「見るに見かねて」という言葉がある。
見るに見かねてほにゃららしてあげた、とか。
例えばこんな具合。
先日、ちょうど実家へ帰っている時に、実家の前で一人のおじさんが足を止めた。動かない。夜である。
おじさんはなぜか動かない。隣家の塀に手をついて立ったままである。少し様子がおかしい。
事情を聞いてみる。どうも酔っ払っているようだ。飲み屋から家へと帰る途中。どうも飲みすぎたようだ。
僕は酒を嗜むということがないので、酔っ払いは苦手である。酔っ払いと関わるとロクな事がないと思っている。
帰れるか?と聞くと、帰れると言う。じゃあ帰れと言うと、帰ると言う。
しばらくして、おっさんは小走りで去って行った。
なぜ小走り?と思う。おっさんは、小走りでそのまま70メートルほど進み、闇夜で見えなくなる寸前で、ドッターンと転んだ。死んだかもしれない。
なぜ小走りだったかというと、足が付いて来なかったからなのである。要は、つんのめるようにして進み、実際つんのめったと。ただいまの記録、70メートル!だったと。
嫌になっちゃうのである。実家の近所で酔っ払いの屍体が翌朝に発見されるというのは、嫌なのである。少しでも遠くで死んでくれ、と思ってしまうのである。
僕はトボトボと、倒れたおっさんの元へと歩き進み、声をかける。
「おっさん、大丈夫かよ?」
おっさん、酩酊中である。
転んだ拍子に頭でも打って血を流していたりしたら、即救急車なんだけど、おっさんは、酩酊はしているが、無事なのである。
どうすんだ、これ?と、思うのである。
おっさんに、家はどこか?と聞いてみる。おっさんは、「忘れちゃったよぉ~」と答える。もう一度、家はどこか?と聞いてみる。おっさんは、「家なんて、忘れちゃったのよ~」と答える。頭を引っ叩いて、思い出させてやろうかとも思うのだが、それで意識不明にの重体になって、おれが冤罪で逮捕されるのもなんなので、グッと我慢をするのである。
「おっさん、家の住所はよ?」
すると、驚いたことに、「⚪︎⚪︎の70-14」と、スラスラと答えるのである。
その住所が本当だとはにわかに信じ難いが、文明の利器アイフォーンのマップで、その住所を検索をするのである。
徒歩10分といったところか。10分で着きはしまいが。
僕は、腹を決めるのである。腹を決めた僕は、おっさんの脇手を入れて持ちあげのである。
言っておくが、僕は、まだ少し怪我人なのである。骨のくっつき具合が思わしくないようで、来月にはまたCTスキャナーに入れられて被曝をさせられる予定の身なのである。
1時間後、僕は実家に戻った。
左手一本で、足のもつれるおっさんを抱きかかえ、少し進んでは休み、少し進んでは休み、「もうダメだ」と嘆くおっさんを、「もう少しだ!がんばれ!」と励ましなら、まるで戦地で負傷した兵隊仲間を運ぶ勇敢な兵士のように、地獄の黙示録のマーロンブランドのように、ベトナムで上官をおぶって走るフォレストガンプのように、夜の住宅街をひたすらに進んだのである。
おっんの家は、潰れたラーメン屋だった、というのはどうでもいい話なので割愛。
鍵を探させて、鍵を開けて、おっさんを玄関から中へと放り込んで、やっとの思いで生還したのである。
全身筋肉痛になったとしても、実家の近所の平和が守られたので、良しとするのである。
こういうのを、「見るに見かねて」と言うんだよ。
見るに見かねてほにゃららしてあげた、とか。
例えばこんな具合。
先日、ちょうど実家へ帰っている時に、実家の前で一人のおじさんが足を止めた。動かない。夜である。
おじさんはなぜか動かない。隣家の塀に手をついて立ったままである。少し様子がおかしい。
事情を聞いてみる。どうも酔っ払っているようだ。飲み屋から家へと帰る途中。どうも飲みすぎたようだ。
僕は酒を嗜むということがないので、酔っ払いは苦手である。酔っ払いと関わるとロクな事がないと思っている。
帰れるか?と聞くと、帰れると言う。じゃあ帰れと言うと、帰ると言う。
しばらくして、おっさんは小走りで去って行った。
なぜ小走り?と思う。おっさんは、小走りでそのまま70メートルほど進み、闇夜で見えなくなる寸前で、ドッターンと転んだ。死んだかもしれない。
なぜ小走りだったかというと、足が付いて来なかったからなのである。要は、つんのめるようにして進み、実際つんのめったと。ただいまの記録、70メートル!だったと。
嫌になっちゃうのである。実家の近所で酔っ払いの屍体が翌朝に発見されるというのは、嫌なのである。少しでも遠くで死んでくれ、と思ってしまうのである。
僕はトボトボと、倒れたおっさんの元へと歩き進み、声をかける。
「おっさん、大丈夫かよ?」
おっさん、酩酊中である。
転んだ拍子に頭でも打って血を流していたりしたら、即救急車なんだけど、おっさんは、酩酊はしているが、無事なのである。
どうすんだ、これ?と、思うのである。
おっさんに、家はどこか?と聞いてみる。おっさんは、「忘れちゃったよぉ~」と答える。もう一度、家はどこか?と聞いてみる。おっさんは、「家なんて、忘れちゃったのよ~」と答える。頭を引っ叩いて、思い出させてやろうかとも思うのだが、それで意識不明にの重体になって、おれが冤罪で逮捕されるのもなんなので、グッと我慢をするのである。
「おっさん、家の住所はよ?」
すると、驚いたことに、「⚪︎⚪︎の70-14」と、スラスラと答えるのである。
その住所が本当だとはにわかに信じ難いが、文明の利器アイフォーンのマップで、その住所を検索をするのである。
徒歩10分といったところか。10分で着きはしまいが。
僕は、腹を決めるのである。腹を決めた僕は、おっさんの脇手を入れて持ちあげのである。
言っておくが、僕は、まだ少し怪我人なのである。骨のくっつき具合が思わしくないようで、来月にはまたCTスキャナーに入れられて被曝をさせられる予定の身なのである。
1時間後、僕は実家に戻った。
左手一本で、足のもつれるおっさんを抱きかかえ、少し進んでは休み、少し進んでは休み、「もうダメだ」と嘆くおっさんを、「もう少しだ!がんばれ!」と励ましなら、まるで戦地で負傷した兵隊仲間を運ぶ勇敢な兵士のように、地獄の黙示録のマーロンブランドのように、ベトナムで上官をおぶって走るフォレストガンプのように、夜の住宅街をひたすらに進んだのである。
おっんの家は、潰れたラーメン屋だった、というのはどうでもいい話なので割愛。
鍵を探させて、鍵を開けて、おっさんを玄関から中へと放り込んで、やっとの思いで生還したのである。
全身筋肉痛になったとしても、実家の近所の平和が守られたので、良しとするのである。
こういうのを、「見るに見かねて」と言うんだよ。