中古家屋の広告を見ると、たまに「心理的瑕疵あり」という注意事項がついている物件が見つかる。それは「その物件では、過去に殺人とか自殺が発生したことがある」という意味であり、「不動産販売業者は、その情報を知っている限り、買手にその注意事項を伝えねばならない」、という法律があるらしい。そして、事故発生から何年経過しようがその注意事項が消えることはない。物件の所有者にとっては、相場より大幅に安くしないと売れないから、誠に理不尽な烙印である。
私は米国で何回か不動産を購入したことがあるが、この「心理的瑕疵」という注意事項に出会ったことがない。多分、この思想は日本独特のものだろう。
この烙印の本質は、殺人とか自殺を穢れと感じる深層心理である。ほかにも「穢れ」があるかと考えると、理由もない差別という観点で、(民)に思い至る。の発生は平安時代まで遡るが、要するに皮革製造業(馬具、鎧)に携わる人々であり、差別の理由は牛や馬などのけだものを殺すことだった。
けだものを殺し、それを加工する人々を見下す(差別する)とは、農耕民族(弥生人)が狩猟民族(縄文人)を征服したからではないだろうか。