今朝の浩介は様子がおかしかった。
明け方、寝ているおれをみていた浩介の目……一瞬しか見ることができなかったけど、何というのだろう。果てしない……絶望、みたいな……。
そのあとも、おれに顔を見られないようにしていた感じがした。
妙に背中にこだわってたし、めずらしくずっと後背位だったし……。以前、後背位だと「慶の顔が見えなくてヤダ」って言って……ってことは、おれの顔を見たくなかったってことか?!
……いや、二回目はわりと普通に戻ってて、ほとんど正常位だったから、そういうわけでもないのかな……。
でも二回目も、なんかかなりしつこかったよな……。いや、普段もしつこくないことはないんだけど、今朝のは何ていうか……いつもより強引だったし………。
そのせいで終わった直後に気失うみたいにまた寝てしまって、起きたらもう行く時間で、話もろくにしないでバタバタ出てきてしまったけど……。
「なに百面相してるんだ?渋谷」
「!?」
いきなり声をかけられて、箸を落っことしてしまった。ナフキンの上でよかった。
「百面相って……」
「赤くなったり青くなったり、妙に真面目な顔してどうした?彼女とケンカでもしたか?」
「ケンカではないんですけど……」
同じ小児科の峰先生。一回り年上の頼れる兄貴的存在だ。峰先生は浩介の存在を女だと信じ切っている。訂正するのも面倒なのでそういうことにしてある。
「なんか……今朝、様子がおかしかったんですよね……」
「そのわりにはいつも通り、うまそうな愛妻弁当じゃねえか」
「そうなんですけど……」
浩介は一人暮らしを始めてからメキメキと料理の腕をあげて、今ではうちに泊まった日には必ず弁当まで作ってくれるのだ。
「なんか……おれとあまり目合わせないようにしてた感じが……」
「おおっと」
峰先生は面白そうな顔をして、隣のデスクの椅子にまたがって座った。
「そーれーはー危険じゃないかな。渋谷くん」
「危険?」
「目を合わせない……ということは、何か隠し事をしているということですな」
「隠し事………」
なんだろう……。
「まあ、普通に考えたら、浮気、だよな」
「浮気?!」
まさかあ…と笑ったおれに、峰先生は真面目な顔で、
「いや、笑いごとじゃねえぞ。オレたちゃ忙しすぎるからな。浮気されても文句はいえねえ」
「いや、それは言いましょうよ」
「いや、『あなたはいつも仕事仕事で、デートの約束もすっぽかすし、全然会えないし、あたしさみしさに耐えられなかったのっ』……とか言われたら、反論できるか?お前」
「…………」
なんだその具体的な小芝居は。
「峰先生の体験談ですか?」
「若い頃のな。結婚する前の前の前の……前?くらいの女の話」
「はあ……、あ」
峰先生の手が伸びてきて、勝手に卵焼きを一つ食べられてしまった。おいおい。
「うまいなあ。まあ、こんな愛情こもった弁当だし、お前のこと嫌いになったってことはなさそうだな。浮気してたとしてもただの遊びだ。安心しろ」
「……不吉なこといわないでください」
浩介に限ってそれだけはない……と思いたい。
「彼女、お前が忙しいことに文句とかいわねーの?」
「言いません。理解してくれてます」
おれが待ち合わせの時間にどんなに遅れても、「本読んでた~」とケロリとしていた浩介。
あまりにも時間がよめないので、外で待ち合わせはせず、どちらかの家で待ち合わせることにしている。浩介はどんなに待たせても「仕事してた~」とか「たまってたビデオみてた~」とかケロリとしている。
一晩おれが帰れないまま浩介が出勤時間になってしまったときは、いつも置手紙をくれる。「お帰りなさい。お疲れ様。冷蔵庫に○○があるのでチンして食べてね」みたいな……。
「なんだよそれ~~」
峰先生が呆れたようにいう。
「完璧すぎねえか?完璧すぎて逆にこわいぞ?お前の彼女」
「そういわれても……」
「つきあって長いんだっけ?」
「高校二年の冬からですから……丸11年ですね」
「おっと。うちの夫婦より長い。先輩だっ」
「いやいや……気が付いたら11年たってて……」
