なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

直腸MALTリンパ腫

2015年08月05日 | Weblog

 一昨日の朝に先週80歳女性が食欲不振・倦怠感で受診した。前日から当直だった大学病院循環器科医は早めに帰るので、当院の循環器科医が早出で引き継いでいた。点滴と血液検査を提出していて、炎症反応が上昇していた。内科外来で診てほしいと依頼された。肺炎や尿路感染症などを想定したが、この方は昨年11月に体重減少などで内科新患を受診していた。

 内科の若い先生が担当だったが、腹部CTで直腸に全周性腫瘍が疑われた。消化器科に下部内視鏡検査が依頼した。粘膜下腫瘍様の病変で、悪性リンパ腫を想定して生検したが、結果は非特異的な炎症像のみだった。直腸炎(Proctitis)と病理診断されたが、こんな炎症が直腸に起きるのか不明だった。経過観察で今年の1月に腹部CTを再検すると、直腸の全周性腫瘍は軽減していた。よくわからないが、何等かの炎症だったのだろうということになったらしい。

 今回も腹部CTで直腸の全周性腫脹を認めた。直腸指診をすると、全周性に腫瘤を触知するが、通常の直腸癌と違って柔らかい印象があった。凸凹した腫瘤で表面がつるっとしている。血液が付着してきた。便が出ないわけではないが、出ずらいという。前に内視鏡検査をした若い消化器科医にまた下部消化管内視鏡検査を依頼した。粘膜下腫瘍様の凸凹した腫瘤で表面にびらんが形成されていた。生検した、受診後に39℃の発熱があったこともあり、入院となった。生検結果が出るまで、点滴と抗菌薬で経過をみることになった。翌日には解熱していたので、抗菌薬が効いたのかと訊くと。抗菌薬が投与される前にアセトアミノフェエン500mgの点滴静注がされていて、それで解熱したそうだ。

 今日生検の結果が出て、MALTリンパ種だった。腸管(直腸)MALTリンパ腫は初めてだ。明らかなリンパ節腫脹や転移はない。腸管MALTリンパ種は腸管悪性リンパ腫の中では珍しいようだ(逆に胃MALTリンパ腫は胃リンパ腫に占める比率が高い)。ピロリ菌感染があれば除菌が効くのでまっさきに行う治療になる。それが効かなければ外科手術・化学療法・放射線療法などいろいろある。

 それにしても昨年はどうして自然消褪したのだろうか。

コメント
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