頑固爺の言いたい放題

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大成有楽不動産の“目くらまし”商法 (1)

2016-09-21 17:12:58 | メモ帳

この論考は2015年12月14日に投稿した「顧客を騙すマンション管理会社」の続編である。その要点は次の通り。

私の住むマンションの管理組合は、機械式駐車場(「駐車場」)の使用料を7,000円から12,000円/月に値上げした(2015年12月)。値上げの理由は、「駐車場」の延命修繕に多額の資金が必要になること。ところが、管理会社の大成有楽不動産株式会社(大成)が策定した資金計画にいくつかの誤りが発見され、計画の見直しを実施することになった。ちなみに、隣りに大きな駐車場があり、その使用料は11,000円/月。

修正案に関する疑問点

今年(2016年)6月に開催された通常総会で、前期の収支報告書と当期の予算案とともに、「駐車場」を含むすべての総括修繕計画が提示された。その資料では、「駐車場」修繕費が原案より10年間の総額で2百万円弱減額されている。組合理事長は「原案では消費税をカウントしていなかった不備があったので修正した」と説明したから、資金不足はこれで解消したように受け取れる。しかし、実際はそうではない。

(1)      原案では今後の資金不足は過去の剰余金と相殺され、通算では収支トントンになっていたが、その計算は「駐車場」が過去に「空き」があったにもかかわらず、常に満車だったというデータの歪曲に基づいていた。しかし、修正案ではこの問題に触れていない。

(2)      今後の収入見通しも過去の実績を無視し、満車ベースで算定されている。これまでと違って「駐車場」使用料が隣りよりも千円高いという事情があり、今後は「空き」の発生率は以前よりも高くなると予想すべきだ(実際に、総会の数日後、1台の「空き」が発生し、今でもそのままとなっている)。

(3)      修正案に示された2百万円弱の削減は最初の3年間に集中しており、その削減率は3年間の修繕費の約20%で、異常に高い。この削減は特定の修繕を計画から除外しただけではないのか。その修繕を実施しない場合、弊害は発生しないのか。

そもそも、大成が使用料を隣りの駐車場より高く設定せざるを得なかった理由は、このプロジェクトの採算が厳しいからであろう。だからこそ、原案では過去・現在を通算した収支計画を示していた。しかし、修正案ではそれが消えて、代わりに総括修繕計画が示された。その総括修繕計画は組合員の目を「駐車場」修繕計画の不備から目をそらす、“目くらまし”効果をもたらした。

「駐車場」は廃止する方が得

たとえ(1)-(3)の疑問点が是正されたとしても、私がかねてより理事会に提案し、握り潰されてきた「駐車場」廃止案の方が、はるかに得である。私は次の様に主張した。

「機械式駐車場を継続するより、廃止する方が得だ。設備撤去に数百万円かかるが、それは一時的出費であり、廃止すれば年間百万円強の保守費が永久に不要になる。利用者は隣りの駐車場を使えば済むことだ」

「駐車場」を廃止すると駐車スペース確保に懸念が生じるなら、組合が隣りの駐車場を一括して長期契約すればいい。さらに、一括契約によって、料金引き下げ(1万円またはそれ以下へ)の可能性もある。安全性重視の利用者には、構内にあるスペース(客用に使用中)を割振ればいい。要するに、延命修繕は千数百万円にもなる壮大な無駄使いである。

これに対し、理事長は「機械式駐車場は継続して使用する方針で進めてきた。廃止は10年とか先のことにしてもらいたい」と述べた。まさに「聞く耳持たぬ」である。理事長がなぜそういう発言をするかについては色々な理由が考えられるが、すべて憶測にすぎないので、ここでは論評を差し控える

そして予算案の採決が行われ、私以外の出席者全員が賛成した(理事会案をそのまま承認するのは当組合の慣習である)。問題点は、出席者が(1)-(3)に気づかず、議案がそのまま承認されたこと。このままでは、修繕積立金が損失で侵食されても、組合員はそれに気づかないという事態になる。大成の“目くらまし”作戦の勝利である。

総会の数日後、私は新理事長(理事長は6月総会を境に交代した)に「機械式駐車場の廃止による支出減を原資とする管理費等の大幅削減(月額5千円)案」を提出したが、却下された。却下の理由は、前理事長の主張と大筋で同じである。

