普段購入・飲食している菓子・乳製品・缶詰・飲み物などの大きさが、いつの間にか小さくなっていた。
或いは同じ大きさの容器・包装なのに、いつの間にか内容量が減っていた。
こんな経験をした人は最近多いのではないでしょうか。一見、これまでと同じ大きさのように思うけど何だか小さくなった或いは量が減っている。でも値段は前と同じ。
こうした現象を英語のシュリンク(縮む)にちなんで「シュリンクフレーション」と呼びます。
なぜ今、シュリンクフレーションが起きているのでしょう。
クッキー、ガム、チョコレートなどの菓子類から、チーズ、マーガリン、牛乳、アイスクリームなどの乳製品、ウインナー、ハムなどの食肉加工品、カップ麺、カップスープなどのインスタント食品、缶詰、調味料にいたるまで、枚挙にいとまがない。どれも消費者になじみのある人気ブランドばかりです。
容器ごと小さくなった商品もあれば、中身の数が減った商品もあります。容器の大きさは変わらないが、開けたら中がスカスカになっていた。或いはこのスカスカ感を目立たなくするために大き目の個別包装を施したものを大袋に入れるように変えるという誤魔化しもあります。
「悲しい」、「切なくなる」、「騙された」、「酷い」等感情を露わにする程に、消費者のショックは大きいと思われます。
容量が減っているのはもちろん企業の意図だが、その理由は、生産コストの上昇と個人消費の低迷という板挟みにあったメーカーが、利益を確保するためにとった窮余の策という側面が極めて強いようです。
つまり、シュリンクフレーションは、力強さを欠く個人消費の底抜けを防ぐために企業がとる苦肉の策と言えるでしょう。
しかし、それで良いのでしょうか?
日本は現在、人件費が上昇しており、企業としては人件費の上昇分を製品価格に転嫁したいのが本音。
しかし、個人消費が低迷するなか、安易に値上げすれば消費者が敏感に反応して売り上げが減少するリスクが大きい。
従って、価格はそのままにして容量を減らすという、実質値上げだが、値上げであることがわかりにくい方法、つまり誤魔化し策をとっているようです。
食品メーカーが商品の容量を減らす動きは、2014年4月に消費税が5%から8%に引き上げられた直後にも相次ぎました。 この時も、個人消費が低迷していました。
最近の容量削減の動きは、人件費の上昇の他、原材料費の値上がりもあるようです。
中国の経済成長の影響で一次産品の国際価格が上昇傾向にあり、それが日本の食品メーカーの原材料調達コストにも響いているようです。
容量の減った商品を知らずに買った消費者が、後で気付いて「だまされた」という気持ちになり、その商品を買うのを止める動きに発展することはないのでしょうか?
商品にブランド力があれば、他商品への乗り換えは起きないようです。
シュリンクフレーションが起きているのは、日本企業が高度経済成長期のように儲けを二の次にして生産拡大を追求するのではなく、利益の確保を重視し始めた表れではないでしょうか?
シュリンクフレーションは食品だけでなく、洗剤や化粧品など日用品の世界でも起きています。
サービス業でも、例えば宅配業者が料金は変えずに人手不足などを理由に遅い時間の配達を止めたら、それはシュリンクフレーションです。
シュリンクフレーションは様々な業種に広がっており、現在の日本企業の好決算や、株高の一因にもなっていると考えられます 。
企業はシュリンクフレーションによって増えた利益を内部留保としてため込むのではなく、給与という形で社員に適正に分配すれば、個人消費も上向き、景気も好循環に入ると考えられます。
景気が好循環になれば、シュリンクフレーションを止めても企業の利益は増加し続けると思われます。
日本経済全体のために企業がシュリンクフレーションの果実を消費者に還元する必要性があると思います。