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BL小説・風のゆくえには~2つの円の位置関係 目次・登場人物・あらすじ

2019年02月26日 08時00分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 2つの円の位置関係

(2018年8月21日に書いた記事ですが、カテゴリーで「2つの円の位置関係」のはじめに表示させるために2019年2月26日に投稿日を操作しました)

目次↓

1(享吾視点)
2(哲成視点)
3(享吾視点)
4(哲成視点)
5-1(享吾視点)
5-2(享吾視点)
6(哲成視点)
7(享吾視点)
8(哲成視点→享吾視点)
9(哲成視点→享吾視点)
10(享吾視点→哲成視点)
11(享吾視点)
12(哲成視点→享吾視点)
13-1(享吾視点)
13-2(哲成視点→享吾視点)
14(哲成視点→享吾視点)
15(哲成視点→享吾視点)
16(享吾視点→哲成視点)
17(享吾視点→哲成視点)
18(哲成視点)
19(享吾視点→哲成視点)
20(享吾視点)
21(哲成視点→暁生視点)
22(享吾視点)
23(哲成視点→享吾視点)
24(哲成視点→享吾視点)
25(享吾視点)
26(哲成視点)
27(享吾視点)
28(哲成視点)
29-1(哲成視点)
29-2(享吾視点)
30(哲成視点)
31(享吾視点)
32(哲成視点→享吾視点)
33(哲成視点→享吾視点)
34-1(享吾視点)
34-2(哲成視点)
35(享吾視点)
36-1(哲成視点)
36-2(享吾視点)
37-1(享吾視点→哲成視点)
37-2(享吾視点)
38(哲成視点)
39-1(享吾視点)
39-2・完(享吾視点)


人物紹介↓


主人公1・村上享吾(むらかみきょうご)

中学3年。身長175cm。バスケ部。
訳あって、目立たないようひっそりと生活してきたのに、中学3年で村上哲成と前後の席になり、学級委員をやらされるはめになる。


主人公2・村上哲成(むらかみてつなり)

中学3年。身長153cm。野球部。
訳あって、ひたすら明るいお調子者。色白、眼鏡。
亨吾に学級委員を押し付けたことには理由があって……



松浦暁生(まつうらあきお)
中学3年。身長180センチ。野球部。
エースで4番。容姿端麗。成績優秀。何でも出来る優等生。
哲成とは幼稚園時代からの友人。


西本ななえ(にしもとななえ)
中学3年。身長158cm。合唱部。
成績は常に学年1位の才女。毎年学級委員を務めている。


上岡武史(かみおかたけし)
中学3年。身長167cm。バスケ部。
渋谷慶とは犬猿の仲。でも試合中は「緑中ゴールデンコンビ」と呼ばれるくらい良いコンビ。


荻野夏希(おぎのなつき)
中学3年。身長156cm。バスケ部。
サバサバ系女子。少々強引でおせっかい。


渋谷慶(しぶやけい)
中学3年。身長155cm。バスケ部。
超美少年・運動神経抜群・頭も良い。学校のアイドル的存在(←でも本人気がついていない)。
明るく気さくで友達も多い。バスケ部関係者の間では「緑中の切り込み隊長」とあだ名されている。
(「風のゆくえには」シリーズ本編の主人公)


✳身長は春の身体測定の結果です。



あらすじ

訳あって、常に「真ん中」あたりにいることを心掛けて生活している村上享吾。
でも、中学3年生で同じクラスになった、同じ苗字の「村上哲成」に無理矢理、学級委員を押し付けられてしまう。哲成みたいな目立つ人間とは関わりたくないのに、なぜか何だかんだと絡んでこられて、行動を共にすることが多くなる。
そんな中、バスケ部の練習中に学校のアイドル・渋谷慶に怪我をさせてしまい……


物語は1989年4月からはじまります。平成元年です。携帯もない時代です。
亨吾達は1974年生まれ。団塊ジュニア世代です。1学年12クラスあります。
そんな時代の物語です。



----

お読みくださりありがとうございました!

私(同じく1974年生まれ)が高校生の時に作った物語のリメイクになります。
メモによると、1992年9月にプロットをたてて、最後まで書きあげたらしい。でも、書いたノートはシュレッターしてしまったので、残ってません。
その後、1994年6月に彼らが大学生になった続編を書いてます。←これもシュレッターしちゃった。

そんな過去の遺跡を掘り返してみることにしました。
「風のゆくえには」シリーズらしく、何も特別な大事件も起こらない、平平凡凡な物語ですが、「友達の友達の友達の話」くらいのノリでお付き合いいただけたら幸いです。よろしくお願いいたします。


読みにきてくださった方、ランキングクリックしてくださった方、本当にありがとうございます!
おかげで新シリーズに着手することができました。よろしければ、今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。