「駐車場」を存続するとして、採算性はどうなのか。大成の総括修繕計画では「駐車場」の採算性を検証することができない。さらに、修正案にある2百万円弱の削減の明細を確認しないと(上記の3番)、「駐車場」存続の採算を正確に検証することができない。そこで、理事長に「この先3年間の修繕明細を知らせていただきたい」と文書で要請したが(コピーを大成に送付)、返事が来ない。

やむをえず、入手した資料によって、延命修繕の採算性を自分で検証してみる。                                                     続く        


大成有楽不動産の“目くらまし”商法 (2)

2016-09-21 17:06:33 | メモ帳

「駐車場」の採算性

機械式駐車場(「駐車場」)のコストはマンション分譲価格に組み込まれており、その耐用期間が終わるまでを第一ステージとすれば、それ以降(第二ステージ)の採算性は第一ステージの収支には無関係なので、この小論では第二ステージの採算性に絞って分析する。なお、収入の「駐車場」使用料は通常月額を基準とするので、支出も月割で算出する。

支出

第二ステージの「駐車場」の運営コストは、(1)「修繕費」、(2)保守費、(3)電気料、(4)資金調達コスト、から成る。

(1)月割「修繕費」

「修繕費」総額を耐用年数(後述)で割り、それを12で割れば月割「修繕費」になるので、まず総額を調べる。当マンションにおける「修繕費」の支出は20年目から発生しておりこれまでに支出された「修繕費」(税込)に今後10年間に支出が必要となる費用(税率を9%とする)を加えた1パレット当たりの「修繕費」総額は1,281千円である(計算基礎は省略)㊟。

㊟この小論の(1)で述べた大成の「修繕費」減額は信頼性に欠けるので、最初に提示された金額をベースに計算した。

なお、延命修繕(部品の順次取り換え)ではなく、一挙に総入れ替えした場合のコストをネットで調べたが、1パレット当たり100-200万円という大雑把な金額しかでてこないので、やむなく上記1,281千円を妥当と判断して、論を進める。

さて、機械式駐車場の法定耐用年数は15年で、延命修繕した場合でも同じルールが適用される。しかし、法定耐用年数は国税庁が定めた税務上の問題であり、マンションの場合はそれにこだわらず現実的な耐用年数を適用すべきである。当マンションでは20年目から「修繕費」の支出が始まっているので、今後の耐用年数も過去と同様20年とするのが適切だと判断する。すなわち、年割「修繕費」を総額の20分の1として、月割はその12分の1。

具体的には、月割「修繕費」は 1,281,000÷20÷12= 5,338円。

(2)保守費

当マンションでは、20パレットで月額税前85,000円だから、1パレット当たり税込月額は

(85,000×1.09) ÷20= 4,633円。

一方、保守費の世間相場にはかなりバラツキがある。最安値は、「マンション管理&修繕」(ダイヤモンド社)が提示する20パレットで年間198,000円(年4回点検)で、これは1パレット当たり月額換算825円。

ネットで調べると、管理見積.com は、年4回で、1回の料金は、基本料金 55,000円プラス(3,000円×パレット数)としており、20パレットを適用すると、1パレット当たり月額1,916円、税込(9%)2,088円になる。

また、マンション管理組合支援センターは平均2,500円としている。ここでは、このデータを採用するとして、税率を9%とすれば2,725円。

当マンションの保守費は、世間相場に比べて突出していることは明らかである。

(3)電気料

原案に示された年額180,000円をそのまま適用すると、1パレット当たり月額は

180,000÷20÷12 = 750円

(4)資金調達コスト

「修繕費」には修繕積立金を使用するが、修繕積立金には「駐車場」を利用しない組合員も出資しているので、「駐車場」運営を一つの営利事業と考えれば、投資額に対して最低でも2%程度の年間利回りが必要であろう。低金利が定着した現今、2%の利回りは高いという議論もあろうが、当マンションの場合「使用料」が隣りの駐車場より1,000円高いという事情があり、今後「空き」が増加する可能性がある。そのリスクも勘案すれば、資金調達コストを2%とすることは妥当と判断する。

月額換算 1,281,000×0.02÷12= 2,135円

収入

「駐車場」には平均して「空き」が5%(当マンションでは1台)発生すると想定し、「駐車場」使用料(月間)は満車ベースの95%とする。なお、利用率95%は当マンションの特殊事情であり、一般的には100%(「空き」なし)としてもいいだろう。

以上を綜合して、「駐車場」の1台当たりの月間損益(単位:円)は次のようになる。

支出   

                                       当マンション                   標準        

月割修繕費                         5,338  (41.52%)          5,338    (48.76%)

