分けるのが面倒だからと、「すいません」で代用する習慣が身についてしまうと、Thank youと言うべきときに I am sorryと言いはしないかと心配になる(笑い)。

さて、アメリカ人にThank youと言えば、必ずYou are welcomeという語句が返ってくる。言うなれば、アメリカ人に関するかぎり、Thank you とYou are welcomeはワンセットになっており、使用頻度が同じなのである。

もちろんYou are welcomeは「どういたしまして」という意味だが、日本語の会話では「ありがとう(ございます)」に対して、「どういたしまして」と返すことは稀であり、無言で済ますことが多い。

「どういたしまして」は堅苦しい言い回しだが、だからといってこれに代わる適切な言葉がない。「御礼を言われるほどのことではありません」という言い回しもあるが、これも大袈裟だ。結局、無言のスマイルで済ます方が自然だということになる。

だが、「ありがとう」に対して無言で済ますことが当然になっていると、英語の会話で相手がThank youと言ったときにYou are welcomeという語句がスンナリ出てこない(私自身の経験から申し上げている)。英語で会話する機会がある方は、Thank youと言われたら、反射的にYou are welcomeと言えるように準備しておいていただきたいと思う。些細なことだが、これは人間関係を円滑にする一つのコツなのである。