ほんと。あっという間の11年だった。一緒にいるのが当たり前だったし、別れるとかそういう話は、一度だけ、大学時代に浩介の母親と揉めたことで浩介から話が出たことあるけど、そんなのは一瞬で消えた。それ以外では一度もないし、おれは考えたこともなかった。
「ほーそれじゃあ、そんな彼女手放したくないよなあ……」
ふむ。と峰先生は一つうなずくと、
「じゃ、今日の当直、変わってやるよ」
「え?!」
思わぬ申し出にびっくりして後ずさる。
「いや、申し訳ないですよ。峰先生こそ奥さんやお子さんいらっしゃるんですから……」
つい先日、峰先生から「娘に『今度いつ遊びにくるの?』と言われた」と愚痴られたばかりなのに、ここで家族の時間を減らすなんてとんでもない。
でも、峰先生はひらひらと手を振り、
「いや、この週末、嫁さんと娘、嫁さんの実家に帰ってんだよ。だから今度なんかのときに恩を返してくれればいいからさ。それに」
急に峰先生は真面目な顔になった。
「人生の先輩として言わせてもらうとな、ほころびは小さなうちに縫っておいたほうが絶対にいいんだよ。今日、お前が感じた違和感、早めに解決しておいたほうがいいぞ」
「…………」
黙ってしまったおれの目の前に峰先生の手がまた伸びてきて、今度はプチトマトをつままれた。
「それとな」
「……はい」
「もし、彼女がウソをついていたとしても、お前はそれを信じろ」
「え?」
峰先生は真面目な顔のまま言った。
「ウソを暴いたっていいことなんて一つもないからな。女のウソに騙されてやるのも男の甲斐性ってもんだよ。そのウソはお前との関係を守るためのウソだ」
「はあ……」
ウソ……ウソかあ……。
浩介は……おれに何かウソをついているのだろうか……。
お言葉に甘えて、本当に当直を変わってもらった。
病院を出てすぐに電話をしてみたのだが、つながらない。
気がついてないのかな?
とりあえず、マンションに一度戻って車で浩介のアパートに行くことにした。そのことをメールしてから家路を急いだ。
久しぶりに合鍵を使って浩介のアパートの部屋に入る。
浩介が就職したあとで、おれがまだ学生だった頃は毎日のように入り浸っていた。あいかわらずの整理整頓されたシンプルな部屋。
浩介はあれで結構神経質で潔癖症だ。おれもわりとそういうところあるけど浩介には負ける。
また電話をしてみたけれど、やっぱりでない。
メールにアパートにいることを書いてから、とりあえず待ってみる。
浩介の机に飾られている一枚の写真。卒業式の時に校門の前で撮った写真だ。
あれから約10年。おれ達は何か変わっただろうか……
また電話してみる。呼び出し音はするのにやっぱりでない。
何だか不安になってきた。
何かあったのだろうか……。
それからおれは一人悶々としてしまった。
峰先生の「浮気」の話も頭をよぎる。今、誰かと会っていたりするのだろうか……。
心配のまま、何度も電話してしまったが、すべて繋がらず、不安がどんどん募っていく。
「あ」
窓から外を見ていたら……浩介が帰ってきたのが見えてきた。
とりあえずホッとしたが……
「……浩介」
おれに見せない浩介の表情。疲れた…というか、暗い、そう、暗い表情。
でも近づいてきて、おれの車に気が付くと、パッと表情が変わった。すごい勢いで走り出す。
ガンガンガンガンっと階段をのぼる音がする。
「慶?!」
勢いよくドアが開き、浩介が飛び込んできた。
いつもの、明るい浩介。
無理してるんじゃないか、と心配になり、思わず眉間にシワが寄る。
「うわわわわっ慶っ本物っすごいっ」
いきなり抱きしめられた。
冷た……っ。浩介、体がすごく冷えている。
「どうしたの?どうしたの?今日当直って言ってたよね?」
「変わってもらった。なんか今朝ちゃんと話せなかったから……」
「うわっそうなのっ感動っ嬉しいっ」
嬉しそうな様子の浩介に安心しつつも、今までどこにいたんだろう?という疑問で頭がいっぱいになる。
さっき浩介がほっぽり投げた荷物……一つは行きつけの本屋の袋、もう一つは浩介が参加しているNPO法人の封筒、かな?
この二か所にいっていたとするなら、どうしてこんなに体が冷えてるんだ……?
思わず疑問が口から出てしまった。
「お前……今日、どこいってたんだ?」
「え?」
浩介は一瞬キョトンとすると、すぐに笑顔に戻って、
「いつもの本屋巡りだよ? あと事務所によって……そこからあちこちのイルミネーション見がてら歩いて帰ってきた」
「歩いてここまで?!」
どうりで体が冷えてるわけだ。
「うん。真面目に歩いたから結構速かったと思うけど、慶が来てくれてるならそんなアホなことしないで電車で帰ってくればよかったよー。連絡くれればよかったのに」
「……したよ」
思わずムッとする。
「え?!」
あわてて携帯をポケットから出して確認する浩介。
「うわっごめんっ。歩いてて気が付かなかったんだっ」
どんだけ必死に歩いてんだよ。
「……なにかあったんじゃないかって心配した」
「ご、ごめん……」
「…………」
謝られて、はっとする。
おれ、浩介のこと責められるのか?
普段、さんざん、連絡取れない状態になってるくせに……。
顔を見られたくなくて、背を向ける。
「慶……?」
「………ごめん」
本心から言葉がでた。
「え?なんでごめん?」
聞きかえす浩介に、背中を向けたまま答える。
「お前……いつも待っててくれるだろ。おれ、全然メールも電話も返せないから何時に帰ってくるかもわからないのに、ずっと待っててくれてる」
「それは………」
「お前もいつもこんな気持ちでいるのかなーと思ったら……」
「こんなって?」
「何かあったのかな?とか……、誰かと、何かあったのかな……とか」
言いながら不安で押しつぶされそうになる。もう11年も付き合ってるっていうのに、まだこんなことで揺らいでしまう自分に戸惑う。
「…………慶」
ふわりと後ろから抱きしめられた。
「不安にさせてごめんね」
「!」
言い当てられて恥ずかしさ紛れに思いっきり否定する。
「べっ別に不安になんか……っ」
でも浩介はそのまま優しく包んでくれる。
「ごめんね………」
そのあと、浩介が妙なことを言い出した。
おれが留守中に、自分が部屋にきているのが迷惑じゃないか、とか……意味が分からん。おれは即座に否定しつつも、
「お前がいると、飯はできてるし、洗濯もしてくれてるし、そうじもしてくれてるし、風呂も洗ってくれてるし、ホント楽」
冗談めかしていうと、浩介は「そこか」とガックリ肩を落とす。ホント面白い。
そんな浩介の腰にするりと手を回す。
「本当は、おれ、お前に会えるだけで十分だよ」
「慶……」
びっくりしたように浩介がおれを見下ろす。
そりゃそうだよな。おれが夜でもないのに素面でこんなことを言ったりしたりすることはめったにない。でも、浩介を待っていた時間のさみしさがおれを突き動かしていた。
「充電」
「え?」
「充電、だよ。すっごい疲れて帰ってきても、お前にこうやってくっつくと、充電されるみたいに疲れが取れてくる。だから本当にお前がいてくれるだけで十分」
「慶……」
ぎゅっと抱きしめられる。愛おしい浩介。
本当に、おれはお前がいてくれるだけで十分なんだよ。
「浩介……」
このまま、この雰囲気のまま、キスして、ベッドにもつれこんで、となるのがいつものパターンなんだけど……
「あ」
携帯が鳴った。病院からだった。近くのクリスマスパーティー会場で集団食中毒が出たそうだ。
「……ごめん。病院戻らないといけなくなった」
浩介は一瞬うつむいたが、すぐに顔を上げた。
「じゃ、おれが運転するよ。慶、夕飯食べる暇ないでしょ? 冷蔵庫に炒飯の残りあるから、それ車の中で食べて」
「………」
いつもながら……浩介は文句も言わず、最善のサポートをしてくれる。
「……ありがとう。助かる」
浩介がテキパキと用意をはじめる後ろ姿に、なぜか切なくなってきた。
本当に「完璧」なんだよ。浩介は。
「……で、おれ、そのまま慶の部屋で待っててもいい?」
文句は一切言わず、こういうことを言ってくれるところも「完璧」だ。切ないほど。
いつもいつもそうだ。メールもいつも最後は「返信しなくて大丈夫だからね」で終わっている。気にかけてくれながらも、おれの負担にならないようにしてくれている。
「当たり前だろ」
愛しさがつのって、ぎゅっと後ろから抱きしめる。
「ごめんな、いつも」
「ううん」
浩介は……なにを考えているんだろう?会える時間が少なくなること、なんとも思わないんだろうか?
