これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

振袖大活躍

2010年01月10日 21時55分45秒 | エッセイ
※ 写真は本文と関係ありません。

 明日は成人の日だ。
 きっと、振袖を着た若い女性で、街中が華やぐことだろう。



 昔は1月15日が成人の日だった。男子はほとんどスーツを選んだが、女子は振袖にするかスーツにするか、迷う者が多かった。これは、今も変わらないと思う。
 私には姉と妹がいたから、両親は迷わず振袖を買った。ピンクの地に花や扇が描かれており、なかなかきれいな柄だった。姉の成人式でデビューしたあとは、私の成人式、結婚式のお呼ばれ、妹の成人式と、大活躍することになる。
 しかし、着物を着るのは簡単ではない。母が着付けを習ってきたが、いつも上手に出来るとは限らず、失敗するときもあった。

 私の成人式では、残念ながらイマイチの仕上がりだったようだ。
「ちょっと、やり直しするから脱いでくれる?」と言われ、その通りにしたのだが、裾の長さとおはしょりが思うようにいかなかったらしい。そのうち母は、「いいや、これで」と妥協してしまった。
 私は、「おいおい」と焦ったけれども、待ち合わせ時間が迫っていたから我慢した。
 その代わり、帯は会心の出来だったようだ。

 市民体育館には、昔の同級生がたくさん集まっていた。「久しぶり」「本当ね」という会話とともに、さりげなくお互いの衣装をチェックする。これは女性ならではの習性だろう。茶色の地味な振袖には「勝った」と胸を張り、黒の艶っぽい振袖には「うっ」とたじろぐ。
 髪のチェックも怠らない。キレイにアップにすればいいものを、中途半端なショートで来ている子を見ると、「伸ばせばよかったのに」と言いたくなる。生花を編みこんだアップは素敵だった。どんなかんざしも、髪飾りも、カスミソウには負けるのだ。「おみそれしやした」と、もろ手を上げて全面降伏しそうになった。
 式のあとは、久々に再開した友達と、おしゃべりをしながらブラブラ歩いていた。私は「そろそろ帰ろう」と思い、道を横断しようとした。反対側に渡るには、縁石をまたがなくてはならない。しかし、着物なので歩幅が足りない。そこで、いったん縁石の上に乗ろうとしたときだ。長ーい袖が草履の下敷きになっていることに、私は全然気づかなかった。

 ビリビリビリッ……

 縁石に乗ったとたん、禍々しい音が轟いた。振袖の付け根、腋の下あたりの糸がほつれた音だった。袖を踏んだまま体を伸ばしたせいで、着物が悲鳴を上げたのだった。
「キャーッ!!」
 私は顔面蒼白になった。正確な値段は知らないが、高価なものであることは間違いない。大急ぎで家に帰り、母に見てもらった。
「何で、大事に着ないのよッ!」とこっぴどく叱られたが、幸いなことに、無事修繕できたようだ。

 その数年後には、妹も着付けができるようになる。着付けのできない私には、たいそう心強いことだった。
 友達の結婚式に招かれたとき、振袖の着付けを母と妹に頼んだことがある。1人より、2人のほうが早く着せてもらえるだろうと思ったからだ。
 しかし、微妙にやり方が違うようで、「そうじゃないでしょ」「何いってんのよ、これでいいのよ」と言い争いが始まった。私は何もわからないから、2人の口論を聞いているしかない。「何でもいいから、早くしてくれ~」と、心の中でひたすら祈っていた……。

 3人姉妹は、とうの昔に、振袖を着られない年齢になっている。
 しかし、十分すぎるほどに元が取れたことだろう。
 いや、タンスで隠居するにはまだ早い。
 この先も、活躍する場があるかもしれない。



楽しんでいただけましたか? クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (16)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする