一心不乱に木を彫っている人がいる。下を向き、黙々と彫っている。周囲の雑踏の騒がしさと一線を画すその空間。そこに入り込むことに躊躇いを感じるほどの、その空間。
僕は・・・その人の前にしゃがみ込んだ。
誰かが横から話し掛けて来たようだが、僕にはその声は届かなかった。
僕は、その人の前にしゃがみ込んでいる。その人は、僕の存在に気づくこともなく、一心不乱に彫り続けている。
ふと、糸が・・・繋がった。
その人と僕の目が合った。
こんにちは。・・・僕は二風谷であなたに会いました。
おぉ、とその人は声を漏らし、立ち上がり右手を差し出してくる。僕も立ち上がり、その手を強く握る。
覚えているだろうか?
二風谷のキャンプ場で、クマのウンチを見せに連れて行ってくれ、鮭の産卵を一緒に待ち眺め、アイヌ文化博物館のチセでトンコリの演奏を聴かせてくれ、アイヌの歴史や文化や伝統工芸について教えてくれたあのおじさんを?
てっきりアイヌの人だと思って話していたら、実は東京出身の、僕らと同じシャモだったおじさんのことを?
そのおじさんが、今目の前にいる。二風谷から1000キロ以上も離れた、池袋の街での再開だ。金色の招待券をもらったことも、一等の巨大なヌイグルミを当てたことも、ジャンケン大会で優勝したことも、全部薄れてしまうくらいの驚きではないか。
えっ?ヤラセだろって?
・・・。
えっ?知ってたんだろって?
・・・。
池袋に行くなんておかしいって?
・・・。
いやだなぁ・・・。偶然だよぉ。・・・。ホントに。・・・。ぐ・う・ぜ・ん。
いやぁ、運命の糸って・・・あるんですねぇ。
つづく・・・かな?
僕は・・・その人の前にしゃがみ込んだ。
誰かが横から話し掛けて来たようだが、僕にはその声は届かなかった。
僕は、その人の前にしゃがみ込んでいる。その人は、僕の存在に気づくこともなく、一心不乱に彫り続けている。
ふと、糸が・・・繋がった。
その人と僕の目が合った。
こんにちは。・・・僕は二風谷であなたに会いました。
おぉ、とその人は声を漏らし、立ち上がり右手を差し出してくる。僕も立ち上がり、その手を強く握る。
覚えているだろうか?
二風谷のキャンプ場で、クマのウンチを見せに連れて行ってくれ、鮭の産卵を一緒に待ち眺め、アイヌ文化博物館のチセでトンコリの演奏を聴かせてくれ、アイヌの歴史や文化や伝統工芸について教えてくれたあのおじさんを?
てっきりアイヌの人だと思って話していたら、実は東京出身の、僕らと同じシャモだったおじさんのことを?
そのおじさんが、今目の前にいる。二風谷から1000キロ以上も離れた、池袋の街での再開だ。金色の招待券をもらったことも、一等の巨大なヌイグルミを当てたことも、ジャンケン大会で優勝したことも、全部薄れてしまうくらいの驚きではないか。
えっ?ヤラセだろって?
・・・。
えっ?知ってたんだろって?
・・・。
池袋に行くなんておかしいって?
・・・。
いやだなぁ・・・。偶然だよぉ。・・・。ホントに。・・・。ぐ・う・ぜ・ん。
いやぁ、運命の糸って・・・あるんですねぇ。
つづく・・・かな?