「はい。じゃ、行こう、慶」
「うん……」
浩介は……どう思っているんだろう。
「どしたの?」
「うん……」
「遅くなっちゃうよ?」
「うん……」
ゆっくりと腕を離す。
「……ごめん。おれ、わがままだよな」
うつむいたまま続ける。
「お前が文句言わないでくれることありがたいのに、文句言われても困るだけなのに、何も言われないと何も思われていないみたいで……必要とされてないみたいで不安になってくる」
「え」
びっくりしたような浩介の声に顔をあげる。
「え、そうなの?」
「そうなのって」
浩介は、きょとん、としている。
「いや……ごめん、おれ、慶の負担になっちゃいけないって、ずっと、ずっと……」
言いながら、浩介が泣きそうな顔になってきた。
ずっと、ずっと……我慢させてきたんだな。
「浩介」
その愛おしい頬を両手で囲む。
大きく瞬きをした浩介を引き寄せ、ゆっくりと唇を重ねた。愛おしい、愛おしい、浩介。
「……慶」
驚いたような表情をしている浩介の頬を軽くたたくと、
「続き、帰ってきてからな」
なんだか恥ずかしくなってきた。
「車出してくる」
浩介に何か言われる前に、おれは急いで玄関を出た。
落ち着いたのは深夜を過ぎてからだった。
「渋谷、なんかスッキリした顔してんな。仲直りできたのか? よかったよかった」
峰先生にバンバン肩を叩かれた。
「早く帰ってやれ~」
とのお言葉に甘えて、早々に上がらせてもらう。
マンションにもどると、電気がつけっぱなしで浩介はソファにもたれて眠っていた。本が手元で開いたままになっている。
「先に寝てていいっていったのに……」
照明を最小まで落としてから、浩介の手から本を抜き取る。ぴくっと手が動いたがまだ寝ている。
「浩介……」
寝ながらも眉間にしわが寄っている。
怖い夢を見るから寝るの嫌なんだ、と前に言っていたことがある。何の夢か聞いても、よく覚えてない、と答えていたが……。
「………」
眉間のしわに口づける。額にも、こめかみにも……。するとゆっくり浩介の瞳が開いた。
「……慶?」
ふんわりと浩介が微笑む。
「おかえり。お疲れ様……」
「……ただいま」
そっと頬に口づける。
「慶……」
「ちょっと待った」
浩介が顔を寄せてこようとするのを手で止める。
「え、なに? この雰囲気でやめるなんてありえないんだけど」
「いや、その前にちょっと聞きたいことがあって」
すとんと横に腰をおろし、不満げな浩介の顔をのぞきこむ。
「お前さ………、朝、変だったよな」
「…………」
三秒以上の間のあと、浩介がポツリという。
「変じゃないよ」
「変だったよ」
「…………どこが?」
恐れるように震えた浩介の声。視線は自分の手に落ちたままだ。
「どこがって……」
「………」
「例えば、珍しくバックが多かった」
言うと、浩介は今度は十秒以上間をあけてから、
「…………………………え?」
頭真っ白、みたいな顔をしておれを見返した。
なんか真面目にこんなこと言うのが恥ずかしくなってきた。
「だからー、お前、いつもはおれの顔が見えないからやだとかいって、後背位なんてめったにしないじゃん。それになんかやけに背中ばっかり……」
だんだんどうでも良くなってきた。一人で考えてたときはどうしてだろうって悶々としてたけど、こうして口に出してみると、なんてアホらしい疑問なんだ。
「………慶」
「……………ごめん。どうでもいいな、そんな話」
「どうでもよくないよ」
浩介がいきなりギュッとおれの両手をつかんだ。
「嫌だった?」
「え?」
真剣な浩介の瞳。
「何が?」
「嫌だったってこと? バック」
「いや……嫌ってことは……」
途端に朝のことを思い出して、顔が熱くなってくる。
嫌ってことは、ない。というか、むしろ……
「………全然嫌じゃない」
「良かったあ……」
心底ホッとしたように浩介が言う。
「でも、なんでなんだ? いや、なんでってこともないのか……」
