消化器病学会の2日目。朝早くからモーニングセミナーを聴きに行った。昨日の機能性ディスペプシアのワークショップで横浜市大の稲森正彦先生の発表を聴いた。おっとりとした感じの朴訥な話し方がよかった。今日のモーニングセミナーの講師とわかったので、ぜひ聴きたいと思った。テーマの過敏性腸症候群について、定義から治療まで約1時間じっくりと伺うことができた。案外上の立場の先生ではという気がしていたが、准教授だった。
過敏性腸症候群は人口の15%の1200万人くらいいると推定されるが、病気ではなくて、そういう体質と思って病院を受診しない人が圧倒的に多い。結構な数だ。便秘型、下痢型、混合型、分類不能に分けられる。ブリストル便形状スケールが有用だという。稲森先生はこのスケールの(絵ではなく)実写版を作りたくて自分のお子さん(小学生の娘さんたち)に便を写真に撮った。ただ、正常の便しがなくて病的な便が撮れなかったそうだ。腸の動きが悪い、痛みの耐性が低い、知覚過敏があるなど、生理学的な異常がある(この辺の詳しいところは聴いてもよくわからない)。
診断はRomeⅢに従って行う。大腸癌や炎症性腸疾患など器質的な疾患の除外が大事だ(アラームサイン)。なぜ過敏性腸症候群を治療するかというと、QOLが悪いから。学校や仕事を休んでしまうのは社会的なマイナスだ。治療薬としては、コロネル、セレキノンなどがあり、男性下痢型ではイリボー(セミナーのスポンサーの商品)を使用する。便秘型で使用する酸化マグネシウムは高齢者・腎機能障害者では高マグネシウムに注意を要する。刺激性下剤のセンナは耐性で効果が低下して増量してしまう傾向があり、あまり好ましくない。
医学書コーナーで「消化管の機能性疾患」診断と治療社という本を見つけた。稲森先生も編集者の一員だったのと、素人にもわかりやすく記載してあるので購入した。ついでに、肝胆膵の「自己免疫性膵炎 20年の軌跡」も購入。
稲森先生の講演を聴けたのが一番の収穫になりそうだと思いながら、午前中はあまり聴きたいものがなくて、ビデオセッション「術後腸管症例に対する胆膵治療内視鏡」を見ていた。新たにできた展示館に初めて入ったことになる。トイレが現代的できれいだったが、講演を行うには声が拡散してしまい、隣の会場の声が聞こえてくるのであまりよくない。胃切除後(ビルロートⅡ法、全摘)・膵頭十二指腸切除後・先天性胆道閉鎖症術後に対する、シングルバルーン・ダブルバルーン・大腸内視鏡などを用いたプロの技を眺めることができた。
ランチョンセミナーは{B型肝炎」を聴いた。会長講演(早期慢性膵炎)を中継で見て、ちょっとコーヒーを飲みながら1時間ほど岩田先生の本を読みながら休憩した。午後は何を聴くか迷ったが、「AIH・PBC」にした。夕方終わった時に案外疲れていなかったので、イブニングセミナーの「C型肝炎」まで聴いてから帰ってきた。学会場で3食食べたのは初めてだ。