私が神戸市を初めて訪れたのは今から38年前、昭和48年(1973年)の初秋でした。降り立ったのは国鉄(現、JR)三ノ宮駅でした。
駅ホームの南側には富士銀行(現、みずほ銀行)ビルがあり、ホーム側壁面にモザイクで描かれた富士山が象徴的であったと思います。
この時、この『三宮』と云う地名が妙に気になりました。今まで住んできた地方には、『長門一宮』『尾張一宮』などがありましたが、『三宮』は何となくこれらとは違うという気がしたからです。
その後、旧居留地にある“三宮神社”に因んだ地名であることがわかりました。
奈良時代から明治初期まで、日本の地理的区分の基本単位であった律令制に基づいて設置された、日本の地方行政区分である律令国毎に、最も社格が高い神社を一宮、次に社格が高い神社を二宮、さらにその次を三宮と呼んでいました。
「然らば、ここは“摂津の国 三宮”か?」
とも思いましたが、摂津の国の一宮は現在の大阪市住吉区にある『住吉大社』であり、二宮以降は無いとされていること。そして、律令国の一宮等は、そのまま神社名にはされていないことから、三宮神社はこれに該当する神社ではないと思えました。
それでは、神戸市にある三宮神社とはどういった神社なのでしょうか。三宮神社の縁起を確認すると、生田神社の八柱の裔神の中の三柱目に当たる湍津姫命(たきつひめのみこと)を祭った神社とされています。
神戸には、生田神社を取り巻くように生田八裔神と呼ばれる、一から八の数字が付く神社が点在しており、それぞれの神社を中心に一宮、二宮、三宮、四宮、五宮、六宮、七宮の集落が形成されました。
古事記における天照大御神(あまてらすおおみかみ)と素盞鳴尊(すさのおのみこと)とが剣玉を交換して誓約した誓約(うけひ)の際に生まれたとされる3人の女神と5人の男神が祀られている神社で「港神戸守護神厄除八社」とも呼ばれ、数字の順番に全ての神社を巡る「八宮巡り」を行うと厄除けになるとも言われています。
これら八社の創建年代は不明ですが、西暦201年(神功皇后元年)に生田神社が創建されたと日本書紀に記されていることと、神功皇后が朝鮮出兵した帰りに巡拝した順を社名に冠したという伝説が残されていることから、ほぼ同時期に創建されたのではないかと思われます。
それでは、生田八裔神の所在地やご神体、ご利益などについて視てみましょう。
一宮神社(いちのみや)
所在地:神戸市中央区山本通1丁目3-5
祭神:田心姫命(たごりひめのみこと)
福岡県宗像市の沖ノ島の宗像大社より勧請
交通安全、縁結びの神
二宮神社(にのみや)
所在地:神戸市中央区二宮町3丁目1-12
祭神:天忍穂耳尊(あめのおしほみみのみこと)
応神天皇(おうじんてんのう)
勝運、修験の神
三宮神社(さんのみや)
所在地:神戸市中央区三宮町2丁目4-4
祭神:湍津姫命(たきつひめのみこと)
交通安全、商売繁昌、知恵授けの神
三宮神社は1868年(明治元年)の神戸事件の発生地としても知られています。
また、生田の森の戦で源氏の先陣を切って戦死した太郎・次郎兄弟を祀った河原霊社があります。
四宮神社(よのみや)
所在地:神戸市中央区中山手通5丁目2-13
祭神:市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)
弁財天
芸能の神
「花隈芸者の名付けの神」ともいわれています。
五宮神社(ごのみや)
所在地:神戸市兵庫区五宮町22-10
祭神:天穂日命(あめのほひのみこと)
厄除、国家安穏、家内安全、五穀豊穣の神
六宮神社(ろくのみや)
所在地:八宮神社に同じ
祭神:天津彦根命(あまつひこねのみこと)
応神天皇(おうじんてんのう)
厄除の神
1909年(明治42年)、楠高等小学校(現楠中学校)新設により移転、八宮神社に合祀されました。
七宮神社(しちのみや)
所在地:神戸市兵庫区七宮町2丁目3-21
祭神:大己貴命(おおなむちのみこと)
天児屋根命(あめのこやねのみこと)
航海海上安全、土地開拓の神
八宮神社(はちのみや)
所在地:神戸市中央区楠町3丁目4-13
祭神:熊野杼樟日命(くまのくすひのみこと)
素盞鳴尊(すさのおのみこと)
厄除の神
【関連サイト】
生田神社