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BL小説・風のゆくえには~2つの円の位置関係39-2・完

2019年02月26日 07時24分29秒 | BL小説・風のゆくえには~ 2つの円の位置関係
***

 帰り道、村上哲成はほとんど言葉を発しなかった。

 いつも村上と登下校をしている松浦暁生は、クラスの奴らと学校に残ることになったため、せっかくオレが村上と一緒に帰れることになったのに……

(やっぱり、西本が何か言ったんだろうな……)

 こういう風になるのが嫌だから、あえてあの話題には触れずにきたのに……


 村上の家に着くと、お手伝いさんの田所さんが出迎えてくれた。相変わらずの無愛想で、一応、「卒業おめでとうございます」と、言ってくれた。そして、オレの分の昼食も用意するから、あと20分待つように言われた。

「じゃ、部屋で待ってようぜ?」

 村上がなんだか緊張した顔のままで言ってきた。いつもと様子が違い過ぎて、こちらまで緊張してきてしまう。

 今まで何度も村上の家には遊びにきているけれど、二階の村上の部屋に入ったことは数えるほどしかない。そのうちの一回は、クリスマスのお泊り会の時。

(あの時……)

 布団の中で村上を後ろから抱きしめて、猛ったものを押しつけて……

(……ああ、ダメだダメだ)
 そんなことを思い出したら、妙な気が起きてしまいそうだ。何とか記憶を押し込める。……と、


「キョーゴさあ……」
「……なんだ」

 トン、と村上がベッドに腰かけたので、オレもその横に座る。ベッドが沈んだ反動で、ピトッと村上がくっついてきたことに、ドキンと心臓が跳ね上がる。
 そんなこと知らない村上が、クルクルした目をこちらに向けてきた。

「さっき、西本に何言われてたんだ?」
「何って……」

 先ほどのやり取りを思い出す。
 
『せっかく身を引いてあげたんだから、頑張ってよ?』

 苦笑気味に言っていた西本。西本は中学三年間、村上に片想いをしていたらしい。でも結局告白はしていない。自分にまったく脈がないことが分かって、無駄に傷つかないために、あえて告白しなかった、と以前話していた。だから、さっき何を話していたかなんて、村上本人に言えるわけがない。

「高校いっても頑張って、とかそんな話」
「……ふーん」

 誤魔化したのを見破るようにじっと見つめてくる村上……なんなんだ。

「なんだよ?」
「……そんな話するのに、内緒話するみたいに、顔くっつけて話す必要ないだろ」
「…………」
「…………」
「…………え」

 村上……ふくれっ面だ。なんか……かわいい。

「……………何怒ってるんだよ?」
「別に怒ってない」
「怒ってるだろ」
「怒ってない!」
「え、わ」

 いきなり、視界が反転した。首のところに抱きつかれた状態で、ベッドに押し倒されたのだ。
 
「何……」
「…………キョーゴ」

 耳元で聞こえる村上の声……村上の温もり……

「別に怒ってないけど……なんか、ムカつく」
「…………」
「…………」
「………そうか」

 右腕は村上の胸のあたりで押さえ付けられていて動かせないので、左手で、そっと頭を撫でてやる。愛おしい気持ちだけが、体中に満ちて、あふれ出していそうだ。

「キョーゴ……本当のこと教えてくれよ」
「なにが」
「本当は、西本に告白されたんじゃないのか?」
「…………されてない」

 西本の好きな奴はお前だよ、なんて絶対に教えてやらない。

「ホントに?」
「本当」
「ホントに?」
「本当。……っていうか、告白されようがされなかろうが、関係ないだろ」
「……………」

 ゆっくりと起き上がった村上。ジッとこちらを見下ろしながら、ポツン、と言った。

「関係……ある」
「…………」

 オレは寝そべったまま、村上のクルクルした瞳を見上げる。

「関係あるって……どういうことだ?」
「どういうことって…………」
「………」

 村上は再び寝っ転がると、オレの右腕に頭をのせて、横からピッタリとくっついてきた。腕枕、だ。

(……こっちの気も知らないで……)

 若干腹が立ってくる。まずい現象が起きそうなのを、理性をかき集めて制御する。制御しつつも、欲求に勝てず、少し体を横にして、左腕を村上の背中に回し、やんわりと抱きしめる。……と、

「……d<r-r’」
「え?」

 腕の中の村上がボソッと、公式を言った。d<r-r’……?

