私は新刊書を購入するとき、ベストセラーかどうかを判断の一つにしている。そうして購入したのが「村上海賊の娘」1-4巻である。
「登場人物の紹介」欄を見ると、主人公の村上景(きょう)は「悍婦にして醜女(しこめ)」とある。その時の所感は「えっ、ブスが主人公? そんな小説など読みたくもない。つまらん本を買ってしまった」だった。
しかし、読み進むうちに、そうではないことがわかった。景は180センチもある大女で、鼻が高く、眼が巨大で、唇が分厚とあり、当時の価値観では醜女だが、欧米的価値観では美女である。身体的能力にも優れている。その女性が大暴れする痛快な物語なのである。
そして、海賊というテーマは時代小説の背景としては非常に珍しく、新鮮だ。特に、第4巻後半の海賊同士の海戦と、景と敵方海賊の頭目との一騎打ちの場面は手に汗を握る感がある。
この小説は映画化に適していると思うが、女優の人選に困るという難点がある。ハリウッドにはこのようなキャラクターの女優がいるが、日本では思いつかない。それに、海戦場面で必要になる何百艘という木製の小舟をどう集めるのか。
映画化は期待するものの、実現は難しいだろう。