爺は常日頃、朝日新聞の主張に違和感を抱いているが、基本的にどこが違うのか知りたいと考えていたところ、「地球貢献国家と憲法 提言・日本の新戦略」(朝日新聞論説委員室編 2007年 朝日新聞社 発行)なる著作の存在を知った。A5版360ページの大作である。14年前の著作だが、これが朝日新聞の思想の根幹ではないかと考え、読んでみることにした。
同書のテーマは日本の進むべき道を提案することであり、結論として,日本が「地球貢献国家」になるべきだと主張し、その手段として「世界のための世話役になる」という壮大な理念を掲げている。そして、「第八章 提言・日本の新戦略」で次のように述べている(赤字)。
「新戦略を求めて」の中心テーマはもちろん安全保障である。だが、私たちの狙いは、それを軍事・外交に偏らせず、防疫や通貨、環境、アジアとの共生などの幅広い観点から論じることにあった。
その理念とアプローチには異存ないが、結論として掲げている護憲については、不賛成である。護憲か改憲かという大きなテーマはさておき、各論の韓国と中国に関する部分に焦点を合わせる。
韓国に関しては、「日韓―連携の実行性を高めよ」という見出しの社説が引用されている(赤字)。
日本が朝鮮半島を植民地にした歴史、そこの民族的な要素が絡み、日韓関係は単純ではない。だが、北朝鮮の核は地域や民族を超える深刻な国際問題であり、日韓が連携を固める機会となりうる。・・・
民主主義と市場経済、社会の発展レベル、文化の共通性、どの面から見ても、日本と韓国は互いに最も手を取りやすい相手だ。・・・
お互いの信頼を確かなものにするためにも、まずは北朝鮮問題で、連携の実効性をあげていくことが大切だろう。(2006年11月5日 小菅幸一)
その当時(2007年)の段階では、「互いに最も手を取りやすい相手」に見えたのだろう。しかし、韓国は文政権があまりにも北に傾斜したために、また反日を強く打ち出したために、「連携の実効性」どころか「連携」そのものが不可能になった。そして「お互いの信頼」が生まれる状況からは程遠い。朝日の期待は結実しなかったと言わざるを得ない。
中国に関しては、「開かれた中国の後押しを」という見出しの社説が引用されている。
中国の将来には未知数の部分が大きいが、より透明化し、法治主義が進むことを国際社会は望んでいる。そのための有力な方法となるのが、国際的な共通ルールに引き寄せることだ。・・・迂遠にも見えるが、幅広い人的交流によって、日本や日本人の考えを伝えることが中國で改革の刺激になる。(2006年11月7日 五十川倫義、野嶋剛)
ところが、中國は朝日が期待したようには動かなかった。法治主義の衣をまとってはいるものの、習政権の恣意的な法解釈が明らさまとなり、強権的姿勢が鮮明になった。
中韓共通の歴史問題に関しては、「ナショナリズム越える道、まず日本が歴史を直視すべき」という見出しの社説が引用されている(赤字)。
ナショナリズムが過剰になるのを防ぐには、誤解の増幅を避け、お互いの理解を蓄積していく必要がある。歴史問題が中国や韓国の人たちの感情を刺激し、それがこじれれば外交上のカードを握られることになる。日本の近隣外交に大きなマイナスであり、無用な刺激をしないことが大切だ。
首相は靖国神社に参拝しない。歴史ときちんと向き合い、二度と侵略しない姿勢を鮮明にする。それが出発点だ。(2006年11月9日 隈元信一)
「歴史ときちんと向き合う」ことには異論はない。しかし、その「歴史」とは朝日によって歪曲されたものだった。
中国に関しては、「歴史」とは具体的には、本多勝一が広めた南京大虐殺などの大嘘であり、韓国に関しては慰安婦拉致や徴用工虐待の大嘘である。
中国:日本人が不名誉な濡れ衣を着ることで、表面的には決着した感がある。だが、その嘘を信じた日本人は自虐派になり、日本人の間に精神的分断が生じた。
韓国:朝日は2014年に慰安婦の嘘を謝罪したが、ほとんどの韓国人が拉致を信じているために、問題は解決していない。また、徴用工に関しても、問題はまだ燻っている。
結論:朝日によって歪曲された「歴史」は、いい結果をもたらさなかった。朝日はあまりにも中韓に宥和的で、かつ楽観的だったのである。「地球貢献国家」の理念はともかく、各論の中韓の部分については大幅な修正が必要である。
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