昨日も当地域での小規模な糖尿病の講演会があり、聴いてきた。講師は医大糖尿病代謝科の元教授で、現在は職域病院の院長をされている先生だった。オーソドックスな講演でインスリン分泌不全のタイプとインスリン抵抗性亢進のタイプに分けて、症例をもとに話された。SGLT2阻害薬は他の糖尿病薬を使っても改善が見られない症例に使っているそうで、慎重な立場と言っていた。
SGLT2阻害薬を使用すると、グルカゴン分泌が亢進する。DPP4阻害薬を併用するとプラスマイナスでゼロになる。併用がよいが、両者を併用すると薬代がかさむのが難点とも言っていた。SGLT2阻害薬・DPP4阻害薬・メトホルミンの三者併用はさらにいい。DPP4阻害薬は体重減少も増加もなくニュートラル。注射薬としてはGLP1作動薬が体重を減少させるが、内服薬としてはSGLT2阻害薬が初めての薬になる。
SGLT2阻害薬で体重が3Kg低下するが、減少し続けるかというと、そこで頭打ちになる。過食になるのが原因だそうだが、体重を維持しようというホメオスターシスが働くのではないかという。
その会でちょっと離れた地域で開業されている先生と久しぶりに会った。インフルエンザの患者さんがいなくなって、受診数が少ないという。医院の場所からは当院ではなく基幹病院に紹介になるが、担当の先生によっては快く受け入れてもらえないと嘆いていた。開業の時にかかった借金は10年ちょっとの診療で返し終わったそうだ。土地は30年の契約で借りていて、契約が終わるころは70歳代になるが、それまでに蓄えたいそうだ。土地返却時は更地にして返すので、その費用も準備しなければならないという。
昨日、神経内科医から自己免疫性膵炎の患者さんの糖尿病治療をお願いしたいと頼まれた。すっかり忘れていたが、昨年脳梗塞後遺症で神経内科外来に通院していた77歳男性が、血糖コントロール不良となり、そのまま神経内科に入院した。食事と糖尿病薬(内服薬)の変更では改善しなかった。急な悪化で、CA19-9が高値だったので膵癌の検索を勧めた。腹部造影CTで膵頭部に低濃度があるようにも見えたが、腫瘍とはいえなかった。腹部造影MRIで膵頭部に腫瘍が疑われた。MRCPで膵頭部の主膵管が狭窄して膵体尾部の主膵管が軽度に拡張していた。膵頭部癌疑いとして、県立がんセンター消化器科に紹介された。
自己免疫性膵炎といわれれば、確かに限局的だが膵頭部の主膵管は自己免疫性膵炎の狭細化した膵管と見ることができる。膵頭部は腫瘤形成性膵炎の形態を呈していたのだろう。ステロイド投与で、糖尿病の治療はインスリンが導入されている。この方は当院循環器科に通院していて、検査結果をみると直近のHbA1cは7.9%だった。もともと糖尿病がある方のステロイド糖尿病としてはますまずなのかもしれない。目標は7.0%だろう。