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米国コメ事情(2)

2013-08-28 14:48:38 | メモ帳

(2)世界のコメ流通

本論に入る前に、世界のコメの流通の全体像を把握しておこう。米国の農務省が発表したWorld Markets & Trade によれば、世界のコメ生産量は4億5千6百万トン前後で、国別では第一位が中国の1億3千8百万トン(2011/12年*)で全体の30%、以下インドの21%、インドネシアの8%、バングラデシュの7%と続く。日本は768万トンで全体の1.7%、米国は600万トンで1.3%にすぎない。 ( *注 コメ年度は8月に始まり、7月に終わる)

 2012年におけるコメの輸出国は第1表の通り㊟1。上位5ヶ国の顔ぶれは毎年同じで、第6位のブラジル(1,105千トン)以下に大差をつけている。輸出量の8割強が上位5ヵ国で占められていることは注目に値する。躍進が著しいのはインドで、2011年の460万トンから2012年に1千万トン強へと倍増している。

 

上位5ヶ国でジャポニカ米を生産してるのは米国のみ。TPP参加国では豪州がジャポニカ米の短粒種を生産しており、日本にも前出のMA制度のもとで少量輸出している。TPP参加国以外では中国が短粒種を生産し、日本にもMA制度のもとで輸出している。

 日本が関税ゼロで輸入するとなれば、ある程度需要が見込まれるインディカ米(長粒種)については、もちろん米国はその候補ではあるが、第1表からみてベトナムも有力候補である。インド、タイ、パキスタンはTPPに参加していない。

 輸入国(第2表)の上位5ヶ国はこの数年大きく変化した。ナイジェリアは2000年における125万トンから年々増加し、2012年には2.7倍の340万トンになった。中国の変動も激しい。2010年に36万トン、2011年に57万トンだったものが、突然2012年に一挙に260万トンになった。一方、中国の輸出量を見ると、2000年に約300万トン近くを輸出したが、その後年々減少し2012年には僅か27万トンにまで落ち込んだ。中国は輸出国から輸入国へと変貌したのである。

 全体として、世界のコメの流通量は漸増傾向にある。2000年における22,787千トンから2012年に39,060千トンへと71%増だ。その背景には新興国の人口増加と所得水準の向上がある。同じ期間に米国の輸出量は2,847千トンから3,326千トンに増加したが、その増加率は17%である。世界のコメ市場において、米国の地盤は沈下している。

 さて、日本が米国からコメを大量に買うとなれば、どんな国と競合することになるか知っておく必要がある。Rice Yearbook から2011-12年度における米国のコメの輸出先を円グラフに示す。

 

 仕向け国は当年度に新たに加わった韓国を除き、順位は多少入れ替わるもののほとんどが長年にわたる固定客である。なお、このグラフでは「その他」に入っているイラク、ホンジュラス、ニカラグア、ガテマラなども常連国である。どちらかというと近隣国が多いが、これは運賃の優位性によるものだろう。

 では日本の輸出入はどうなっているのか。日本の輸入量は毎年65-75万トンで安定しているが、これはMA制度の入札によるもの。米国産(短粒種、中粒種)が半分以上を占めるが、残りはタイ・ベトナム産(長粒種)や前述のように中国産(短粒種)や豪州産(短粒種)もある。この内では、豪州がTPP参加国であり輸入自由化となれば、対日輸出に本格的に取り組むことも考えられ、要注意である。

 輸出は2003年以降、毎年キッカリ20万トンとなっており、これは新興国向け援助物資である。この中には輸入品も含まれている可能性がある。香港向けなど商業ベースでの輸出は微々たるもので、千トン単位の統計では四捨五入され数字として表れない。

 ㊟1 この表にある数字はRice Yearbook Table 23の2012年である。

㊟2 日本の輸出量は、2002年以前は一定せず、年間43,000トンの年もあったが、50万トンの年もあった。これも新興国援助だった可能性が高い。                                          



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