「2つの円の位置関係?」
「そう」

 オレの背中に村上の腕が回ってくる。

「オレ……お前と一緒にいると、まあるくまあるく包まれてる気がするんだよ」
「…………」

 dは二つの円の中心間の距離で、rは半径を表している。rの差よりもdが小さいといことは、一つの円が一つの円にすっぽりと包まれている状態ということだ。

「昔のオレ達は……d>r+r’」

 二つの円は別々に存在している。昔のオレ達のdの値はすごく大きかった。

「でも、r-r’<d<r+r’ってなって……」

 二つの円が交わる。

「今は、d<r-r’」
「……なるほど」

 ぎゅっと抱きしめると、村上もぎゅっと抱きついてきた。オレの腕で包んでいる愛しい感触……

 しばらくの沈黙の後、村上がポツリと言った。

「バレンタインの時に話してた、答えのことなんだけど」
「…………」

 ギクリとしたオレの様子に気がついたように、村上はそっとオレの腕から抜け出て、そのクルクルした瞳で見下ろしてきた。

「オレさ……」
「うん」
「…………」
「…………」

 しばらくの沈黙のあと、村上は大きくため息をついた。

「…………やっぱり、よく分かんねえんだよ。恋愛とか」
「…………」
「でも、今日、キョーゴが西本に内緒話されてるのみて、すげー腹立ったのは、やっぱり嫉妬……なのかなあと思うし」
「…………」
「そうなると、やっぱり、オレはキョーゴのこと好きなのかなあ?と思うんだけど、でも……」
「…………」
「…………キョーゴの答えは、どうなんだ?」
「…………」

 オレもゆっくりと起き上がる。隣に座って、村上の眼鏡の奥の瞳をジッとみつめる。

「オレは……」

 そっと、その柔らかい頬に触れる。

「オレは……」

 覚悟を決めて、本心を伝える。

「お前のことが、好きだよ」

 見開いたその瞳にそらさず、瞳を合わせる。

「誰にも取られたくない。お前のことが欲しい、と思う」
「キョーゴ、それ……」
「でも」

 何か言いかけた言葉を遮って言い募る。

「でも、その感情を優先させて、お前に離れられるのは本末転倒なんだよ」
「え」
「お前が欲しいって思う感情よりも、お前と一緒に一緒にいたいって感情の方がずっと大きいから」
「…………」
「だから…………一緒にいてほしい」

 本当に本当の思い。オレの望みはそれだけだ。
 村上と、一緒にいたい。ずっと。ずっと……

 沈黙が流れる……

(もしかして……嫌だとか思われてる……?)

 あまりにも長い沈黙に、本心を言ったことを後悔しはじめていたところ……


「ご飯できましたよ」

 鋭いノックの音とともに、田所さんの低い声がドアの外から聞こえてきて、二人してビクッと跳ね上がってしまった。

「は、はーい」
「ありがとうございますっ」

 即座に答えたけれど、ドアの外の反応はない。おそらくこちらの返事なんか聞かずに、階下に戻っていったんだろう。

「び、びっくりした……」
「心臓止まるかと思った」

 二人で顔を見合わせ、ぷっと吹き出してしまう。
 
「行こうか」
「そうだな」

 ベッドから下りる。何事もなかったかのような村上の顔にホッとする。
 これでギクシャクするのは本当に本末転倒だから。このまま、聞かなかったことにしてくれて全然かまわない。

 胸をなでおろしながら、村上の後ろについて部屋から出ようとした。が、

「あ、キョーゴ、キョーゴ」
「なんだ?」

 振り向いた村上に、なぜか手招きをされた。だから少し身をかがめたところ……

「え」

 素早く、キスされた。

「え?」

 キスされた?

 え、なんだ今の。

「村上?」

 呆然と見返すと、村上はニカッといつもの笑いを浮かべて、得意げに言った。

「d=r+r’」
「は?」
「だから、d=r+r’だよ!」

 d=r+r’。二つの円の位置関係を表す方程式で、円がくっついて雪だるまみたいな状態になることを表す。

「うまいこと言ったオレ!」

 村上はニコニコとしたまま、何でもないことのように、言葉を足した。 

「オレも、ずっとキョーゴと一緒にいたい」

 クルクルした瞳。

「だから、これからも、ずっとずっとよろしくな」
「………村上」

 一緒に……

 その言葉が、何よりも欲しかった言葉だ。

 体中が温かくて嬉しくて、たまらない。

「村上……」

 その柔らかい頬に手を当てて、もう一度、顔を寄せてやる。

「d=r+r’……」
「ん」

 優しく触れる唇。
 村上にとってこれが恋愛かどうかなんか関係ない。ただ一緒にいたいと思ってくれればそれでいい。

「d<r-r’」

 ぎゅっと抱きしめる。
 オレはずっと、お前と一緒にいる。



<完>
 


---

お読みくださりありがとうございました!
とりあえず中学生編は終了となります。
お付き合いくださいまして、本当に本当にありがとうございました!
4分遅刻っとりあえず更新します。


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