コロナ前の文化祭には4000人を超える来客があった。
3月まで勤務していた学校の話だが、だいぶ時間が経ったので話してもいいだろう。その来客の中に、レギュラー番組を持つタレントが含まれていたことがあった。
そのとき、電話を掛けてきたのはタレントではなく、番組作成スタッフだった。
「あのう、日本テレビの○ッキリのディレクターをしております○○ですが、ただいまご都合よろしいでしょうか」
「○ッキリというのは番組の名前ですか」
「はい。ご存じないですか」
「すみません。テレビは見ないもので」
たまたま私が受話器を取ってしまったため、どうにも噛み合わない会話となる。当然、芸能界にも疎い。
「今回、番組の取材として、タレントの△△がそちらの文化祭にお邪魔して撮影したいのですが、可能でしょうか」
「どんな内容なのでしょうか」
「バラエティですね。模擬店等を見て回る場面を撮らせてもらえれば」
校長に確認して取材を受け入れたのだが、大多数の教員は反対した。
「前の学校でダンス部の取材を承諾したら、許可していないことまでされて大変だった」
「放映された映像が学校を批判する内容になっていて、あとから揉めた」
彼らの主張は決して間違っていない。
結果として、非常に行儀のよい方たちが取材に来たので、そんなことはされなかったけれど、あらゆる可能性を考えなければいけないらしい。悪質な取材のせいで、普通のスタッフまで疑われるのは気の毒だ。
成り行き上、当日は私がテレビ局の対応をすることになった。取材は5時間ほど続き、その間ずっと番組スタッフとともに校内を移動した。
「ねえ、あれ、△△じゃない!?」
「ウソ~! なんでいるの!!」
あちこちから驚きの声が聞こえてくる。ほとんどの人は指を差すだけで終わるが、中には走って突進してくる人や、何とかカメラの映像に収まろうとにじり寄ってくる人がいたりして、またとない人間観察ができた。私だって、知らないタレントだから冷静でいられるけれど、もしメル・ギブソンやダニエル・クレイグが近くを通ったら、他人を突き飛ばしてでも話しかけようとするかもしれない。人のことは笑えないのだ。
模擬店の生徒は、タレントご一行様を歓迎しつつも、他の客と差をつけないように接していた。とはいえ、△△さんと会話を交わしたことは、彼らの人生を彩る華やかな一ページとなるに違いない。やはり、来てもらってよかったと感じた。
午後2時。ようやく取材が終わった。
「のちほど、映像をお送りしますので、生徒さんの許可を確認していただけますか」
「はい。何分ぐらいの映像なんですか」
「まあ、10分ですかね」
「へ? 10分!」
5時間撮って10分とは、なんとコスパの悪い仕事だろう。2週間後に映像を収めたDVDが送られてきたが、出演を拒否するご家庭もあったせいか、番組で放映されることはなく、動画サイトでの公開に変わっていた。
ああ残念……。
多少なりとも、自分の関わった番組が日の目を見ないのは空しいものだ。
私は日本テレビに縁があるのかもしれない。先週は別の番組から「ブログの写真を使わせてもらいたい」との申し出があり、目を白黒させた。もっとも、友人の写真を私が使わせてもらっていただけなので、友人を紹介しただけで終わったが。
番組スタッフとのやり取りはメールで行い、こちらもかなり礼儀正しい方で安心した。テレビ局によるのか、番組によるのか、個人の問題なのかは知らないけれど、一生懸命よい仕事をしようとしている人の助けになれたらうれしい。
たまには、テレビをつけてみようかな。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
3月まで勤務していた学校の話だが、だいぶ時間が経ったので話してもいいだろう。その来客の中に、レギュラー番組を持つタレントが含まれていたことがあった。
そのとき、電話を掛けてきたのはタレントではなく、番組作成スタッフだった。
「あのう、日本テレビの○ッキリのディレクターをしております○○ですが、ただいまご都合よろしいでしょうか」
「○ッキリというのは番組の名前ですか」
「はい。ご存じないですか」
「すみません。テレビは見ないもので」