保守料                               4,633  (36.04%)          2,725    (24.89%)

電気料                                  750    (5.83%)            750      (6.85%)

資金調達コスト                     2,135  (16.61%)          2,135    (19.50%)

合計                                12,856     (100%)       10,948       (100%)

                                                                    

収入

「駐車場」使用料(95%)        11,400                        11,400

 収入―支出                     ▲1,456                             452

 この分析は、延命修繕はそのコストがパレット1台128万円程度ならば、保守料が標準的レベルである限り、使用料12,000円で採算が取れることを示している。ところが、大成は収支計画の策定において、対象期間を「駐車場」の耐用年数ではなく、当期から10年後までの期間に設定したため採算が厳しくなり、“修正”等の小細工を弄しても、収支が見合う形に組み立てることができなくなった、と思われる。そして、最終的に総括修繕計画という“目くらまし”でごまかし、組合の同意を取り付けたということになる。

企業の倫理性

昨年12月の総会で、私は「毎月の保守点検は過剰サービスだ。世の中、年4回か6回が一般的である」と主張したが、前理事長が「それでは安全性に懸念がある」と大成の立場を擁護した。大成の担当者N氏はこの議論を記憶しているはずだが、修正案ではこの問題に触れていない。

この案件のポイントは、大成は、機械式駐車場は廃止する方が組合にとって有利であることを知りつつ、組合員の信頼をいいことに延命修繕を受注し、さらに過剰サービス(保守回数)を組合に押し付けていること。

大成有楽不動産には企業の倫理性が全く欠如していると断定せざるを得ないのである。

                                                                                 終

付記:この項の次に「機械式駐車場の会計処理」を掲載しているので、業界関係者および機械式駐車場があるマンションにお住まいの方はご一読願いたし。


機械式駐車場の会計処理

2016-09-21 17:02:51 | メモ帳

私はマンション管理の専門家ではないが、当マンションにおける苦い経験を踏まえて、マンション内の機械式駐車場(「駐車場」)の会計処理についての私見を披露したい。

「駐車場」のコストはマンション分譲代金に含まれていることはご承知の通り。そして、ほとんどのマンションの管理組合では駐車場使用料(「使用料」)を全額管理費に計上しているから、経費(保守料+電気代)を除いた残額が管理費を減らす形で組合員に還元され、これが実質的に「駐車場」コストの回収になる(ここまでを第一ステージとする)。

問題は「駐車場」の耐用期間が終了したあとの第二ステージである。「駐車場」更新(新品に入れ替えるケースと延命修繕によって存続させるケースがある)の費用は組合員の新たな負担となり、修繕積立金の値上げで対応せざるを得ない*。第一ステージの段階から「駐車場」更新費用を積み立ててあるなら話は別だが、そういう組合はないと思う。

その値上げは、「駐車場」運営が営利事業として採算が合うかぎり、その利益が管理費負担を軽減するので、組合員の合意は得られるはずだが、値上げ幅が大きいと反対者が多いこともありうる。その場合は、「駐車場」更新費用を銀行借り入れに頼ることになるが、現在の金利が非常に低水準なので、銀行借り入れは十分考慮に値する選択肢である。

では、値上げ幅を最小限に止めるためにはどうしたらいいか。その方策は、できるだけ早い時期に値上げを実施するしかない。法定耐用年数の15年目以降(それ以前は心理的に難しいと思う)、できるだけ早い時期から修繕積立金の値上げを実施して、更新資金を積み立てる。先延ばしすればするほど、値上げ幅が大きくなる。

第二ステージに入ったら、「駐車場」運営の損益状況を明確化するために、「使用料」は二つに分割し(管理費または修繕積立金に一括計上ではなく)、「駐車場」更新費用相当額(金額については「大成有楽の“目くらまし”商法」参照)を修繕積立金に、残額を管理費に計上(保守費と電気代に充当)すべきである。

ともあれ、第二ステージに移行した段階で「駐車場」運営は新たな局面に入ったことを組合員に認識させるためにも、「使用料」の分割計上は必要かつ適切な方策だと考える。

*当マンションの場合、第二ステージに入っても、修繕積立金の値上げは必要なかった。そのわけは、(1)「使用料」が最初から、修繕積立金(管理費でなく)に計上されてきたこと、(2)数年前に、高すぎた管理費を安くした際、同じ金額だけ修繕積立金を高くしたこと。その代わり、組合員はマンション分譲代金に含まれていた「駐車場」建造費を回収する機会を失った。