この論考は2015年12月14日に投稿した「顧客を騙すマンション管理会社」の続編である。その要点は次の通り。
私の住むマンションの管理組合は、機械式駐車場(「駐車場」)の使用料を7,000円から12,000円/月に値上げした(2015年12月)。値上げの理由は、「駐車場」の延命修繕に多額の資金が必要になること。ところが、管理会社の大成有楽不動産株式会社(大成)が策定した資金計画にいくつかの誤りが発見され、計画の見直しを実施することになった。ちなみに、隣りに大きな駐車場があり、その使用料は11,000円/月。
修正案に関する疑問点
今年(2016年)6月に開催された通常総会で、前期の収支報告書と当期の予算案とともに、「駐車場」を含むすべての総括修繕計画が提示された。その資料では、「駐車場」修繕費が原案より10年間の総額で2百万円弱減額されている。組合理事長は「原案では消費税をカウントしていなかった不備があったので修正した」と説明したから、資金不足はこれで解消したように受け取れる。しかし、実際はそうではない。
(1) 原案では今後の資金不足は過去の剰余金と相殺され、通算では収支トントンになっていたが、その計算は「駐車場」が過去に「空き」があったにもかかわらず、常に満車だったというデータの歪曲に基づいていた。しかし、修正案ではこの問題に触れていない。
(2) 今後の収入見通しも過去の実績を無視し、満車ベースで算定されている。これまでと違って「駐車場」使用料が隣りよりも千円高いという事情があり、今後は「空き」の発生率は以前よりも高くなると予想すべきだ(実際に、総会の数日後、1台の「空き」が発生し、今でもそのままとなっている)。
(3) 修正案に示された2百万円弱の削減は最初の3年間に集中しており、その削減率は3年間の修繕費の約20%で、異常に高い。この削減は特定の修繕を計画から除外しただけではないのか。その修繕を実施しない場合、弊害は発生しないのか。
そもそも、大成が使用料を隣りの駐車場より高く設定せざるを得なかった理由は、このプロジェクトの採算が厳しいからであろう。だからこそ、原案では過去・現在を通算した収支計画を示していた。しかし、修正案ではそれが消えて、代わりに総括修繕計画が示された。その総括修繕計画は組合員の目を「駐車場」修繕計画の不備から目をそらす、“目くらまし”効果をもたらした。
「駐車場」は廃止する方が得
たとえ(1)-(3)の疑問点が是正されたとしても、私がかねてより理事会に提案し、握り潰されてきた「駐車場」廃止案の方が、はるかに得である。私は次の様に主張した。
「機械式駐車場を継続するより、廃止する方が得だ。設備撤去に数百万円かかるが、それは一時的出費であり、廃止すれば年間百万円強の保守費が永久に不要になる。利用者は隣りの駐車場を使えば済むことだ」
「駐車場」を廃止すると駐車スペース確保に懸念が生じるなら、組合が隣りの駐車場を一括して長期契約すればいい。さらに、一括契約によって、料金引き下げ(1万円またはそれ以下へ)の可能性もある。安全性重視の利用者には、構内にあるスペース(客用に使用中)を割振ればいい。要するに、延命修繕は千数百万円にもなる壮大な無駄使いである。
これに対し、理事長は「機械式駐車場は継続して使用する方針で進めてきた。廃止は10年とか先のことにしてもらいたい」と述べた。まさに「聞く耳持たぬ」である。理事長がなぜそういう発言をするかについては色々な理由が考えられるが、すべて憶測にすぎないので、ここでは論評を差し控える
そして予算案の採決が行われ、私以外の出席者全員が賛成した(理事会案をそのまま承認するのは当組合の慣習である)。問題点は、出席者が(1)-(3)に気づかず、議案がそのまま承認されたこと。このままでは、修繕積立金が損失で侵食されても、組合員はそれに気づかないという事態になる。大成の“目くらまし”作戦の勝利である。
総会の数日後、私は新理事長(理事長は6月総会を境に交代した)に「機械式駐車場の廃止による支出減を原資とする管理費等の大幅削減(月額5千円)案」を提出したが、却下された。却下の理由は、前理事長の主張と大筋で同じである。
「駐車場」を存続するとして、採算性はどうなのか。大成の総括修繕計画では「駐車場」の採算性を検証することができない。さらに、修正案にある2百万円弱の削減の明細を確認しないと(上記の3番)、「駐車場」存続の採算を正確に検証することができない。そこで、理事長に「この先3年間の修繕明細を知らせていただきたい」と文書で要請したが(コピーを大成に送付)、返事が来ない。
やむをえず、入手した資料によって、延命修繕の採算性を自分で検証してみる。 続く