たまたま私が受話器を取ってしまったため、どうにも噛み合わない会話となる。当然、芸能界にも疎い。
「今回、番組の取材として、タレントの△△がそちらの文化祭にお邪魔して撮影したいのですが、可能でしょうか」
「どんな内容なのでしょうか」
「バラエティですね。模擬店等を見て回る場面を撮らせてもらえれば」
校長に確認して取材を受け入れたのだが、大多数の教員は反対した。
「前の学校でダンス部の取材を承諾したら、許可していないことまでされて大変だった」
「放映された映像が学校を批判する内容になっていて、あとから揉めた」
彼らの主張は決して間違っていない。
結果として、非常に行儀のよい方たちが取材に来たので、そんなことはされなかったけれど、あらゆる可能性を考えなければいけないらしい。悪質な取材のせいで、普通のスタッフまで疑われるのは気の毒だ。
成り行き上、当日は私がテレビ局の対応をすることになった。取材は5時間ほど続き、その間ずっと番組スタッフとともに校内を移動した。
「ねえ、あれ、△△じゃない!?」
「ウソ~! なんでいるの!!」
あちこちから驚きの声が聞こえてくる。ほとんどの人は指を差すだけで終わるが、中には走って突進してくる人や、何とかカメラの映像に収まろうとにじり寄ってくる人がいたりして、またとない人間観察ができた。私だって、知らないタレントだから冷静でいられるけれど、もしメル・ギブソンやダニエル・クレイグが近くを通ったら、他人を突き飛ばしてでも話しかけようとするかもしれない。人のことは笑えないのだ。
模擬店の生徒は、タレントご一行様を歓迎しつつも、他の客と差をつけないように接していた。とはいえ、△△さんと会話を交わしたことは、彼らの人生を彩る華やかな一ページとなるに違いない。やはり、来てもらってよかったと感じた。
午後2時。ようやく取材が終わった。
「のちほど、映像をお送りしますので、生徒さんの許可を確認していただけますか」
「はい。何分ぐらいの映像なんですか」
「まあ、10分ですかね」
「へ? 10分!」
5時間撮って10分とは、なんとコスパの悪い仕事だろう。2週間後に映像を収めたDVDが送られてきたが、出演を拒否するご家庭もあったせいか、番組で放映されることはなく、動画サイトでの公開に変わっていた。
ああ残念……。
多少なりとも、自分の関わった番組が日の目を見ないのは空しいものだ。
私は日本テレビに縁があるのかもしれない。先週は別の番組から「ブログの写真を使わせてもらいたい」との申し出があり、目を白黒させた。もっとも、友人の写真を私が使わせてもらっていただけなので、友人を紹介しただけで終わったが。
番組スタッフとのやり取りはメールで行い、こちらもかなり礼儀正しい方で安心した。テレビ局によるのか、番組によるのか、個人の問題なのかは知らないけれど、一生懸命よい仕事をしようとしている人の助けになれたらうれしい。
たまには、テレビをつけてみようかな。
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
3年前です。
あの頃はコロナ禍なんか考えた事もなかったですね。
メディアと近い分、警戒もしないといけません。
取材の申し込みもいくつか受けましたが、断りました。
楽しい企画ないかなぁ。
やっぱり首都圏だと、メディアと距離が近いですね。
本当に、長時間収録してもオンエアは短い。
関係者も大変でしょうが、感じのいい方々でよかったですね。
学園祭に中島みゆきさんが来ていたのですか。
そりゃあ、人だかりもできますよ。
私も行きたかった(笑)
テレビ番組の作り方も工夫がいるでしょうね。
昔みたいに視聴率が取れれば何でもいい、というわけにいかない時代だし。
テレビ離れも深刻です。
私も2時間、テレビの前にいたら消耗すると思います。
苦しい、ツラいではなく、時間を忘れるくらい夢中になれる番組を作ってもらいたいですね。
ファンだったら気絶しますよね(笑)
私には価値がよくわからず、もったいないことをしたのかもしれません。
ひとまず、テレビの取材は根気がないと続かないという事実はわかりました。
大変だなぁ……。
番組収録って時間かけて収録しても放送は短いんですね。