昨夜は当直だった。日中からのインフルエンザ患者さんの受診が続いていた。救急隊から63歳男性の心肺停止の搬入要請が来た。比較的若いが、他院に脳梗塞後遺症・心筋梗塞後遺症で通院していた。ここ数日体調不良でその病院を受診していて、昨日の日中も受診したそうだ。入浴していて、なかなか出てこないので、家族が見に行った。浴槽の外に膝をつく方で前のめりになっていて、顔は浴槽内に入っていた。家族を集めて浴室から運び出して、心肺停止に気づいた。家族が心臓マッサージ(胸骨圧迫)を行って救急要請した。
救急隊到着時は、心肺停止・瞳孔散大の状態だった。心肺蘇生術を行って、当院に搬入した。自己心拍はなかった(心静止)。気管挿管して救急隊に心臓マッサージを継続してもらった。エピネフリン注を繰り返して、自己心拍が一時的に出たが、すぐに消失した。結局、死亡確認となった。Autopsy imagingとして頭部CT・胸腹部CTを施行した。頭CTで頭蓋内出血はなく、胸腹部CTでは両側肺に少し陰影を認めたが、命に係わる肺炎像はなかった。冠動脈の石灰化を認めた。これまでの経過から心筋梗塞と推定された。
きょうの元日も内科当番なので、病棟を診たり、外科当番の先生から肺炎の患者さんの相談に乗ったりしていた。内科系日直は若い消化器科医だったが、救急搬入された30歳男性のことで相談があると連絡が来た。酸素吸入をリザーバー付き15L/分で酸素飽和度が88~90
%にしかならない。血圧は100~110mmHgだった。発熱40℃。今朝から急に呼吸困難になったそうだ。心電図で胸部誘導でSTが上昇しているように見えたが、典型的な心筋梗塞のようなST上昇ではなかった。胸部X線では心陰影拡大と肺うっ血を認める。心源性酵素が上昇していた。数日の経過であり、急性心筋炎が疑われた。というか、それしかないだろう。循環補助を行わないと救命できない。
消化器科医が大学病院救急部に電話すると、循環器科医が出た。当地域の基幹病院にいる循環器科医にまず相談してくださいと言われた。そこではたぶん手に負えないと思われたが、大学病院の指示なので、電話をした。やはり循環補助で集中治療を要するので、大学病院にすぐ搬送する様にというもっともな返事だった。また大学病院に電話すると、今度は引き受けてくれた。
山形県で大学生が体調不良で救急要請をしたところ、救急隊からは若いので自分で病院を受診する様にと言われ、結局手遅れになって死亡したという事件があった。新聞で取り上げられ、地元紙で特集も組まれた。急性心筋炎だった。当院としては受診1時間で高次病院に転送したので、適切な対応だったと思いたい。