「ああ……うん」
浩介はおれの手をマッサージするみたいにギュウギュウ握りながら、ぽつりという。
「背中……慶の背中きれいだな~って思って……。ずっと見てたくて………その流れで……」
「背中………」
はっと気がついた。そして、どうして気づいてやれなかったんだ、と激しく後悔した。
高校二年の夏、浩介が冗談めかして言ったことがある。
「うちの母親ヒステリーだから、おれよく背中バンバン叩かれてて、今でも背中にアザ残ってるんだよ~」
話を聞いた時は、まだ浩介の母親の異常性を知らなかったから、ふーん、くらいにしか返さなかったけれど、後々、浩介が極力人前で背中を見せないようにしている、ということに気が付いてからは、その深い心の傷に寄り添いたいと思っていた。でも、浩介が気にしないようになってからは、すっかり忘れていたのだ。
おれはもちろん何度も浩介の背中を見ている。アザ、といってもごくごく薄いもので、言われなくては分からない、というか、言われても、これのこと?と疑問符がつくようなアザ……というより、シミ、みたいなものなのだ。でも浩介にとっては大きな大きな濃い黒いアザなんだろう。
「もしかして………」
浩介の手を握り返す。
「お母さんと……何かあったのか?」
「………………ううん」
浩介は静かに首を振った。
「何もないよ」
「……………」
たぶん、何かあったんだろう。
でも言いたくないなら言わなくてもいい。
騙されてやるのも男の甲斐性……ですよね?峰先生。
「………浩介」
おれは浩介の頬をかこむと、そっと口づけた。柔らかい浩介の唇の感触。ゆっくりと浩介の腕がおれの腰にまわされる。
「慶………」
「どうする? 続きする? それとももう寝るか?」
「だーかーらー、この状況でやめるなんてありえないでしょっ」
ぷうとふくれた浩介の額に素早くキスをする。
「じゃ、するか」
「する」
それを合図に、おれは噛みつくみたいなキスを浩介にくれてやる。
浩介がウソをついているとしても、今、目の前にいる浩介を信じたい。信じている。それで充分だ。
浩介は素早くおれを下に組み敷くと、わくわくしたような口調で、
「で、どうする?どうする?どうしたい?」
「なにが?」
「体位」
「……………………まかせる」
「えーーーーーじゃ、どっしよっかな~。この際だからさ~いつもはあまりしない体位を……」
「でも、お前もおれも朝から仕事だし、そんなにのんびりしてる場合じゃ……」
「うんうん」
「聞いてんのか?」
「うんうん」
聞いてねえな、こりゃ。
観念しておれも浩介の服を脱がせにかかる。
「ああ……やっぱり慶の背中、綺麗」
「!」
すっとなぞられのけぞる。
しばらく背中ブームが続きそうだな……。
後ろから耳、うなじ、肩、と唇が下りてくる。
「浩介……」
浩介と一緒に過ごす夜が下りてくる。
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以上、約2年半前に書いた「翼を広げる前(慶視点)」の再録でございました。
お読みくださりありがとうございました!
峰先生、初出♥
次回も慶視点でいこうと思います。
予定では、今回の再録以外は浩介視点オンリーで、と思っていたのですが、もういいよね……黒浩介書ききったよね……と(^_^;)
クリックしてくださった方々、読んでくださった方々、本当にありがとうございます!
どれだけ書く力をいただけたことか……感謝してもしきれません。
次回金曜日、よろしくければどうぞお願いいたします!
クリックしてくださった方、読みにきてくださった方、本当にありがとうございます!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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