ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

リヤカーバンドが行く!

2015-04-28 02:56:46 | Weblog
リヤカーバンドマンの僕たちは、週に一回くらい、公民館の防音室でバンド練習をしている。
ホントに練習をしていたのかどうかは、甚だ怪しい。
何しろ、目的がない。

全員バラバラの高校へ進んだというわけで、文化祭には出られない。ライブハウスに出るなんていう発想もないし、実力もない。目的がないのである。

そう、僕たちは高校生なのである。

高校生は、隠れてタバコを吸うのである。タバコを吸う場所なんていくらでもあるのだが、高校生はバカだから、公民館の用具室の中とかで吸うのである。そんで、すぐにバレるのである。どうしてそんなにバカなんだろう?

防音室にホワイトボードがある。でかいやつ。壁と一体になったやつ。大学の講義とかで使いそうなやつ。
そのホワイトボードに、譜面とかを写して書き、それを見ながら練習したりするのだけど、僕らはさっぱり練習などしないので、おぐちゃんの落書き専用ボードみたいになっている。

ある時、僕らの公民館で大問題が起きた。

なんと、防音室のホワイトボードに無数の卑猥な絵が描き込まれていたというのだ。職員さんたちは大騒ぎなのである。

犯人はもちろん、おぐちゃんである。消し忘れて帰ってしまったのである。

そして、これもまたすぐにバレるのである。当たり前である。公民館には利用者の名簿があるからである。

僕らは、なぜか知らないが、すげぇ怒られたのである。信じられないくらい怒られたのである。全部、おぐちゃんが卑猥な絵をホワイトボードに描いたからいけないのである。

大人たちは、しょーもないバカな高校生たちの扱いに困っていたのだと想う。
リヤカーでドラムやアンプを運んで、防音室で卑猥な落書きを描いているバカバンドに手を焼いたのだと想う。

「見るに見かねた」のだと想う。

ここで、大人たちの信じ難い英断が下る。

ドラムとギターアンプとベースアンプを・・・買ってくれたのである。・・・町の予算で。

その後、僕らの町にある四つの公民館全てに、防音室とバンド機材が導入された。名目は、青少年健全育成なんちゃらなんちゃらの一環。

そう、僕らは一夜にして、リヤカーバンドを卒業したのである。リヤカーバンドから、卑猥な落書きバンドに変身したのである。全部おぐちゃんのせいだと、僕は想うよ。

バカ過ぎる高校生を少しでもまともにしてやろうという我が町の優しさに満ちた政策。
でも、バカ過ぎる高校生には、やっぱり響かないのである。

ドラムをしまう用具室でタバコを吸っては怒られ、おぐちゃんはホワイトボードに卑猥な落書きを描いている。さっぱり少しも変わらないのである。